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冬の山中
あの鳥はいったいどこへいく
もやの隙間を繕う羽で
動かぬカメムシどこへいく
夢の中では羽ばたいている
農夫の帽子はどこをむく
さながら夏場の色合いで
鈍色列車はどこをむく
寒木の椏に切り替えはなし
露や匂いは過不足透明
鋭敏は鼻にツンとくる
かわりに夜空はどこまでも
旅の終わりと始めを示す
朝の隙間と夜の流れ
どちらも離れてくれぬもの
時間はゆっくり流れている
山海情緒のスケルツォだ
熊も牡鹿もおどりゃんせ
雪と小道に気をつけて
音の少ないほうへいけ
自然と音たち溢れるけれど
棺桶と見るかドウムと見るか
会議はいつでも踊るけど
懐疑はいつでもそこにある
ビル街にはない匂いのせいだ
白樺の縁に雪を見る
きつねの親子が笑ってる
それを覗いてみる人の
あまりに愉快な一場面よ
遠方絶景、そびえ立つ青
そのただなかに、ひとりぽつねん……
良ければなにか残してね




