フレイム
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7年前……
年上、3人に囲まれていた。
まぁ、自分の身の振る舞い方に問題があったと言われればそこまでなのだが……
「なぁ、エミル……てめぇ生意気なんだよ」
そう人目のない路地裏に連れ込まれた。
取り合えず、リーダーっぽい奴を睨みつけ、
構わず、右ストレートをその顔面にぶち込んでやる。
「ぶはっ」
情けなく目の前の男が後ろに吹っ飛ぶが……
「てめぇ」
仲間の二人が一斉に殴りかかってくる。
最初は、3人相手でもそれなりに抵抗して殴り合いをしていたが……
体格も人数も負けている……
それでも諦めずに起き上がり拳をあげる。
そして、諦めることなく1時間以上が経過して……
3人の年上の人間が地面に転がっている。
そんな3人よりもボロボロの自分がやせ我慢だけで立っている。
そんな事を、ここ最近はずっと毎日続けている。
そして、後ろからパチパチパチの手のひらを叩く音がする。
まぁ、少し前からは気づいていた。
「やるなぁ、ボウズ……」
最初から、だれを助けるわけでもなく、観戦していた人物。
20代後半くらいの年齢だろうか……
「誰だよ……見てたなら助けろよ、大人だろ?」
その言葉に……
「……助ける必要など無かっただろ、結果論だけどな」
転がる3人の人間を見ながら……
「……ボウズ、てめぇには素質がある……喧嘩に置いてはてめぇみたいのが一番おっかねぇ」
そう続ける。
「……身体は負けていた……」
そう素直に自分の未熟を口にする。
「だからこそだろ……倒れねぇやつほど、諦めずに立ち向かってくる奴ほど、こえぇ奴はいねぇよ」
そう俺の目を覗き込むように言う。
「あんた……名前は?」
そう男に尋ねる。
「ラーク=フレイム」
そう名乗る。
「ボウズ、てめぇは?」
そう聞かれる。
………
沈黙が続く。
「どした、名前がねぇのかてめぇは?」
「……嫌いなんだ、自分の名前……」
そう返す。
女みたいな名前だ……実際そう馬鹿にされた事もある。
「エミル……てめぇ」
後ろで一人の男が起き上がる。
リーダー格の男……
黒い瘴気をまといながら……
「ちっ……障落ちか」
ラークは冷静にその男を見ながら……
「さわり……落ち?」
もちろん、それが何かは知っているが……
さすがにそれを目の前に、相手にするのは初めてだ。
さすがに足が震えている。
「さすがに、てめぇの根性だけではどうにもならないか……」
ラークの右腕に炎が宿ると……
「炎舞……火葬っ」
右手で障落ちの男の首を掴み、そう言葉にすると……
男の身体が一気に燃え上がる。
そして、もともとそこにはその人間は存在していなかったように黒い塵となり姿が消える。
「助かった……」
そうラークに素直に感謝の気持ちを伝える。
「別に通りすがりの火葬屋だよ」
そう返しながら立ち去ろうとする男に……
「待ってよっ」
そう叫び呼び止める。
「……戦い方……教えてよ……強くなりたいんだ」
障落ちした化物を恐れることなく簡単に処理をする……
そんな男に言う。
「言ったろ……ボウズはすでに十分に強い」
そう返されるが、もちろん納得などしない。
「エミルっ!!」
再び後ろから声がする。
20代前半の女性が立っている。
「もう……また喧嘩?エミルのお母さん心配してたわよっ」
俺のボロボロの顔を見ながら、そう手ぬぐいで口元の血をぬぐう。
「いたっ……もっと優しくやれよ」
心配するわりには乱暴な処置。
「あなた……もしかした、あなたがっ!!」
そうラークは睨みつけられ、疑いを向けられる。
「い……いぃ……」
戸惑うラークに……
「通りすがりの火葬屋だって……」
そう代わりに答える。
「火葬屋?」
そう不思議そうに怪しむように……
「うん、助けられた……」
その言葉にようやく瞳の圧が軽くなる。
「そうでしたか……ありがとうございました」
そうお辞儀をするが……これ以上かかわりたくないともとれる様子で、
「ほら、エミル帰るよ」
そう俺に言って連れ帰ろうとする俺の手を……
ぐいっとラークが引っ張る。
「……えっと、彼女は……君のお姉さん?」
何処か緊張でもしたまなざしで……
「俺の家の近所の世話焼きのねぇちゃん」
そう俺が返す。
「ご結婚とか、お付き合いされているとか……」
その言葉に……
「聞いたことない」
そう返す。
「……これから俺に稽古をつけてくれたら、また会えるかもね」
そんな俺の悪の囁きに……
「ちょっとエミル……何してるのっ!」
そう振り返り、俺にそう言葉をかける。
「大丈夫、もう少しだけ話してすぐ帰るよっ」
そう追い返すように言う。
「もう……早く帰ってお母さんに誤るのよ」
そう言い、諦めたように立ち去る。
「シーナ=ホーク、今年で確か23歳……」
そう先程の女性を紹介する。
「俺さ……母親でさ……俺の親父になってくれよ」
そんな俺の言葉に……
「あ……俺はてめぇの母親には興味ねぇぞ?」
そうシーナの背中を見つめるラーク。
「わかってるって……父親かわりに稽古をつけてくれたら、多少……口利いてやるよ」
その俺の提案に……
「……せめて、デートの1回くらいは約束しろよ」
そうラークは折れる。
「……わかったよ親父」
そうにっこりと微笑む。
「で……名前は……エミルでいいのか?」
そうラークが尋ねるが……
「嫌いなんだよ……女みたいな名前……」
そう顔を反らして……
「親父……つけてくれよ」
そう俺はラークに請う。
「たく……親がつけてくれた名前くらい大事にしろ」
そう返される。
無言で返す俺の冷たい目に……
今の約束が破棄されることを恐れた親父は……
「わーた、わーりました!!」
そう言い……俺を見て少し沈黙する……
「そうだな……」
そう、俺にラークは名前をくれた。
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フィルとフレア……そして、セティとライトと俺……
5名が学園裏に転移する。
この山を登れば、前にレインや、クリア達とピクニックに来た場所に繋がっているだろうか……
身を隠し続けるには無理があるが、今この場を凌ぐためにも……
「先生……フィルをつれて、山のどこかで身を隠していてくれ」
そうフレアに告げる。
「お前は……どうする?」
そうフレアに返されるが……
不意に……目の前に次元の歪みができる……
セティの仕業か?
そう目を向けるが……
「私じゃないよ、少年……」
そう返される。
「レス……どうしたと言うのだ?」
そう不思議そうにライトが尋ねる……
フィルとフレアも不思議そうに見ている。
見えているのは……二人だけということか。
共通する二人にしか見えない歪み……
「どうする……少年?」
何者かの罠とも思えるそれに……
「乗ってみるさ……」
そう俺はその歪みに進む。
「なるほど……」
そうセティが俺の後ろに続く。
他の3人には見えない歪みに俺の姿が消える。
そして……それに続くセティの姿も……
「レスっ!!」
そう後に続こうと見えない歪みに踏み込んだライトの姿はその歪みに触れることを許されずその場に姿を残す。
戸惑うライト……
そして……俺とセティが向かう場所は……
原点か終点か……
その転生者の……女に……出会うために。
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