考え事
毎朝、学校について僕は決まってコーヒーを飲む。勿論ブラック、と言えたらかっこいいが苦いのは得意じゃない。微糖で限界である。始業前のこの時間が僕をかったるい授業へと足を向かわせてくれる。
「暇だ。」と呟いてみる。勿論返ってこない。なぜらなら始業1時間半前にきているバカは僕1人だからだ。暇なので考え事にふけてみることにしよう。
この僕、菅原が通っているこの学校は5年制の所謂、「高専」と呼ばれる学校である。僕は、この学校には自由な雰囲気と高専卒には将来性がある的なことを聞いて入学した。実際、高専卒の進路は良かったが、いざ先生の口から出るのは留年、退学、赤点、落単、の学生を脅すようなことばかりだった。
そもそも僕にはこんなとこ向いてないんじゃないか。彼女には振られて、レポートは多いし、教授は話してるのはうわべだけで専門性もクソもないし。
「あーマジでなんでこんなとこ…」
扉の音がしてふと見上げるとクラスメイトの1人、田中がいた。独り言を聞かれてしまった。恥かしい。いや聞こえてたか?聞こえていなかった、よな?…そう信じたい。
「どうしたよ、ぼーっとして」
田中が怪訝そうにこちらを見た。どうやら聞こえてなかったようだ。
「あー…いや今週提出の課題まだ手つけてねぇなと…」
田中の目がビー玉のように丸くなった。
「やっば!俺もやってねぇ!」
急いで机の中をあさっている。実は、僕はもう終わりそうなんだけど、つい会話が思いつかなくて嘘をついてしまった。まぁ、嘘も方便というやつだ。
さっきの考え事の続きをしよう。
えーとなんだっけな。あーそうそう彼女に振られたんだった。じゃない、違う。クソ。考え事をしてるとすぐ浮かんでくる。考えたってなんのメリットもないのに。ただ自分を傷つけて「ああ、自分はなんて可哀想な人間なんだ」と考えるだけのリストカットだ。と思っても込み上げてくる虚しさと共に別のものも込み上げてくる。
「なんで、わざわざこんなところに飛び込んだんだよ、普通科のそこそこの進学校にいけただろうに」
「なんでかってそりゃ、将来有望なエンジニアになるためだろ」
しまった、口に出てたか。
「それでもすげぇよ。こんな口を開けば教員どもは留年、留年いいやがる環境でさ。目標持っててもキツいぜ」
僕は早くも目標を見失ってしまったのに。
「はは、お前振られたからって悲観的になんなよ」
うるさいな。確かに悲観的になりすぎていたかもしれない。でも振られたからじゃないと反論したかったが
再び扉の開く音と同時に飲み込んだ。