26/108
名もなき音ども
世界の音はどこも無遠慮
さあ耳をすませてごらん
雲の向こうに轟く雷鳴
そこここに積もる闊歩
飛び去る風切羽
虫どものざわめき
隣の住民目覚ましで起き
がらがらとゆすぐ口
洗濯物を干す物干し竿
FMラジオのノイズ
骨のめぐる
筋肉の弛緩と血液
腸がうねる
そして、心臓のリズム
音のない世界が僕にはわからない
しかし音を知らない人も、生きている
それだけは知っている
音のない人は音を持つのか
その感覚はどこにあるのか
僕らとは違う音を持つのか
もしかしたら知ることがあるのかも
音を知る僕がそれを知りたく思うのは
なにか特別なことじゃないだろう
ただ、音のない世界の音の置換を
僕は知りたいだけなのだ




