記録29 シュニィへの謝罪
つまらない光景に腹が立つ。
当然、何の前触れもなく現れた紅目の黒竜と、人の背丈よりもデカい剣の事を言ってる。
何の疑問もなくそれに乗り、それを手にして、竜となったシュニィに挑みかかるカレンの事を言ってる。
Fソフトウェア社の元祖死にゲーシリーズでは定番のシチュエーションが、あの闇と光のキセキでも踏襲されていた。
巨人殺しの大剣だの、大蛇狩りの槍だの、特定のボス相手専用の武器が用意されていて、その武器でしかまともにダメージの通らないと言う“趣向”のシチュエーションが。
竜となったシュニィーー蒼穹の白死竜、シュナイデルグ打倒の為に用意されたのが、今、カレンが持っているあの“律の空割剣”だった。
あんなに大きな剣を、カレンはひ弱な腕で軽々と振り回す。何か、わけわからない文字の連なる、金色のわけわからない光が刀身から放射されている。
軽々しすぎて、プラスチックのおもちゃにしか見えない。
あれでしょ。“イベント戦闘”の必須アイテムに装備制限あったら、キャラクターのステータスによって不公平が生じるから、筋力1でも振り回せるように出来てるんでしょ。
すごいね。なんて組成、なんて名前の超合金で作ったんだろうね?
天界とか、ああいうのがルーツの素材とか?
何でもありだね。サタンだから?
この「演出のためにあつらえられた装置」を現実で、それも“あたしの知る”シュニィの命がかかってる場面に持ち込まれると、ホントに虫酸が走る。
戦いの内容については、もうあたしから言う事は何もない。
ネットで調べれば攻略の事例とかいくらでも載ってるし、各自でどうぞ。
こことかね。
https://ncode.syosetu.com/n1143ht/24/
青竜シュナイデルグの皮膚だった破片とか、氷山の破片とか、エーテルの白金光とかが入り交じった花火を背景に、あの女はシュニィの身体を横抱きに受け止めていた。
“竜”としての半身を殺されたあの子の身体は、見た目相応の質量に減ったようだ。
あたしは。
結末を知っていながら、指をくわえて見ているしかできなかった。
シュニィは、生きているのだろうか?
“あの子”は生きている。
そして、これからあの女に教化されるのだろう。
これもゲームの話だけど。
シュニィは、竜の姿になって空を自由に飛びたがっていた。
ゲームでは、遊び半分に。
そしてこの現実では、レモリアの仇を討つために。
この世界、作ったメーカーの奴らさ、
あの“少年の”シュニィさえ生きてりゃ、それでいいって考えで、この設定にしたわけ?
あたしは。
シュニィが、そしてソル・デが生きているだけでも良かった。
そう、思うことにした。
今は教化されても、取り戻す方法は必ずある。
レモリアのように、死んでしまったらその希望すらないのだから。
ごめん、シュニィ。
そう思わないと、あたしは多分、ここで折れてしまう。
それはできない。
少なくとも、今からやる事がある。
現状、あたしにしかできない事が。
いつか、きっと、助けにいくから。だから。
そして。
景色が氷山と霜に埋もれた景色の中。
見覚えのある漆黒の騎士が、カレンめがけて突っ走って来る。




