27.散歩と遺霊魂
ったく、俺は一体何に付き合わされてるんだ。
リューリエは心の中で悪態をつきながら街中を闊歩する。やはり散歩というのはいい。集中力も切れないし、考え事に最適だ。
なにより、鬱陶しい『主人』が居ないので、それだけでリューリエは清々しい気持ちに包まれていた。
とはいえ、宿屋に帰ればまた会わなければならないと考えると憂鬱で、厄介なことにこのまま逃げる選択肢も取れないリューリエは、一旦どうしてこんな状況になってしまったのか振り返って考えていた。
あのガキは何故あんな芸当ができたのだろうか? 眷族契約魔法は、魔人の論理によって構築された魔法であるはず。それなのに、それをあのガキは容易く行使した。
確かに、魔人だけが使えるというような制限があるわけではない。しかしそれは、魔能力を基盤として作られた魔人独自の魔法論理体系を人間が理解できればの話だ。
人間が使う詠唱魔法を俺たち魔人は理解できない。同じように、人間は俺たちが使う魔能力を理解できないはず。
万が一、人間側の叡智によって仕組みが紐解かれていたとしても、あんな小さいガキが行使できるはずがない。よりにもよってこの俺に。
リューリエは多くの魔人に畏怖の念を抱かせる程の絶大な力を持って、七災の四に君臨していた。魔人領に存在する各国の首脳はその名を聞くだけで震え上がるほどだ。
もしもリューリエが七災の一との戦闘後の衰弱状態でなく、本来の実力だったなら、アデルだって今頃この世にいない。それくらい、強いはずなのだ。恐れられてきたはずなのだ。
それなのにミアはリューリエの主人となった。
リューリエは考え続けて、一つの結論に辿り着きそうになる。
……待てよ。俺はずっと、あのガキが人間であるという前提で考えてきた。しかし、それが間違っているんじゃないか。
アイツ……本当に人間か?
…………いや、邪推が過ぎるか。
よく考えれば、こんなことを考えたところで答えが出るはずもない。俺が考えるべき重要な議題はこれじゃないだろう。
本当に考えるべきは……俺が何故アイツにあそこまで気に入られているのか。
意味がわからない。
リューリエには全くミアに気に入られるような心当たりが無かった。それに、なんなら最初は殺して身体を奪おうとしていたくらいなのだ。
それなのに、撫でてくる、抱きついてくる、肩車に本の読み聞かせ。こちらの憎悪に対しとんでもない懐き度で応酬してくる。
思い出すと憎らしくてムカムカしてくる……が、同時に顔が熱くなった。心臓の鼓動が早くなってきて、リューリエは慌てておかしな考えを振り払った。
これは生理的反応。理性ではちゃんとわかっているのだ。眷属にされたが為に、ミアへの敵意が薄れ始め好意を持つように仕組まれている。
そう、これは眷属にされたからなのだ! それ以外の理由があるわけがない!
リューリエは襲い掛かる邪念を振り払いながらも、悶々としながらとぼとぼと散歩を続けた。
リューリエが、等間隔に街路樹の並んだ街外れの道を歩いていた時のことだった。
「ほ、ほら、降りておいで! 大丈夫だから!」
視界の奥の方で、杖をついたお婆さんが木に向かって話しかけていた。
最初は気の触れた婆さんか何かだと思って通り過ぎようとする。しかし、横を通る時に「にゃあ」と声が聞こえて、リューリエは思わず立ち止まってしまった。
「さあ、私の肩に乗りなさい。怖くないわ」
そう話す視線の先には一匹の猫がいる。
どうやら、お婆さんは虚空に話しかけていたわけではなく、木から降りれなくなった臆病で可哀想な猫を助けようとしていたらしいのだ。
リューリエは呆れながらお婆さんに近づいていって話しかけた。
「婆さん、あれはお前の猫か?」
「……おや、急になんだい。坊や」
お婆さんはリューリエの存在に気がつくと、まるで近所のちびっ子相手みたいに返事をする。リューリエはイライラして少し乱暴にもう一度尋ねた。
「あれはお前の猫かと聞いてるんだ」
「え、ええ、そうだけれど」
予想より荒々しく訊かれたものだから、お婆さんは少し狼狽える。けれど、リューリエは「そうか」と言うと、それを尻目に木を登り始めた。
「……こ、こらっ! 危ないわ! そんなに高い木を登っていくなんて!」
そんな忠告を無視して、リューリエはいとも容易く登っていく。実際、木はそこまで高くなかったし、リューリエからしてみればこんなものは造作もなかった。
十秒もしないうちに、猫と同じ枝の上に辿り着く。手を差し伸べると、猫はシャーッと威嚇してリューリエを睨んだ。
やはり、流石に動物相手には魔人であることもバレてしまうらしい。こいつだって魔力を感じないはずなのでいけると思ったが。
「お前は主人のことが好きか」
尋ねてみると、猫は「にゃー」と返事をする。
「そうか。好きなのか。どうやら、俺とお前は気が合わないらしいな」
そう言うと、リューリエは猫を強引に抱き上げて、木から飛び降りた。
そうして、お婆さんに猫を押し付けると、早々にその場を立ち去ろうとする。しかし、お婆さんが困惑した様子ながら尋ねてきた。
「あ、ありがとう。坊や。凄い運動神経だわね。一体、いくつなの?」
何がだよ。と一瞬思うが、すぐに年齢のことだと気がつき、リューリエは立ち止まって少し考える。嘘の年齢を言おうと思って考えているわけではない。
そもそも、リューリエは自分の誕生日すら知らないのだ。
「十よりは上なのは確かだ。それしか知らない」
「……あらそう。曖昧なのね……。……そ、そうだ。助けて貰ったんだからお礼をしなくちゃ。でも、何がいいかしらね……」
お婆さんが頬に手を当ててじっくりと考え始めようとする素振りを見せる。リューリエは面倒くさそうにため息を吐くと、遮るように答えた。
「じゃあ、もうこんなことが起きないようにソイツをしっかり見張っとけ。それで十分だ」
「十分って……本当にいいの?」
どうせ大した礼もできないくせに、何を心配しているんだか。
そんなことを考えていたら、猫がまた「シャーッ!」っと威嚇を始め、お婆さんが慌てて宥め出す。
「こらこら、ミカ。恩人さんにそんなことしちゃダメでしょう」
そう言って、お婆さんはミカの背中を優しく撫でる。するとリューリエは、急に動揺し始め、思わず聞いてしまった。
「は? ミ、ミカって名前なのか?」
「ええ、そうよ。可愛い名前でしょう。こうやって撫でてやると、落ち着いてくれるのよね」
目の前で『ミカ』が撫でられている。
……いいや、これは偶然だ。何も関係ない。そう自己暗示する。
けれど、ひとたび思いついてしまうと、芋づる式にどんどんと邪念が湧き出してきてしまった。
せっかく忘れてきた頃だったのに、『主人』のことを思い出してしまって、リューリエは目の前の猫すら見ていられなくなり駆け出す。
別れ際に一言「じゃあな!」とだけ言って、お婆さんの返事を聞かないうちにリューリエは走った。
しばらくすると、段々と気持ちが落ち着いてくる。
リューリエは閑静な住宅街を抜けて、ひとけの無い通りに来るとベンチに座った。
リューリエは冷静になってから自分の行動を顧みて、うんざりした。
ミアのこともそうだが、一番はまた違う。
人助けをしてしまったことに対してだ。もう見返りも無いし、無駄なことだと理解しているのに。
昔の癖というやつである。昔はそうしなければ生きていられなかったからそうした。けれど、今は違うのだ。
自分に言い聞かせて、リューリエは立ち上がるとまた散歩を続ける。日は沈み始めていた。
☆
「つまり、明日の戦いで良いところを見せつけちゃえばいいんですよ!」
「ええっ! でも、具体的にどうすれば良いかなんてわかんないし……。大体、戦いには自信がないのに……」
「んもう、意気地が無いですね! リューリエと戦った時には良くやってたじゃないですか! リリアを助けた時なんか、あの時攻めてたら意外とコロッと落ちてたかもしれないのに!」
「いやいや、そんな余裕なんてあるわけないでしょ……! 命が懸かってるのにそんなこと考えてられないよ!」
「命が懸かってるからこそ普通は考えるものです!」
宿屋に着き、自分たちの部屋へ向かうと扉からそんなふうに声が漏れてきていた。なんだかよくわからないけれど、あの二人のことだ。またしょうもない言い合いでもしているのだろう。
リリアはミアと顔を見合せてやれやれと思いながら、部屋へ入る。
「ただいまー。帰ったわよ二人とも」
そう言うと、アデルとメルフィーは突然言い争いを止めて二人してギョッとした顔をする。
「えと、なんなの? 二人ともどうかした?」
「あ、ああ! いえ、な、なんでもないですよ!? ただ、メルフィーとちょいと議論を交わしていたところに急に入ってきたものだからビックリしただけで!」
「そ、そうそう! 魔法使いに運動神経は必要かって話し合ってて少し白熱してたんだよ!」
アデルとメルフィーはただ祈った。先程までの会話はどこまで聞かれていたんだろうか。もしも、話題が特定されていたらまずい。
しかし、幸いにもリリアは「なあんだ。そんなしょうもないことで言い争ってるんじゃないわよ」と言うと、そそくさと買ったものを袋から取り出すことに勤しみ始めた。
アデルとメルフィーは、目配せし合って危機を回避した喜びを分かち合う。ミアはそれに気がついて不思議そうに二人のことを見ていた。
けれど、すぐに注意は別に移った。リューリエが帰ってきたからだ。
扉が開いた音がした瞬間、ミアはそれが誰であるか確認し、素早く向かう。
「……おい、帰ってきたぞ。……って、なんだ!? い、いきなりこっちに来るな! 離れろ!」
眷属が主人に命令したところで、強制力などさらさらなく、リューリエはあえなくミアに捕まってしまうのであった。
☆
薄くランプの明かりだけが灯る。
少し埃っぽく黴臭い地下室で、メドウは巨大な棚から一つの遺霊魂を大事そうに両手で持ち上げた。棚には他にも、沢山の遺霊魂が並べられている。
死んでしまった魔人のものや、殺した魔法使いのもの。
それらが、規則正しく整列して並べられていた。
先程取り出したのは、砂の魔人ウェルナーのもので、メドウは少し頬ずりをしてから遺霊魂を机に置く。
少し気が引けるけれど、今はオルディラット様の命令をやり遂げなければならない。メドウはウェルナーの遺霊魂に手をかざし、魂の封印を少しずつ解いていった。
オルディラットの命令は、ウェルナーの死ぬ前の記憶を辿ること、というものだった。どんなヤツに殺されたか。どんなふうに殺されたか。メドウは確認しなければいけなかった。
ウェルナーさん、ごめんなさい。勝手に記憶を覗かせてもらいます。けどこれも仇を取るためだから……。
そう自分に言い聞かせて、メドウはどんどん魂を取り込んでいく。そのうちに、遺霊魂の中に記憶の残滓が見え始めた。
ウェルナーは砂漠を巡回していた。
確か、オルディラット様の命令でシャングルトンに続く南の街道を塞いでいたんだっけ……。
遠くに一つの馬車を見つけ、妙な匂いを感じて襲う。
ウェルナーさんは鼻がよく利いた。何か気になることがあったのかもしれない。
中から二人、女の魔法使いが出てきて戦った。
メドウは前のめりになってよく目を凝らす。この人間たちがウェルナーさんを殺したわけか……。
戦いは少しの間平行線を辿ったあと、もう一人男の魔法使いが現れて急に終わった。
メドウはあまりの酷さに目を瞑ってしまう。ウェルナーさんはとても勇敢に戦っていたのに、三対一なんて卑怯にもほどがある。
怒りと悲しさが込み上げてきて涙が出そうになった。今すぐにでも泣いてしまいたい。ウェルナーさんが死んだことなど、少し前からずっとわかっていたのに、たった今知ったような気持ちになる。
けれど、メドウに泣くことは許されなかった。
「おーい、メドウちゃんいるー?」
地下室の扉がバタンと乱暴に開かれる。部屋に入ってきた、派手で露出の高い格好をした女性は、芋っぽいメドウとは随分雰囲気が違った。
「イ、イロナさん……! えと、一体なんですか……」
メドウは慌てて瞳に溜めていた涙を拭う。しかし、イロナには既にバレていた。
「あれ? ご主人様の死に傷心中だった感じ? ごめんねぇ」
イロナはあまり申し訳ないと思ってはいなさそうな調子で言う。そんなことはどうでもいいという表情が滲み出ていた。
「い、いえ、大丈夫です。何の用ですか」
メドウは気丈に返事をする。すると、イロナは遠慮なく用を話した。
「あー、オルディラット様からの命令を伝えに来たってていうかさ、あんた今までずっと二重契約だったでしょ」
イロナは面倒くさそうに尋ねてきた。どういう意図の質問かまだわからずに、メドウは答える。
「……はい、そうですよ。オルディラット様の眷属のウェルナーさんの眷属だったので……」
「そう、それ。ウェルナーが死んで今は解消済みになっているだろうけど」
背けたかった事実に触れられて、メドウは少し動揺した。
ウェルナーさんが死んでしまった。だから私は今、誰の眷属でもない。
誰の眷属でもないということは、誰かの眷属にならなければならない。そうしなければ、七災の中でも一番下っ端の使い捨て魔人に降格になるか、七災を抜けるかだ。けれど、抜けても行く宛てなんてない。
ウェルナーさんが拾ってくれたから、今まで私はなんとか二重眷属なんていう高い地位にいることができた。ウェルナーさんが居てくれたから、私は住むところにも食べ物にも困らず、ウェルナーさんが支えてくれたから、私はこの世に生きる意味を見出すことができた。
けれど、ウェルナーさんが居なくなってしまった私にはもう何もない。
私にとってウェルナーさんが全て。……会いたいよ。どうして行っちゃったの。
「そんで、あんたの処遇について。オルディラット様から指示があったわけ」
イロナに急にそう告げられて、メドウは息を呑んだ。降格か除隊命令か……。
しかし、帰ってきた言葉は予想とはあまりにも違うものだった。
「メドウ、今日からあんたはウェルナーの代わり。繰り上がりでオルディラット様の眷属になること」
一瞬、理解が追いつかなかった。メドウは最初絶句して声すら出ず、ただ頭の中で言われたことを反芻していた。
私がオルディラット様の眷属に。
「え……え? あの、本当ですか……?」
「わざわざここまで来て嘘言うメリットが私にある? そういうの面倒だから、早く受け入れて」
「ご、ごめんなさい。あの、でも、眷属契約って二、三人までが限界なんじゃ……。ウェルナーさんの枠が空いたとして、そこへ私が入っていいんですか? 私はイロナさん程の力も無いし、探せばもっと強い魔人なんていっぱいいますし……あのっ、その」
「これはウェルナーの意向でもあるの」
キョドキョドしながら喋るメドウにうんざりした様子でイロナは言った。メドウはそれを聞いて更に困惑したようだったが、何と言って良いのやらわからなくなり黙る。
「ウェルナーは死ぬ前にオルディラット様に度々申し入れてた。自分が死んだら後任はあんたにするようにってね。今回はオルディラット様がそれを聞き入れてくれた……というよりは、候補を探す手間が省けるくらいにしか思ってないんだろうけど」
「ちょ、ちょっと待ってください。それじゃ、まるでウェルナーさんは自分が死ぬのをわかってたみたいじゃないですか……?」
メドウにそう言われて、イロナは少し口角を上げた。そこに気づくとは。鈍臭いくせに、勘は鋭い。
イロナはメドウの肩に手を回す。
「別に、絶対にその場で死ぬってわかってたわけじゃないと思うなぁ。ただ、いつかは死ぬと思ってたってだけでさ」
「それは、どういうことですか……」
メドウは声を震わせて尋ねる。イロナはそんな様子が面白そうに笑った。
「あっはは。まあまあ、私と同じオルディラット様の眷属になるんだから、一つ良いことを教えておいてあげる」
「良いことって、どんな……」
「オルディラット様はね、私たちが死ぬような命令を平気でするの。実際、死んでしまったら、代わりの新しい魔人を連れてきて眷属にすればいいだけだから。私たちを使い捨ての駒くらいにしか思ってない。それをなんとかして私たちは生き延びなきゃいけないわけ」
イロナのゆったりどんよりした口調を不気味に思い、メドウは身震いする。
「生き延びるって、どうやって……」
「眷属を作って犠牲にするの。より沢山の駒を拾ってくる駒だと思われれば、使い捨てにされない理由ができる。ねえメドウちゃん、私の眷属たち、今何人目だと思う?」
メドウはイロナのことが急に恐ろしくなってきた。そんなの、想像したくもないことだ。
「ウェルナーは馬鹿だったなあ。私が懇切丁寧に教えてあげても、ウェルナーはあんたのことを頑なにオルディラット様に差し出そうとしなかったもの。……あんたのこと娘のように思ってて、すっごく大切にしてた。
ねえ、だから死んだんだよ? ……あ、でも自分のせいだって責めたりしないでねー。あんた心弱そうだから、そんなんで自殺とかされると困るの。標的が私に向いちゃうでしょ」
また泣き出してしまいそうだった。俯いて涙を堪える姿を面白そうに見ながら、イロナは先程メドウが座っていた椅子に腰を下ろし足を組む。
メドウからはもう言葉が出なかった。ウェルナーさんが私の命を助けてくれていたことを知ったとして、今更どうすればいいのか。
どうせウェルナーさんが居なければ私はすぐに死ぬ。今まで恩返しすることを目標にずっと頑張ってきたのに、これからどうすればいいの……。
私にはもう生きる意味なんか――
肩を震わせるメドウを見かねて、イロナは耳元で囁いた。
「ねえ、メドウちゃん。私が復讐……手伝ってあげようか。復讐しようと思ってたんでしょ?」
「それは……。でも、ウェルナーさんを殺した相手です。……私には到底太刀打ちなんか……」
「だから手伝ってあげると言ってるの。結局、ウェルナーを殺したのはオルディラット様じゃなくて、人間の魔法使いたちだったわけでしょう。憎いし、殺してやりたい。そうでしょう?」
「……はい」
イロナはニヤリと笑って、メドウの頭を撫でた。
これが彼女がオルディラットに命じられた任務。メドウの復讐心を煽ること。そして今、その任務は完了した。
「ウェルナーもきっと喜ぶだろうなあ。今はねえ、何を頑張ればいいのかわからないかもしれないけど、それでいいの。あんたはただ憎い相手に復讐するだけ。今やるべきことはそれだけなんだから」
その言葉を聞いて、元々光を失っていたメドウの瞳に、どんよりとしたドス黒い希望が灯る。
そっか……それが今の私の生きる意味だったんだ。
ああ……そっか、アイツら全員串刺しにして殺せばよかったんだっ……!
そうひらめいた途端、瞬時にメドウの頭の中に憎き三人の冒険者たちが思い浮かぶ。
ウェルナーさんと同じ串刺しにして、でもあえて生かして、そこから『私が悪かったです頼むから早く殺してください』って謝るまで一生痛めつけてやって……。
それでも殺してやらない……!!!
――遺霊魂に残った意志の残滓からなのか、漏れ出した砂が今やメドウの足元まで伸びてきていた。しかし彼女はそんなことに気づかず、黙々と憎しみを増長させていた。




