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刻の道標
あるとき時間は味方だった
いつも僕らのそばにいて
望めば時間は大きく延びた
代わりに短くならなかったが
あるとき時間は短いと知った
早まる秒針、よく動く時針
けれどまだまだ寄り添ってくれた
それが多くの知識となった
あるとき、時間はそばを離れた
ぐるぐると廻る針どもしかり
登って沈んでゆく陽もしかり
僕らは意識しなければならなかった
時間は流れて僕らを進む
流浪の民になれない僕らは
よくよく時計の標を見る
そして日々の自分を恨む
時を計るのが人生ではない
時を計るのが生きるということ
それに気づいたときには遅く
僕らは時間の流れぬ無垢へ
刻の道標それぞれ変わる
だから僕らは味方がいる
僕らは時間を味方にするのだ
それが大切で大変なのだ
切実な想い届くことなく
儚く散るのは夢のよう
目覚めてしまえばなにも無く
僕らは流浪の民となる……




