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前髪
幽霊がいる
過去の誰か
はたまた未来の幻視
どこからともなく現れるが
それはどちらも内の影
外を見るのは鏡のみ
そう、幽霊がいる
本当の姿はまるでない
いつもこちらへ揺らめいて
へらへら陽気に笑っていやがる
手のひらこっちへいらっしゃい
そうして僕らは歩みだす
いつでも、幽霊がいる
やけに重たいカーテンだ
それもレースの不透明
しかし形ははっきりしていて
いつもなにかを思わせて
下手なやっかい働きやがる
お前は僕の、幽霊である
逃れさせてはくれまいか
紺青の窓に虫の翅
音は確かに聴こえるが
空気も触れてはいるだが
まるでお前は常世の民
見ていてくれるか、幽霊さんよ
いつか祓ってしんぜよう
解いていくのさ三千里
それが僕には必要だから
消えに消えゆく先の先
お前を最期に残さぬように
記憶の中へ溶けてしまえ、幽霊の灰よ
良ければなにか残してね




