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窓の向こうの夏


僕は窓際に座る

ひんやりとした床、湿り気の多いカーテン

窓を開ける、網戸が立ちはだかる

風だけ通る、夏は来ない

もう一度窓を閉める、今度はガラスを張る

風は来ない、しかし夏は来る

切り取られた風景はまさしく夏だ


稜線にかかる厚雲のくぼみ

遠く覗ける際限なき青

音はない、風はない

ただじりじりと迫り来る熱のみ

そんな風景に心が揺らぎはするが

無力が、無力が這い出てきて

僕はゆっくり横になり眠る


やがて物音に目を覚ます

窓外を見れば霧と雨

茹だる暑さはどこへやら

清涼と轟音の二重奏

遠くの山が光る、遅れて揺れる

窓が揺れて、魂に吹き荒ぶ

僕は嬉しくなって、同時に虚しくなる


この夏がいったいどれほど来るのか

さしたる違いはそれほどないが

どれもこれも、こいねがうもの

あの夏この夏、ぜんぶ欲しい

雷鳴の夏、星空の夏

不気味な快晴の夏、曇り夜の夏

すべてが僕は、愛おしく嫌い


やがて夢想する

すべての夏が一つになって

僕の窓際に流れれば良いのに、と

ああ、なんだか熱っぽい

一つラムネでも飲んでみようか

僕は立ち上がる、冷蔵庫を覗く

しかしラムネはどこにも無い


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