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記録28 シュニィと聖女達の交戦

 例えばあたしからシュニィへ、あのゲームの事を正確に伝達する手段があったとする。

 多分、それでも彼は行動を変えないのだろう。

 あらかじめ危険がわかってるなら逃げるとか、そう言う問題ではない。

 ソル・デとレモリアがそうだったように、引き下がれないものがあるから、引き下がらない。それだけなのだろう。

 古風な言い方をすれば「男には逃げられない時がある」とでも言いたいのだろうか。

 だとしたら、見かけによらないけど、そんな所に限って変なギャップつけないでほしい。

 確かにちょっとカッコいいよ。

 けど、そんなカッコよさ、もう沢山なんだよ!

 ……ゲームの中と違って、リアルシュニィは全く無駄の無い動きで聖女達を事務的に処分していく。

 彼が空に用意した小・大エーテルがみるみる肥大化していくのがわかる。

 

 どうやら今回は、大鎌を持った市民出身のザーラも正式に聖女認定されたらしい。

 開幕一番、教化のロザリオでフルプレートの甲冑騎士を召喚していた。

 女騎士ジュリエッタもまた、配下の巨人を従えていた。ジュリエッタの後方で、トリシアがいつでも魔法でサポートできるように隊列を組んでいた。

 聖女、および、その候補者がコンビを組んではならない法も無い。

 ジュリエッタとトリシアの間には、とうに前衛・後衛の関係が築かれているようだった。

 そんな当たり前の協力関係すらも、聖女間ではおぼつかないのが現実らしい。

 競争心の無い者同士だからこそ得られた、相互信頼なのだろう。

 そして。

 武術に関して、マイルズにしごかれるうち、あたしなりに分かった事がある。

 拳(剣)で語り合う、じゃないけど、武器で戦うと言う行為にも“文法”のようなものがあるという事だ。

 例えば、あたしの調練を始めた当初のマイルズは、早々に諦めさせようとしていたのが、今にしてわかる。

 それが、予想外に食い付かれて方針を切り替えたのか、同じ叩きのめすやり方でも、感じ取れるニュアンスが変わっていた。

 恐らくこれは、同じ相手と何度も手合わせをしないとわからない機微だろう。肉眼で見る分には、多分、最初も最近もマイルズの態度に差が見られない。

 会社員時代でも、他人の仕事のしかたとか見て、そう言うの感じたっけな。

 かく言うあたしは、どんな風だったのやら。

 話を、今現在の事に戻す。

 ザーラと甲冑騎士は、ジュリエッタと巨人は、互いに命を預けあっているのが、あたしから見ても明らかだった。

 例えば今も、ザーラが大振りな水平斬りを仕掛けた。

 あんな重心の傾倒した武器をフルスイングで振り抜けば、当然、彼女の細い身体は大きく泳ぐだろう。

 そこへ好きなだけ反撃を差し込んでくださいと言ってるようなものだ。あたしなら、怖くてできない。

 けれど、シュニィがお望み通りにザーラへ襲い掛かると同瞬、甲冑騎士が割り入って大盾を構えた。

 シュニィも、流石は竜の質量である。

 お姫様みたいな男の子の雑なパンチ一発で、堅牢な要塞じみた大盾の上から、フルプレートの大男がぶっ飛ばされた。

 けれど、シュニィが更なる追撃を加えようとした時には、ザーラが縦に鎌を振り下ろしていた。

 流石のシュニィも、魔法を中断してこれを回避。

 まあ結局、圧倒的な力の差で潰されたのは、ザーラの方なんだけど。

 この甲冑騎士も、ジュリエッタの巨人も……本人の意思に反して、無理矢理“教化”された関係性だろうに。

 どうしてそこまで、お互いを信頼できるのだろう。

 始まりこそ道具任せの洗脳だったとしても、今ある信頼関係は本物だとでも言うのだろうか。

 そう考えると“前回”のレモリアが言ったように、教化もまた自然の一部であり、彼らは在るがままに生きているだけなのかもしれない。

 人間の心って何なんだろう。あたし、わからなくなってきた。

 

 首尾良く、空のエーテルが飽和を迎えた。

 迎えて、しまった。

 バトラーはやはり、カレンに向けて召喚サインを出していた。

 あたしの警告など、今のシュニィの耳に届くはずもなく。

 カレンは、バトラーを召喚する事に成功していた。

 彼女だけが優秀な執事に守られて、シュニィの猛攻を潜り抜けて。

 シュニィが、巨大な青竜となって空を覆う瞬間を、のうのうと迎えていた。

 そして。

 青竜が“氷河期”そのもののようなブレスを吐き、あるいは踏みつけて、

 ジュリエッタとザーラを潰した。

 もう、彼女らに復活用のエーテルを提供してやる義理は無かった。

 完全な死を迎えた二人の聖女。

 トリシアの、鼓膜を引き裂くような絶叫。

 

 そして。

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