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第33話 YOU DIED

 “教化”がはじまった。

 うずくまるマイルズは一言も発しない。

 もはや呪詛の一つたりとも、言葉をかけるつもりはないらしい。

 彼の身辺に巻き付くような白金光が行き場を無くして彷徨っている。

 やはり、この段階では教化出来ないようだ。

 彼女とて、甘い期待は持っていない。

 しかし、今のマイルズは教化への抵抗に精一杯で、指一本動かせない筈だ。

 動きを封じる事に意味がある。

 そろそろ、来るか。

 最後の敵が。

 光の闇の公女、セレスティーナ。

 花畑の向こうで、小さな人影がおぼろげに現れた。

 カレンは、傍らに置いた自分のコピーを見る。

 エーテル残量には余裕がある。

 “前回”、あの女に何度も殺された経験もまだ記憶に新しい。

 “(わたくし)”が二人居れば、必ず勝てる。

 ボスキャラとしてのセレスティーナは、その見た目に違わず魔法タイプだったが、間合いはまだ、

 

 遠く、セレスティーナから深い(みどり)と漆黒の入り交じるエネルギーの奔流が走り、カレンを貫いた。

 

 碧の光に身体の内側から灼かれながら、カレンは力無く前のめりに倒れた。

 暗転してゆく視界の中、コピー・カレンが、むしろ本物よりキレのある動きでセレスティーナの攻撃を躱して斬り掛かる様子が見えたけれど。

 まあ、遺された彼(?)では勝てまい。

 即死だった。

 カレンは死んだ。 

 

  

  

 大聖堂の私室で、カレンは目を覚ました。

 だが。

 ……いつもならバトラーが目覚めの挨拶をかけてくれるのだが、今回に限って居ないらしい。

 取り敢えず、場が妙に静かな事に違和感を覚えつつも、カレンは上体を起こした。

 ーー“前回”、あんな攻撃はあっただろうか?

 長距離狙撃魔術である葬送の楔ですら、あれだけの射程は無い。

 威力も馬鹿げていた。

 一発当たっただけで即死と言うのは、死にゲーのラスボスとしても無慈悲に過ぎるのでは無いか?

 とにかく。

 マイルズに掛かった教化の呪縛は、そう簡単には解けないだろう。

 今回は彼をセレスティーナ復活の前にやっつけられただけでもよしとする。

「避けられなくもなさそうだったし、何度かやれば倒せるかな」

 気を取り直して、リトライだ。

 とにかくバトラーを探し、魔法の編成を対セレスティーナのそれに組み直して、

 そして、

 

 カレンの目前に、夜の清流を思わせる、透き通った闇色の黒髪がたなびいた。

 セレスティーナの幻影が、何の情感も無い面持ちでカレンに手をかざして、

 

 碧と黒の入り交じる、滅びの奔流がカレンの全身をまともに呑み込んだ。

 カレンは死んだ。

 

 どういう事なのか!?

 カレンは目覚め、ベッドから起き上がった。

 先ほどカレンを殺したばかりのセレスティーナの幻が同じ場所に居て、ゆっくりとこちらを向いて、

 

 碧と黒の入り交じる、滅びの奔流がカレンの全身をまともに呑み込んだ。

 カレンは死んだ。

 

 カレンの居た空間には白金色の光の残滓(ざんし)が漂って……程なくしてそれも完全に消えた。

 蘇生分のエーテルも、あっという間に尽きた。

 

 カレンが蘇る事は、二度と無い。

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