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犠牲

 リエンの魔法剣せいけんの刃と俺のけっかいがぶつかる。

 少しでも力を緩めると簡単に押し負けてしまいそうで……


 「確かに面白い能力だ……防御に特化した能力で前線で拳を振るう……」

 そうリエンが感心するように俺を見る。

 だが、均衡していた力を自ら緩める。


 俺は勢いが余るようにそのまま拳をリエンに振り下ろすが、

 リエンはその身をひねると簡単にそれを回避する。


 隙だらけとなった俺の身体に……

 魔法剣エクスカリバーを容赦なく振りかざす。


 「……運動能力で負かされることくらいは予想済みです……」

 俺はすでに送っていた魔力で変色していたエメラルド色の瞳でリエンの姿を追う。


 右脇あたりを狙った魔法剣を追った瞳がそれを予測し、右手でそれを防ぐ。


 「!?」

 俺ごときがそんな動きが出来た事が想定外だったのか少しだけリエンが表情を変える。


 自惚れなのはわかっていたが……

 その隙を狙うように、その場で身体を旋回させるように足を振り上げ回し蹴りを入れる。

 もちろん、ただの回し蹴りでは意味がない。

 余力の魔力を右足に回す。

 エメラルド色のオーラを宿す蹴りを叩き込むが……


 「……上級能力者すらも困惑する能力を披露したと思えば、まったくの素人のような攻撃を繰り出す……」

 その素人の一撃けりに逆に戸惑うように言う。


 「……もう少し、ライトやアストリアに……身のこなし方を習っておくべきだったな」

 そう俺が漏らしながら……


 「……まぁ、無駄だろうけどさ」

 俺はそう言いながら自分の周囲に小さな決壊の壁をいくつも精製すると……

 それを一気にリエンに叩き込む。


 それはライトのようにそのみきりで簡単に回避されると思ったが……


 「くっ……」

 それを身を呈して防ぐ。

 初めて見る攻撃に対応できなかった……?

 いや……もしかして……


 あののうりょくライトだけの技能なのではないか?

 ライト同様の運動能力、剣捌き、判断能力を持っているだろう……

 

 彼女もまた……二つの能力を所持していたのかもしれない……


 もちろん、俺の攻撃では一瞬怯む程度の影響しかなく……


 再びリエンの連撃による刃が何度も俺を襲う。

 結界を張り巡らせ、そして右手でそれを防ぐが……

 結界の隙間をつくように、リエンの一撃が俺に振り下ろされるが……


 「……レス、共に……更なる高みを目指そう……アストリア、彼女には悪いが彼女は不要だ……私が生涯……君と共に父超たかみを目指す」

 そう、リエンの一撃をライトの刃が防ぐ。


 「……その可能性を否定した……今のお前にわたしはこえられない」

 連撃が今度はライトを襲う。

 今の彼女ではその動きについていくことがやっとで、その魔力ちからは劣っている……


 それでも……

 自身で剣を合わせ……レスとの戦いを見て……

 そののうりょくは……


 「!?」

 その娘の成長……身のさばきに……

 目を見開くように驚く。

 全ての回避ルートを導き出し、その身を素早く動かし……

 最低限の身の動きだけでその攻撃を回避し、回避しきれない一撃はその剣で防ぐ。

 そして、さらに繰り出される連撃いちげきを身をひねるように旋回させながら、突き出した刃がリエンの首筋にかかる。


 「……情けをかけたつもりか」

 そう……一瞬驚いた目をしながらも、すぐに冷静に冷たい目で娘を見る。


 「その一撃……振り下ろさなかった事……後悔するぞ」

 そう聖剣を強く握りなおす。

 その侮辱に怒りを覚えるように……


 「二度目はない……」

 そう強く握った聖剣を振り回すようにライトに迫る。


 ライトの瞳がその剣先の行き先をその動きを先読みするように、

 刃の動きより先に瞳がその先に移動する……

 魔王により得た身体向上能力……それを持ってしても、

 やはり彼女ライトの能力に並ぶ上回ることなど不可能だろう。


 だが……その父の威厳は……

 その瞳を上回る身の捌きで……


 身体の動きが追いきれなかった一撃がライトに振り下ろされるが……

 ライトはそれを恐れることなく……

 再び遅れるようにリエンに剣を振り下ろす。


 俺はライトを信じている。

 ライトは俺を信じてくれている。


 リエンの一撃は俺の結界に防がれ……

 ライトが振り下ろした刃が再びリエンの首筋で寸止めされる。


 「……二度目……まだ私たちを認めてはくれませんか?」

 そうライトが父に言う。



 ・

 ・

 ・



 「もう一度言う……今更の裏切りなど許さない……僕たちに手を貸せ」

 そうニアンがルディナに言う。


 「……断る、そう言ってる……」

 容赦のないニアンの攻撃にボロボロになりながらも、ニアンの申し出を断り続ける。


 「ニアン……」

 現場に戻ったマナトがニアンを呼びかける。


 「父さん……」

 そうニアンがマナトに……


 「……仕上げです……そのためにも彼女の力は必要です」

 そうマナトがルディナを見る。


 「断る……そう言っている……もう父の私の気持ちに嘘はつかない……」

 そうルディナが言う。


 そんな女を言い聞かせるように再び水晶が周囲を飛び回り、逃げまとうルディナの身体を取り囲む。


 「……っ」

 悔しそうにその攻撃に身を構える。


 その水晶からの攻撃を相殺するように……


 「遅いよ……どこいってたのさ」

 そう振り返らず、後ろから来ただろう男に言う。


 「ごめんね……これからはおじさんは君に拒絶されるまではルディナちゃんの傍に居るから……」

 そうナキがその場に現れる。


 「……また、あなたですか……」

 彼女ルディナに召喚石を渡したことを少し悔いるように……


 「……彼女は望んで学園ここに居たのです」

 そうマナトが言う……

 瘴気やみに足を踏み入れたのは自身だと……

 その言葉にルディナが顔を伏せるが……


 「あんたが彼女の気持ちを語るなよ……言っただろ、おじさんは彼女の言葉に従うって……てめぇが勝手に彼女の言葉を代弁するなよ」

 そうナキがマナトを睨む。


 「……だったら彼女の意見を直接聞いてみてはいかがですか?」

 そう……ルディナをマナトは睨むように……


 「学園長そのひとの言うとおりだよ……あの日の私は……その言葉に……その卑怯ズルに……知ってたでしょ、軽蔑していたのでしょ……所詮私はそんな存在なの……思ってること言いなよ……私を拒絶しなよっ」

 そう自暴自棄にルディナがナキに言う。


 「ルディナちゃんが、おじさんを選ぶか……学園長それを選ぶのか……」

 ゆっくりとルディナを見た瞳をマナトに向ける。


 「おじさんの存在を否定するも肯定するも……ルディナちゃん次第さ」

 そうナキはマナトを睨みながらルディナに言う。


 「……そんなの……」

 どちらを選ぶかなど……

 自分を肯定してくれる存在を目の前に……


 「持論だけどね……言葉の成立には対照ぎせいを持って成立するのさ……」

 そうナキが言う。


 「正義を語るために敵を犠牲にする……幸福になるためには不幸な人間を見てそれを見捨てる覚悟ぎせいに生きる……」

 その両立がその理が世界を作り上げる。


 自らを犠牲にし……または誰かの犠牲を得て……

 その対立は成立する……している。


 正は負を得て成立する。

 その対義語の平等な関係のもとに成り立っている。


 幸せと不幸……それがどちらかに偏ってしまえば、

 その言葉の成立など成しえない。


 「君が望んでくれるのなら……おじさんは……ルディナちゃん以外の誰かを犠牲にしてでも……君を幸せにしてみせるよ」

 そう、ナキがルディナに言う。


 「……くだらない」

 そうニアンがナキを睨む。


 「……君がどんな想いで、おじさんたちの前に立ちはばかるかは知らないけど……おじさんはたった一人おんなのために、そんな君たちを犠牲にするよ」

 そうナキはニアンに言う。


 「たった……初日……出会って初日……それでも、この召喚であいに意味があるというのならね……平等ぎせいを産んでも……おじさんはここに産まれたことによる犠牲いみを成し遂げるよ」

 そうナキが言う。


 「……くだらない」

 そうニアンの言葉を繰り返すようにマナトが言う。


 「どうして……」

 そうルディナはナキに問うように……


 「どうして……?ルディナちゃんおじさんだってね……臆病なんだ……」

 そうナキは言う。


 「誰かを幸せにすることに対義語ぎせいが必要とするのなら……努力だって苦労だってしてみせる……」

 そうナキが言う。


 「誰かを幸せにするには……それくらいの覚悟ぎせいは必要だろ……」

 そうナキがルディナを見ながら……


 「誰かを愛して幸せにするってのは……それくらい単純むずかしい事さ」

 そうナキはルディアに笑みを浮かべる。


 ルディナはそんなナキの後姿にただ……


 その背を見守り……


 ただ、彼の犠牲に感謝する。

ご覧頂きありがとうございます。


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