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記録21 レモリアの、

 ソル・デを教化したカレンは、すぐさまレモリアの駐屯する燐光の沼地へと舞い戻る。

 あたしが操作していた時のようなヘマもなく、ノーミスで最深部のパワースポットを制圧。

 これで、何度レモリアに殺されようが、瞬時にこの場所へ復帰可能となってしまった。

 レモリアの命は、ひとつしかないのに。

 

 頭上にレモリアを頂く広場へ出たカレン。

 殊更、彼と話す気もないらしいあの女は、黙ってソル・デを召喚。

 空中のレモリアは、疲れたように肩をすくめた。

 頭の良い彼の事だ。

 この時点で、自分が浮遊しているこの陣容が瓦解する事を悟ったのだろう。

 実際に、交戦がはじまった。

 そして、あたしらの予見通りとなった。

 ソル・デだったものに蹴散らされる、墓守たち。

 そして役目を終えた巨人は、実体化するエーテルが無くなり、一足先に教国へ送還された。

 地上に引きずり降ろされて、燐光毒まみれになるレモリア。

 その配下の亡者たちは、糸が切れたマリオネットのように全て崩れ落ちた。

 場に残ったのは、カレンとレモリアの二者。

 レモリアが腕を振るうと、その手先に、燐光毒混じりの激しい水流が生じた。

 蒼き月光の剣。

 レモリアはそれを、毒に滅びつつある身体で鋭く振り回した。

 魔術師である彼に、剣の心得などそれほどないだろうに。

 けれどそれは、昔動画で見た剣道有段者のそれよりも迅く、鋭く、鬼気迫る太刀筋だった。

 素人が、無心で振り回すからこその。

 しかし。

 そんな無作為なはずの剣筋を、カレンは全て見切っていた。

 冷酷なまでに最小限の動作で、カレンは月光剣の合間を潜り抜ける。

 だが、それでも。

 ほとんど重さの無い、水の特大剣。

 更に、飽和を迎えたエネルギーが、光波となってカレンを襲う。

 これも寸前で躱されたが、あの女の後方で、何本もの木々がバキバキ繊維質な音を立てて倒木した。

 当たりさえすれば、両断できる。

 いや。

 あたしも既に、知っている。

 それすらも、レモリアからすれば囮。

 本命の、食人蝿を召喚しようと手をかざしてーー。

 彼の視線が、あの女の背中に備わった棒のようなものに向けられた。

《なるほど、ね》

 さすがはレモリア。

 燐光毒を鹵獲(ろかく)される前情報があった事で、奴の真意に気付いてくれたらしい。

 けれど、どうする?

 見た所、奴は今回も解毒魔法をセットしてきている。

 攻めあぐねていれば、レモリアが先に毒に倒れてしまう事に変わりは無かった。

 そして、

《聴こえてるんだろう? セレス》

 どういうつもりか、不意に、あたしへ振ってきた。

《君は、僕が今まで出会った他人の中で……まあ、一番マシだったよ》

 こんな時に、何を?

 ねえ?

 やめてよ、

 そんな、

 お別れ、みたいな、

 

 レモリアは懐から、無造作に短刀を取り出すと、

《君のお陰で、人間らしく死ねそうだよ》

 

 自分の胸にそれを躊躇いなく突き立てた。

 

 あたしは、

 声も出なかった。

 レモリアは、穿たれた心臓から大量の血を流して、前のめりに倒れた。

 手に展開されていた月光剣が弾けた。

 まるで、彼の魂を表現しているかのように。

 酷い。

 あんまりだ。

 ソル・デの時みたいに、止める隙さえくれなかった。

 むしろ、ソル・デの前例があったから?


 カレンはそれを、何の情感もなく見下ろしているだけ。

 そうだろうよ。

 あんた、レモリアの事なんて、マイルズのフラグとしか見てなかったもんね?

 前回は、教化する余裕があったから、たまたまそうした。

 死ね。

 本当に思う。

 死ねよ。

 何で、何であんたみたいな空っぽで無価値なゴミクズが、そこで平然と立ってるの?

 おかしいじゃない。

 釣り合いが、取れてないじゃない。

 無価値なゴミが、より価値のある人間を、奪うなよ。

 一人寂しく、誰にも看取られる事なく、汚い肉塊になって朽ち果てろ。

 

 ーーそんな、あたしの願いが通じたのだろうか。

 

 レモリアの亡骸がバネ仕掛けのように飛び上がると、ものの一瞬で生成された月光剣で、あの女を水平に両断した。

 無様に上下泣き別れとなったあの女は、あたしの望み通りにくたばってくれた。

 後に残るのは、虚ろな足取りでその場を彷徨う……レモリアだった亡者だけだ。

 本当にムカつく男。

 責任取るって、そういう事?

 誰が、

 誰が喜ぶんだよ、そんな事して!?

 

 カレンが、性懲りもなくレモリアの所へ戻ってきて再戦。

 生前よりも更にキレを増した太刀筋、ハナから出力最大の月光剣。

 そして、亡者ならではの、身体への負荷を全く配慮しない猛攻。

 数えたけど、あのゴミは17回、レモリアに処分された。

 でも結局のとこ。

 最後には順応したあの女が、レモリアの遺体を完全に破壊してしまった、たった一度の事で、奴の勝ちと言う事になってしまった。

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