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記録34 ファーサイトを作る事にした

 あたしは今、夢を見ているようだった。

 次に目が覚めれば、これまでの全部がウソで、いつも通りの日常が続いてはいないか。

 聖女“カレン”なんていなかったし、エーヴェルハルトはあたしをハメなかった。ソル・デもシュニィも……レモリアも実は変わらずお城にいるんだ。

 ……夢オチを期待して帰る先がそれって事に、今さら笑える。

 夢だと自覚できている夢と言うのは、世の中に実在するけれど。

 多分、セレスティーナの遠見の能力だろう。

 肉体が意識を失ったけれど、霊体の方だけが機能している。

 それを理解すると。

 あたしの夢オチ説、現実逃避を否定する光景が視えた。

 エーヴェルハルトが、ぐったりしたセレスティーナの身体を、あの石の祭壇に横たえていた。

「聴こえてるよな? オレはこれから、お前の……セレスティーナの“力の封印”を解除しようと思う」

 何だっけ、それ。

「今までも、ある程度は出来てたろ。お前の想像が及ぶ範囲で、自在に魔法を作れる力だ。

 実感してると思うが、術式に変換する既存の魔術とは異質な、思考をダイレクトにこの世界に実体化出来る能力。

 お前は、呼び起こしたい事象をただ想像するだけで良い。指輪すら不要だ。

 ぶっちゃけ、何でもありの力だ。

 セレスのオヤジ、メルヒオールは、その力に限定的な封印をかけていたんだよ。

 うっかり作った魔法で、大事にならないようにな。

 その封印を、今から解除する。

 解除には、数日かかる。

 封印解除の時、肉体が起きてたら色々危険なので、悪いが倒れてもらった」

 言いながら、エーヴェルハルトはセレスティーナの……あたしの身体の周囲に、自分の血でいかにもな魔法陣っぽい紋様を描いていた。

 そんな力が本当にもらえるなら。

 カレンを一発で消せるのかな。

 レモリアが亡くなった事、無かった事に出来るのかな。

 ……まあ、出来るわけ、ないよね。

 あたし程度の、矮小な思考強さでは。

「多分、オレ達は負けるだろう。

 外から来た奴に頼んで悪いが……お前が最後の希望だ」

 処置が済んだらしく、エーヴェルハルトは立ち上がった。

「悪くない気分だ。

 男には、勝てなくても逃げられない時ってのがある。それを、久々に思い出させてもらえた」

 あんた、仮にも国家(?)元首なんでしょ。

 そういうジェンダー軽視発言すると、バッシングのいい的だよ。

 そんなの。

 (あたし)だって同じだよ。

 これで、絶対に“負け”られなくなった。

「じゃあな。また、会う事があれば」

 

 カレンが、とうとうお城に到達した。

 戦いの内容は……カレンの呼び出した配下がレモリアからシュニィに変わったくらいだ。

 他、特筆事項はなし。

 まあ、城内がかなりメチャクチャになったから、修理が大変だろうな……と言うか、ここまで廃墟にされたら、もう新築した方が早くない?

 って所。

 マイルズは辛くもシュニィに勝ったけど、エーヴェルハルトはカレンに負けた。

 そしてエーヴェルハルトは教化されて、全てを託されたマイルズが敗走。

 武器を粉微塵にされたカレンは、パワースポットから大聖堂へと帰還した。

 ノワール・ブーケ城は、実質陥落した事になる。

 教国の勝利だ。

 

 何と言うか。

 一応、エーヴェルハルトのその後を覗いてみた。

 腹を立てても仕方がなかったんだと、思う。

 そう言う世界なんだもん、と一周回って思えるようになってきた。

「その様に仕向けた私が忠告するのも可笑しな話ではあるが……封印を解かれたセレスティーナの力は強大だ。

 彼女一人でも、この国を滅ぼし得る」

 エーヴェルハルトには、カレンを欺いてやろうだとか、本心を隠してやろうだとかって敵意は少しも無いだろう。

 けど。

 ソル・デは、あんたが信じたかったウソを支持した。そうしないと、あんたの事が可哀想だからだよ。

 レモリアは“前回”、あんたの前で、モルフォ蝶しか出さなかった。今回は、あんたのものになるくらいならと死ぬことを選んだ。

 シュニィは、されるがまま、女の子の格好を黙って受け入れた。

 エーヴェルハルトが“素”の顔を見せることは、一切無い。その堅苦しい口調は確かに本来のものだったけれど?

 あんたは、他人の全てを手に入れた気になって、何一つ真実にたどり着けなかった。

 

 皆、あんたの望みを尊重して、それに適応して変化して“あげた”だけなんだよ。

 

 なぜか?

 だって、それしか許されないよう“教化”されたんだから。

 あんた、このままだと、いつか目敏く、こんなの違う! って癇癪起こすだろうね。あたしには特別な理解があるからわかる。

 でもそれ、お門違いもいいところだからね?

 そうしたら、今度は皆、そんなあんたの望み通りの姿に変身してあげるだけ。

 それもそれで、あんた、みじめだけど、でもじゃあ、その上どうしろっての?

 世の中って、どこかの段階で個人のワガママが通らないようにちゃんと出来てるんだよ。

 

 さて。

 本当にもう時間がない。

 あたしは霊体を城に戻すと、裏手の花畑で最終決戦の準備をしているマイルズの所へ。

 あたしが呼び掛けると、彼は……諦めたように肩をすくめた。

 何? あわよくば終わるまで寝ててくれればとか、この期に及んで考えてた?

 ホントに、肝心な所に限って甘ちゃんなんだから。   

 とにかく、花畑に、あたし用の武器も仕込んでおくように指示した。

 

 少しだけ、横道に逸れた話をする。

 以前、ネットで“最も強力なゲームの武器top10”と言う記事を読んだ事がある。

 古今東西のテレビゲームに登場する武器で、一番強い(反則性能なのは)何だろう? と言うものだ。

 で、ランキング2位の“ファーサイト”と言う武器に、あたしは見覚えがあった。

 これ、小学生の頃、従兄弟と遊んだ某FPS(一人称視点の銃撃戦ゲーム)に出てきたビームライフルなんだけどさ。

 ・掠めただけでほぼ即死

 ・射程距離無限

 ・弾はあらゆる遮蔽物を透過

 ・スコープもあらゆる遮蔽物を透過

 ・スコープには自動ターゲティング機能まで完備

 

 ゲームの持ち主は、従兄弟。

 普段からやり込みにやり込んだ彼に対し、あたしは、たまーに親に連れられてきた完全アウェー。

 あたしも、限られた対戦回数の中、結構努力して上達したつもりだったけど、まあ遊びに行くたび、一方的にボコされてたよね。

 あたしには、圧倒的な力量差の相手に無理ゲー強いられる宿命でもあるのかな。

 そんな、狭い世界での雑魚狩りの何が楽しいのか、どこに達成感があるのかは、あたしにはわからないけど。

 

 これにしよう。

 あたしの最終奥義。

 

 この世界のどこにいても相手をサーチして、光速の即死攻撃をお見舞いする。

 理不尽死にゲーの、ラスボスに相応しい能力でしょ。

 やり過ぎ?

 知るか。これは実戦だ。

 実戦に卑怯だなんて言葉は存在しない。

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