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第三話 私と旧友

『第三話 私と旧友』


「凄い…」


女神から頂いた家の中には、山吹色のカーペットや木製の棚、かまど、机、椅子、などの家具が取り揃えてあった。


前世では家が無い日もあったのだから、考えられないほどの豪華な家だ。

机の上に、そこそこの大きさの箱が置いてある。開けてみると、何やら色々入っている。


「これが食料とかかな…?」

『くわせろ。』

「……。」


生意気な子熊が何か言っているが無視させて貰う。


「ん…?なにこれ」


箱の中には、手紙通り食料や地図などが入っていた。

それとは別に、分厚い本と枝の様なものと、黒い上着が入っていた。


「服は別の箱に入っていたから……」

上着もこの本と枝と一緒に使う物だろう。

『まどうしょ。つえ。ろーぶ。まほうつかえる。』


そういえばここは異世界だった。魔法が使えてもおかしくはない。


「なるほどね、ありがとう……えっと…子熊。」

そういえば名前が無かった。

「名前、決めようか。いつまでも子熊って呼ぶのもあれだし。」

そういうと、子熊のホワイトボードに文字が浮き上がってくる。どうやら、この子熊は魔法の類が使えるらしい。

『りりーがきめろ。』

「…熊太郎。」

『まじめにかんがえろ。』


駄目か……。しかし、少しは希望が無いとこちらとしても決めづらい。

「どんな名前が良いの?」

『かっこよくて。つよそうで。めずらしい。』

(注文が多い……)


珍しいといえば、昔、珍しい物が大好きで、探究心が旺盛な友人が居た。

名前は………テラだった。


初めて会った時は十五歳くらいだっただろうか。私が六歳の時に組織に入ってきた。

テラはいつも珍しい話をしてくれた。外国の話、宇宙の話、海の話……挙げ出したら止まらない位沢山の話をしてくれた。

その中でも、一番印象に残っているのが、テラの名前の話だ。


______________________________________________


ある日、いつもの様に他愛も無い話をしていた。

「ねえテラ、テラの名前って何だか珍しいね。」

私がそういうと、テラはにこっと笑って見せて、こう続けた。

「そうでしょう。これはね、私が自分で決めたのよ。」

衝撃を受けた。名前を自分で決めても良いものなのだろうかと思ったが、それ以上に、幼い私にはテラがとても格好よくみえた。

勿論、名前を勝手に付けたり変えたりするのは原則禁止だ。しかし、私達が居たのは「西の殺戮街」戸籍がない子供だって、ごろごろ居るのだ。無論、私も戸籍が無かった。組織の大人に拾われ、名前をつけられたそうだ。

「テラっていう名前はね、地球という意味なのよ。」

よく分からなかった私は、率直に質問した。

「地球は地球じゃないの?」

「んー、地球は地球だけど……別名があるのよ。それがテラ。」

「へえ、面白いね。」

そうして、その話は終わった。

テラがどこかそわそわしていて、組織の大人が通るたびにびくりとし、顔を強張らせていたが、その時の私は全く気に留めて居なかった。


数日後、テラは海外任務に行くと組織の大人から知らされた。

その時に、伝言を貰った。


『莉々へ

しばらく会えないけれど、元気で居てね。

特別に、外国の言葉を教えてあげる。地球はアースっていうのよ。

地球が壊れてしまう前に逃げてね。

           愛を込めて テラ』            


『地球が壊れてしまう前に逃げてね。』

その意味を理解する為にはかなりの時間を要した。


テラが居なくなって数年経ったある日、私は任務に出掛けた。

任務の内容は、組織の敵の足取りをつかむことだった。任務先は人通りがとても多かったことがとても印象に残っている。


突然のことだった。

人通りの中に、とても懐かしい雰囲気を感じとった。

それこそが、私の友人、テラだった。

私は無意識のうちに、その背中を追いかけた。


「テラ!テラ!私!莉々よ!」


声が届いたのか、テラはくるりと振り返ってくれた。


内心、踊り出しそうな気分だった。唯一の友であり、姉の様な存在だったテラに、もう一度会えるとは思っても見なかったからだ。


しかし、テラは違った。

「…ごめんなさいね、私はテラじゃないわ。それに、貴方のことも知らないわよ。」

人違いかしら…と、呟きながら、「張り付いた笑顔」でそう言っていた。


寒気がした。テラはこんなのでは無かった。でも人違いなんかじゃなかった。

「嘘!覚えていないの?莉々よ!昔仲が良かったじゃない!!」

「うーん、分からないわ。」

またしても、張り付いた笑顔で答えられた。

テラが何故こうなってしまったのか全く理解出来なかった。あの柔和な笑顔が無くなって、とてつもない喪失感があった。何より、私のことを憶えていなかったことに絶望した。


「ねえ!嘘でしょう?冗談でしょう?宇宙の話は?外国の話は?楽しそうに話してくれたじゃない!」


この時、テラの眉が一瞬、ぴくりと動いた気がした。

私は、勢いと思い出して欲しい一心で全てを話した。思い出話も、組織のことも任務のことも、全部、全部話した。


それがいけなかった。


私の所属していた組織は、活動すら世に明かしていない仕事『暗殺』をしている組織だった。常に秘密を抱え、死と隣り合わせの任務をこなすことを生業としていた。


私は情報を漏らしてしまったのだ。


人通りの多い中で必死に話す少女を見れば、誰でも不思議に思い聞き耳を立てるだろう。

そうして人から人へと存在が伝わった私達の組織は、いつのまにか爆破され組織のトップは殺されていた。

きっと、今までに被害に遭った者達が反感を持ち、今こそ復讐の時だと言わんばかりに行動したのだろう。

情報漏洩の原因が私だということもばれていた。


これは後から聞いた話なのだが、海外任務というのは隠語で、知ってはいけない組織の秘密を知ってしまった者に対して、記憶を改ざんする、ということらしい。

改ざんするのには、特殊な薬を使うらしい。その薬は副作用として、表情筋が固まってしまうという、なんともおぞましい効果があるそうだ。


テラは全て分かっていて、直接的な表現を避けて伝言を渡したのだろう。

『地球が壊れてしまう前に逃げてね。』

その意味が、その時やっと分かった。きっと、テラは私と会うことも知っていて、自分が記憶を無くしていたら私は必死になると分かっていたのだろう。


ただただ悲しく悔しかった。


どうしたらこの悲惨な結果を回避できたのだろうか。何度も何度も何度も何度も何度も考えたが、その答えは全く見つからなかった。

何をしても、私の様な存在では無力すぎるのだと痛感した。


そうして情報漏洩の原因である極悪人として、私は殺されてしまった。


【次回予告】

またまた子熊ネタ!!ついに子熊の名前が決まる!?!?子熊の驚きの活躍をぜひご覧あれ!


【猫背もち(作者)より御礼】

この度は、第三話を読んでくださり誠にありがとうございます!!

リリーちゃんの人格など色々と分かってきた頃なのではないでしょうか。

初心者ではありますが、読者の皆様に楽しんでいただくために精進して参りますので、どうかよろしくお願いいたします!!

コメント等待っております!!ではまた!!

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