神
開けた部屋……
真っ白な部屋……
その部屋に同時に踏み込んだ4名が……
中央に佇む一人の女のもとに、ゆっくりと歩み寄る。
その女性を挟んで会話をするように……
「……あんたは何者で……俺たちに何をさせようっていうんだ?」
その中央の女に……
「まったく……どうなっているんだい、異世界に来たばかりなのにおじさんにはさすがに理解が追いつかないよ」
そう……痒くもない後頭部をかきながら、片目を瞑りナキが女を見る。
「で……今更、私たちの前に現れて……取りあえず何者だ?」
そう、沈黙の冷笑の顔で光の宿らぬ目をセティが女に向ける。
「……フィーリア=ルルゥブレイカー……そう名乗っていました」
そう……女が言う。
……今……どうでもいい疑問だったかもしれない……
それでも……
「……俺が(現世で)会ったときよりも……随分と若返って見える……けど」
そう俺が、彼女の見た目に……
多分……全員が同じ疑問を……
「そう……規定ていましたから……」
そうフィーリアと名乗る女が言う。
現に四方から彼女は見られている。
なのに、何処か全員が彼女と正面を向き合い会話しているようにも見える。
「やれやれ、相手に合わせて年相応にでも化けられるとでも言うのかい?」
そのナキの言葉に……
「それ相応の会話をするのに……失礼の無い規定で語っていただけです」
そうフィーリアが言う。
「やれやれ否定しないのね……全く、神様か何かなのかい?」
……そのナキの言葉にも無言で……
出会った時にそう言ったとでも言いたそうに……
「……それで、わたしたちに……」
何をさせたいのか……そう学園長が口にする。
「……本当は転生者《7めい》が集まるのを待っていたのですが……」
そう四人を眺めながら……
「……後……《《二人》》足りませんが……」
その言葉に全員が疑問を覚えながらも……
「……その神でもくれるって言うの?」
そうセティが嫌味を口にするように……
「……望むのでしたら……と言ったら?」
そうセティの言葉に答える。
「……気にいらないね……こんな場所に呼んでもどかしい言い回ししてんじゃねぇよ」
そう、冷たい目でセティが睨み付けながら……
「……この世界を正しく導ける正義を私に見せてくれるなら……」
その権利を受け渡すとフィーリアが言う。
「……かつてからの……権利ですから」
そうフィーリアが続けて言う。
「昔から、その神を転生者が奪い合ってきたと言う訳か?」
そう俺が言う。
「むしろ……その逆ではないでしょうか」
そう言葉を否定する。
そして……フィーリアは語る。
最初の神が誰であったのかは自分も知らない……
どんな理由があったのか……飽きたのか……絶望したのか……
神はその権利を放棄して……
別の世界から新たな人間を呼び込み……
呼び込んだ7名の言葉を聞き……
その言葉を受け入れ、正しい世界を作ろうとした。
だが……どの言葉を取り入れようと、
世界を完全に正しい姿にすることなど適わなかった。
だから、神はその中で強きものに、
その世界を自由にできる権利を譲った。
・・・
フィーリアがそう語る。
「それで……」
つまらなそうに、セティが返す。
「そんな権利を得て……転生者は何をしている?」
そうマナトが言う。
「……こんな一人……孤独で一人、神を成せと言われたところで……神に何ができるのでしょう?」
そうフィーリアが言う。
「で……俺たちに何をすれと……神を納得させるだけの正義を示せばいいのか?4人で争って神を勝ち取ればいいのか?それとも神を殺ればいいのか?」
そう尋ねる。
「……そのどれでも構いませんよ」
そうあっさりと返す。
「どうするんだい……」
ナキが神以外の者に尋ねるように……
「……興味ないねぇ」
そうセティがあっさりとそれを放棄する。
「……俺も……でも、その権利が喉から手が出るほど欲しい人は一人いるんじゃないのか?」
そう……学園長に全員の目が向く。
「……彼は、おじさん賛同しないけどね」
正直なところ……同意だ。
その権利を得ようと思ったのか学園長が臨戦態勢に入る。
念動力で作り出された魔法をナキに飛ばす。
「セットアップ……」
ナキがルディナから受け取った紅の剣で武装する。
どちらも譲らぬように、先の勝負の続きを始めるが……
「領域解除」
そうフィーリアが口にすると……
真っ白な空間に真っ白な波動が流れるように……
すべての能力がリセットされる……
「……やれやれ、この聖域で争うなってことかい」
そうナキは動きを止める。
俺も試しに結界を目の前に作ろうとするが、能力が上手く発動しない。
なんとなく見たセティも俺と瞳が合うと、
自分が能力が発動できないと言うように首をふる。
あくまでも……ある日に神という権利を得た……
そして今日までその権利を維持した勝者
「……あなたたちには、真実を知る権利がありました……今はただそれをお伝えしたかっただけです」
そうフィーリアは口にすると……
「……だから、どうか……私を止めてください……」
そうフィーリアが俺たちに告げると再びまぶしい光に包まれると……
再び学園の外に放り出されていた。
……また一人……
転生者《5にん》はすれ違うのだろうか……
正義も信仰も……バラバラで……
当然、守るものも違う……
全く……考える事は山ほどある……やるべき事は沢山ある……
この異世界に着てからもっとも長い1日かもしれない……
まずは……学園裏の山を見上げる。
無事……逃げ出せただろうか……
ライトの父……ブレイブ家の部隊がそれを探しに、
次々と山に侵入していく。
・
・
・
山道の途中……魔王と教師と分かれた。
……レスの行方が心配だったのもあった……
そしてそれ以上に……矛盾した自分の行動に気持ちに……
その人に一度もそんな反抗心を持ったことなどなかったのに……
現れた男に……
「……そこをどきなさい」
そうやさしく諭すように……
そんな相手に……
「ここを……通す訳には行きません……たとえ父親でも……」
魔力で作り出した剣を向ける。
「器を破壊できないというのなら……父が代わりになろう」
リエンは武装することなく、娘の方に一歩、また一歩近寄る。
「とまれっ!」
その力強い言葉に、歩みを止める。
「魔法剣を収めなさい……」
今なら許すと言う様に……
再び歩きだすリエンにっ
「とまれっ!!」
そう叫ぶライトに……
「剣を収めろっ!!」
そうリエンの叫びにびくりとライトの身体が反応する。
すぐに剣を強く握りなおす。
自分の役目は……魔王の瘴気を打ち消す事。
その器まで……
「……その器を壊さないと……魔王は復活する……お前も知っているだろう」
そうリエンが冷たく娘を見る。
「……器を壊そうと、それは同じことっ」
そうライトが返すが……
「……器を壊さなければ、器はすぐに別の瘴気を取り込み……元の力を下手をすれば半年もかからずに取り戻す……器を壊せば何十年、何百年とその姿は戻らない……その違い当然理解できるだろう」
そうリエンが言う。
「……だけど……レス……レスなら……何か……方法を……」
そうらしくない根拠の無い言い訳を並べる。
「レス……また彼の名前か……」
少し呆れるように……
「……彼のせいか……娘がこんな風になってしまったのは……」
そうライトを通じて誰かを睨む。
「……自分以外の誰かに頼るなど……他人に意見を預けるなど……娘はするはずなかった……」
そう冷たくライトをリエンが睨む。
「……学園に預けたのは間違いだったか……そんな……くだらない人間にうつつをぬかすとは……」
ライト同様にリエンが魔法剣を抜く。
「……訂正しろっ」
その一瞬だけ……リエンが背が震え上がる。
娘がそんな目をするなど思いもしなかった……
憎悪の目……余りにも勇者として相応しくない目に……
「レスを……彼の侮辱する言葉だけは許さないっ!」
魔力の剣がぶつかり合う。
そんな父娘の争いも知らず……
こんな世界の正し方を……
俺はただ……こんな情けない男を信じてくれる勇者のために……
今……ただ出来ることを……
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