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第四話 私と小熊2

気がつくと辺りは夕焼け色に染まっていて、子熊が何処からか取ってきたリンゴを食べていた。

『はやくなまえきめろ。』

子熊がホワイトボードを掲げる。

忘れていたが、こいつはいきなり現れて養えと言い出す、傲慢過ぎる子熊なのだった。

「はいはい…えーとね…」

子熊の名前はもう決めてある。私の旧友、テラが最期に教えてくれた言葉だ。


「アース。」


「アースって名前はどう?私の元居た世界…地球って意味の外国語なの。」

『いいだろう。』

そう、そっけなく言う子熊……アースは、どことなく嬉しそうな雰囲気だった。


「…よし!夕飯にするか!手伝って、アース!」


______________________________________________


「これは干し肉で……こっちは豆…?これは芋かな?あ、塩がある…。」

きっと保存食なのだろう。女神様からの箱の中には固そうな食材ばかり入っていた。

「うーん……アース、狩りとかできる?」

『ぶきよこせ。』

確かにそれはそうだ。しかし、あの小さい身体で狩りが出来るとは到底思えない。

しかし、決めつけは良く無い。

「はい…これで良いなら。」

そう言って、台所にあった出刃包丁を渡す。なんだか物騒な感じだ。

アースは、出刃包丁をじっと見た後、そそくさと家を出ていった。

心配ではあったが、野生の動物だ。危なくなったら戻ってくるだろう。

そんなことを考えつつ、スープでも作ろうと台所に行く。


______________________________________________


「かまど……どうやって火つけようか。」

火おこしは一応出来るが、かなり時間がかかるのであまりやりたく無い。薪はあるが…。

そこで、はっと思い出した。

「魔法使えるのでは…?」

ここは異世界だ。魔導書らしき物もある。火や水くらい出せてもおかしくない。

「…やるか。」

流石に家の中で放火するのは怖いので、外へ出て実行する事にした。


早速、魔導書の中身を見てみる。

『初心者でも簡単!生活から実践まで幅広く使える便利魔法!!』

(…なんだか料理のレシピみたいな見出しだな。)

『まずはローブを着てね!安全第一!!!』『炎魔法の使い方について〜〜!』


「ローブは着たし…やり方も大体わかった…!」

簡単にいうと、イメージすることが重要らしい。

気合いを入れ、瞑想をしたあと、杖を自分も胸の前に真っ直ぐ掲げる。

いざ、人生初の魔法を……!

“ボワッ”

まさボワッが正しい擬音だった。

1秒くらいだろうか、杖から大きな大きな火が出た。外でやって本当によかった。


そうして何回かやっているうちにコツを掴んできて、水と火を調整できる様になっていた。


(マッチのイメージ…)

“ボッ”

「おお、良い感じ。」

(水道のイメージ…)

すると、杖の先から球体の澄んだ水がゆっくり出てきた。なんとなくの好奇心で飲んでみる。

「うん、大丈夫そう。」

魔法の水なので少し不安だが多分大丈夫だ。野生の勘がそう言っている。

家の中に入って火と水を使おうと思っていると、少し離れた林から、何かをズルズルと引き摺る音が聞こえた。

「なんだろう。」

気になって近づいてみると、音の正体はアースの手に持たれた大きな生き物だった。

「え…これ、イノシシ?飼わないよ?」

混乱のあまり、既に首を切り落とされているのに飼うことを前提に話してしまった。グロい…。

『たおした。ぼあーだ。くえ。」

雑魚だったと言わんばかりに自慢げにイノシシの様な生き物、ボアーを突き出す。

アースは実は凄い生き物なのかも知れない。

それが確信に変わるのは、そう遠くない話だった。

______________________________________________


「よし。」

ささっとスープを作り、ボアーを解体した。解体するのは前世からの特技だ。

珍しくアースが関心していて、返り血がついた顔でにこりと笑いかけるとゾッとした顔をされた。何がいけなかったのだろうか。

しかし、返り血が付いてしまうのは情けない。やはり腕が落ちてしまっていたし、イノシシを解体することはあまり無かった。

「練習あるのみ…かな。」

そうして夕飯はスープと焼いたボアーを食べた。ボアーは塩のみで食べたが、イノシシと違って臭みが無く本当に美味だった。

『90てん』

アースがホワイトボードに高得点を写し出して、嬉しそうに食べている。

数分前まで生で食わせろと騒いでいたのが嘘の様だ。

何かと上手くやっていけそうだなと思い、自然に笑みが溢れた。


遅れました!!

連続で投稿します

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