第15話 愛しの貴方は突然に
息も絶え絶えに、ソル・デが声を振り絞る。
「殺、せ……」
カレンは、これ見よがしにエストックを納刀。
教化のロザリオを取り出し、巨人の眼前に突き付けた。
「勝者が敗者の命令に従うなど。不条理と言うほかありませんわ」
ソル・デは、諦めたように双眸を閉じた。
無事、ソル・デを(文字通り)手中に収め、トリシアとも別れ、下山。
その道中で。
「マイルズ、様……!」
恋い焦がれた暗黒騎士が、カレンの事を待ってくれていた。
今回は愛馬は居らず、徒歩だった。
ーーああ、馬は一度でも殺したら、それ以降出て来ないんだっけ。あんなオマケに興味は無いけれど。
武器は微妙に変わっていて、両手に黒塗りの超長槍を一本ずつ持っていた。
なかなか酔狂な二刀流だが、マイルズ様であれば美しい舞を見せてくれるのだろうと、彼女は信頼を抱いていた。
「要求は一つ。ソル・デの魂を解放しろ」
凛と命じる声は、冷たくて熱い。この声だけで陥落する乙女も相当数居るのでは無いか。
「お断りですわ。“コレ”は私が鹵獲したモノですから」
殊更挑発してやると。
マイルズは一言も発する事なく、カレンに肉迫。
勝負にならなかった。
胴体を容赦なくパイクで刺し貫かれ、片手で高らかに持ち上げられた。
晒し者のように挙げられたカレンが、マイルズを見下ろす格好になった。
「もう一度言う。ソル・デを解放しろ」
血の気が引いて死にゆくカレンが、凄絶な笑みを浮かべた。
「お断りです」
槍に刺されたまま地面に叩きつけられ、再度、かかげられた。
「解放しろ」
「貴方様に出来るのは、こんな無意味な脅しだけ。
それが定命の人の限界ですわ」
「貴様」
「私ね、迷って居りますの。
貴方にとって竹馬の友であり無二の同胞であるレモリア様と、貴方の人生そのものとも言える主君エーヴェルハルト閣下と、」
「どちらから先に、殺して差し上げようかと」
もう一方のパイクで頭蓋を刺し貫かれた。
ーーこう言えば、貴方はきっと、もっと憎んでくれる。
ーー貴方は、エーヴェルハルトを選ぶしかないのだから。
ーーそしてレモリアを喪った時、貴方は自分を責めに責め抜く事でしょう。
ーーそれは何て、美しい、
カレンは死んだ。




