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第六話 私と街

アースは、人間…いや、獣人になった日からどんどん成長していった。そろそろ身長が抜かれそうだ。

毎回私の倍はご飯を食べるし、何故か筋トレをしだした。アース曰く、強そうだかららしい。

成長すると、勿論服のサイズも大きくなってくる。今までは私が服を縫ったり切ったりして適当なポロシャツを作っていた。しかし、それももう限界だ。布は足りないし、何よりすぐ汚すので替えが必要なのだ。


「…街、行こうかな。」


一応、地図上では十分ほど歩いたところにあるらしい。

『おれも行く。おまえよわいからな!』

何だか偉そうなことを言っている熊耳のガキが居るが、それは気にしないでおこう。


ここで一つ疑問が出る。お金についてだ。しかし、それについては心配ご無用。なんとなんと、女神様からの箱にはお金が入っていたのだ。物凄く有難い。

しかも、アースによると自分で物を売ることが出来る場所もあるらしい。今は何も売れる物が無いが、後々役に立ちそうな情報だ。

「よーし!出陣!」

なんとなくの気合いを入れ、木に張り付いた虫を捕まえたくてうずうずしているアースを引っ張りながら家を出た。

心地良く晴れた空が広がっていた。


________________________________________________________________________


「おぉ、凄い。」

街には、声を出し活気溢れる商人や客、胡散臭いことこの上ない占い師、走り回る子供達など、本当に様々な人が居た。銃声など聞こえもしない、私が知る街とはかけ離れた印象の街だった。平和なのは、女神様の考慮なのかも知れない。


「おーい!そこの嬢ちゃん、綺麗な顔してるね。鏡、買わないかい?この街で鏡屋はここだけだよっ!」


突然声を掛けられて驚いてしまった。そうか、街とはこんなものなのか。などと考えていると、横からホワイトボードで小突かれた。

『かがみないだろ。かえ。』

言い方は良く無いが、確かにその通りだ。

「あ、一つ欲しいです。1番小さいのでお願いします。」

そう言うと、商人は「まいどあり!」と元気良く返事をしてくれた。

「はい、銅貨1枚ね。」

それを聞いて銅色のコインを差し出す。色が名前と直結していて分かりやすいので助かった。

ぺこりとお辞儀をしてその場を去る。後で飾るのが楽しみだ。


「あ、そうだ服…。」

『こっちにある。』

アースが指を指した先には、服の絵が描かれた看板があった。

「……アース…いつの間に串焼き買ったの?」

『さっき。』

きっと、少しだけ渡したお小遣いで買ったのだろう。一口貰おうとしたら怒られた。


カランカランと音を鳴らせてドアを開く。

「いらっしゃ〜い。」

店のカウンターには、ふくよかで優しそうなおばさんが居た。

「すみません、この子に合う服を二着ください。布が丈夫なやつで。」

そう言い、アースの背中を押す。おばさんは、「少し待っててねぇ。」とにこにこしながら服を選びに行ってくれた。

店内にはポロシャツやズボン、毛皮のコート、ドレスや派手な民族衣装まで幅広くおいてあった。

私は普段着が欲しいので、ポロシャツとスカート、ベストも選んでおく。


「お嬢さん、こんな服でどうかねぇ?」

おばさんに聞かれて振り返る。一つは白いシャツにサスペンダーとズボンのセットアップだ。戦ったり運動するのには向いていないが、街に出る時には良いかも知れない。もう一つは運動に向いていそうな黒いシャツと上着で、何か良い素材を使っているのだろうか。凄く肌触りが良くて収縮性もしっかりある。

「ありがとうございます。これも一緒に買います。」

そう言って、自分の選んだ服も出す。

一応今日のミッションはクリアだ。

「いやぁ、それにしても獣耳のついた坊ちゃんに白髪のお嬢さん、縁起がいいねぇ。」

そういえば、アースの耳を一応隠しておこうとフードを被せたのだが見えていたようだった。

「そうなんですか?」

おばさんは深く頷きながら言う。

「あぁ、勿論だよ。なんたって、獣耳は神獣の使いっていわれているからね。」

「でも、そのせいで拉致や人身売買の的にされることもあるらしいねぇ…。この街は平和だからそんな話、一度も聞いたことが無いから安心なさいね。」

ありがとうございます、と頷きながら考える。

確かに珍しい物は犯罪の対象になりやすい。でも、なんとなくアースは大丈夫な気がした。なんたって、見た目とは大違いの強さで大物を引きずって持ってくる奴だ。そうそう拉致られてもらっては困る。  

『はんざいしゃなんかに負けてたまるかよ。』

チッ、と舌打ちをするアースを横目に見る。全く、そんな行儀の悪いことをどこで覚えたのだろうか。

「あぁ、そうだ、冒険者ギルドのとこは気をつけなさいね。…悪い奴はではないんだけど、どうも血の気が多くてね……、しょっちゅう殴り合いの喧嘩をしてるんだよ。巻き込まれないようにね。」

そう言って、はぁ…と呆れたため息をつく。

「分かりました。気をつけます。」

いくら平和でも、野蛮な奴は居るのだな…と、思う。

そんなことを考えながら、一人と一匹は家路についた。



ついに街に来ました。

連続で投稿します!!

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