飛空艇
「くっ……」
魔王の一撃で起き上がる事すら難しい……
ナイツはそんな自分の姿を悔やみながらも……
目の前には魔王の瘴気で生成された魔物がいる。
部屋が魔王の瘴気の濃度が高くなるにつれ、
現れる魔物も強力になっていく。
巨大なランスが魔物の身体を粉砕する。
「全く……キリがないのぉ」
そうアストリアが一撃でその魔物を撃退しナイツを見る。
「……忝い」
ナイツはアストリアの手をかりその場から起き上がる。
「しかし……どうする、今回ばかりはどうにかできる相手ではないぞ」
そう、勇者と魔王の戦いに目を向ける。
「はぁーーーーーーっ」
ライトの一撃を、フィルが魔王の鎌で防ぐ。
鍔迫り合いのライトの剣が魔王の鎌の炎に侵食されるように……
ライトが魔力の剣を放棄すると、後ろに飛び退く。
「……どうすれば……いい」
フィルがそう呟くように……
「僕は……ただ……普通に……でも、この魔王を放棄……するには……滅びるしかない……」
そう、悲しい顔で……
「先生……レス……世界のために何が正しいか……なんて知っている……」
そうフィルは呟きながら……
「敵……僕はどうすればいい……」
そう敵にその答えを尋ねる。
「私に……それを答える余裕は無い……」
そう再びライトは魔力の剣を握る。
「魔王はその欲望のために力を振るえばいい……私は、ただ使命に身を任せて貴様を斬るっ!!」
再び地面を蹴り、臆することなく魔王に立ち向かう。
手にしていた鎌が地面落ちると炎の壁を作り出す。
アストリアの凶悪な一撃すらも受け付けない灼熱の業火……
そんな勇者の凶悪なまで意思……
攻撃を防げたとしても、その意思までは……
灼熱業火を突き破り、その身を焼き焦げることすら気にせずに、
炎を突破し、魔王の前に現れる。
さすがにフィルも不意をつかれるような形で、
初めて、その一撃を受ける。
「……勇者……」
少し悔しそうにフィルが呟く。
・
・
・
あの高低差……どうすれば……
巨大な飛空挺……
そんな上空に身構える二人……
あそこまで攻撃が届く能力など……
クリアの弓……
だが、届いたとしても当たる前に対処されてしまう。
アセリアの旋風……
さすがにあの高さまでは……
仮に届いても同じように飛び乗る前に追撃されるだけだ……
「クリエイト……」
ルディナがそう言うと……
指の間にいくつもの玉を挟んでいる
「ルディナちゃん……その武器……」
前に戦った男が使っていた爆薬?
「試作品だけど……」
そう言いながらも、船の上から投下する。
3人を覆う結界を張る。
「……容赦ないなぁ」
俺はそう呟きながら……
「レイン……水はまだあるのか?」
そうレインに尋ねる。
「あぁ……まだある」
そう戸惑いながらも答える。
「……周囲に武器を創り出して飛ばす技……あれで」
兄が得意とする技……
「私には無理だ……私には自分を離れて形を維持させる能力はない……」
そうレインは言うが……
以前……初めてレインと共闘した日を思い返す。
「空中で水が固定されていれば……大丈夫なんだよな?」
雨水を利用した時を思い出す……
レインからペットボトルの水を借りるとそれを上空にぶちまけながら、
その水を結界で囲っていく。
「レイン……創造しろ……」
そう、俺の結界に囲われ空中に浮いている液体に……
「形どれ……できた?」
水が結界に包まれたまま、形を変える。
数多の武器が現れ……
「飛べっ」
数多の武器が船目掛け飛ぶ。
「できた……私にも出来たぞ、レス」
少し誇らしげにレインが言う。
「……やってくれるねぇ、ボーイ達」
二人には届かないまでも、その飛空挺にダメージを与える。
「……しっかりしてよ」
そうルディナは言いながらも……
この二人……もしかすると凶悪な二人組かもしれない……
「クリエイト……」
船に鉄壁の装甲が追加されていく……
そして、メインの砲台の他にいくつか小さい固定砲台が追加されていく。
「さっすが、ルディナちゃん」
ナキもそれにはさすがに驚いている。
「となれば……アセリア……潜入、頼めるか?」
そう、隣の活発少女に頼む。
「へっ……あの船に乗り込むって言われても……」
そうアセリアが戸惑う。
「足場は作る……旋風で一気に駆け上がれないか?」
そう尋ねる。
「なるほどぉ、レス君の結界を足場にして……」
そうイメージしながら……
「任せてぇ」
そうアセリアが言う。
ルディナが創り出した砲台からの攻撃を防ぎながらも、
さらにアセリアが船に潜入するための結界を作り出す。
「弐の型……旋風」
両足に風をまとい一気に飛び出すと、
俺の創り出した結界を足場に、
二人が立つフロントデッキまでのぼる。
「まったく、おじさんの船に潜入とは……」
現れたアセリアが旋風状態で動き回る。
「させないっ」
ルディナがアセリアを追い応対する。
「レス……もう一度だ」
レインがペットボトルの水を取り出して言う。
「……ペットボトルの水だけで……後どれだけ……」
もっと……何か……
「なぁ、レイン……レインも能力から銃とか作れるのか?」
そう尋ねる。
一度の攻撃で能力を消費してしまうのは、限りある水を段数とする以上はいくら威力が高いといえど……
「できるが……私の魔力でどこまで……」
そうレインが返す。
「いや……魔力はある程度、俺の結界で賄う……」
遠くに飛ばしても……俺の結界が水の膜の役目をはたしていれば、
崩れることもないだろう……
「今から俺が言う武器を想像してみてくれないか?」
ぶちまけた水を空中で二つの球体を作る。
・・・
アセリアとルディナが衝突する中……
ナキが銃を真下に向ける。
「あの……結界を破るには……」
飛空艇のメイン砲台を眺め……
「時間を稼がせてもらうよ、ボーイ」
そう、ナキが真下のレスを見下ろし言う。
「なんだ……?」
不意に何やら円錐型の物体が飛んでいる。
ナキの声に、アセリアとルディナも目を向ける。
一定距離動いては停止を繰り返していて……
円錐の先が光り輝くと、魔力を吐き出す。
「……なんだい、そいつは……」
ナキが驚いたように声をあげるが、
ビームが船のデッキを破壊していく。
「……ニアン先輩の……能力と同じ?」
ルディナとアセリアもその攻撃に……
・・・
「よく……こんな能力の使い方を……」
そうレインは関心しながらも、意識を研ぎ澄まし、
ビットの操作に集中している。
・・・
「全く……おじさん、こんなの現世でロボットアニメでしか見たことないよ」
そうボヤキながら……
「……ボーイ、君かい?」
そう、レインからレスに目線を動かす。
「だが……タイムアップだよ、ボーイ」
炎上する船の上……
砲台に凄まじいエネルギーが集まっていく。
「ルディナちゃん……撤収だ」
そう言って、対戦中のルディナの手を取る。
「ちょっ……なに?」
急に手を繋がれ戸惑いながらも、素直に引っ張られる。
「飛ぶよ」
船の縁に右足を乗せると一気に船から飛び降りる。
「死んではくれるなよ、ボーイ」
そんな凶悪な一撃を放ちながらも、敵の心配をするように、
二人で船を飛び降りる。
「くっ!!」
すべての魔力を目の前に展開した防御結界に集中する。
レインの創り出していたアクアビットも、
俺の結界の能力が無くなり、水となって地に落ちる。
発射される砲撃……
全員がその一撃と俺の結界に注目する中……
「あれ……」
発射直前に飛空艇が消えて無くなった。
「ありゃ?」
一人、船の上に取り残されていたアセリアが落下する。
咄嗟に必要のなくなった結界を解き、アセリアの足場に結界を作る。
「どうなってるの……」
飛空艇から飛び降り、その高さでうまく着地できずに不格好に転げたままのナキが、飛空艇のあった場所を見ながら……
「……こっちのセリフだよ」
ルディナがナキに返す。
「……飛空艇から離ると……ダメなんじゃないのか?」
そんな俺の言葉に……
なるほど……と左手のパーに右手のグーを降ろして、
「早く言ってよ、ボーイ」
そう、へらへらと笑いながら……
「ルディナちゃん……これってどういう状況?」
笑うのをやめて、そう尋ねる。
「あたた、あたたたぁ……ボーイ、おじさん急にお腹が……たんま、ちょっとたんまね」
そう言う、ナキを周りは不思議そうに見て……
戦意を削がれた俺は……
「おじさん……それ死語だぜ?」
そう突っ込んでおく。
「道が開いた、行くぞ」
そう、ツキヨが言ってそれに習いほかの皆も進んでいく。
「あ……あぁ……行くけどいいか?」
そう、一応……二人に尋ねる。
「好きにすれば……」
ルディナが、意外とあっさりと道を塞ぐのを諦める。
部屋にはナキとルディナの二人が残る。
………長い沈黙。
「ルディナちゃん、ごめーんね?」
とりあえず、謝罪から入る。
「いや……許さない」
残念ながら許されなかった……
・・・
「ねぇ……ルディナちゃんはどうして、敵と戦うんだい?」
なぜ、学園の味方をし……今の彼らと敵対するのか……
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