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 刀を返したものの、このまま……兄弟喧嘩って訳にもな……

 そう考え、やはり自分がシグロの前に立つ。


 「なんのつもり……?」

 シグロが自分の前に立った、俺に言う。


 「……あんたら風に言うなら……黙らせる」

 そう、両腕に防御魔力の闘気を巻き付ける。


 「抜刀……王者静寂おうじゃせいじゃく

 シグロは改めて刀を抜くと、おれを睨む。


 「静まれ……無眼無音っ」

 シグロの言葉に……


 目に魔力を送る……

 流れる俺の防御魔力と魔王の魔力が、

 その能力に惑わされる事なく敵を追う。


 「姉のが10倍速かったぜっ」

 俺の右手けっかいがその刃を受け止める。


 シグロは一瞬顔を曇らせるが、すぐにバックステップで距離を置く。


 「静かにしろっ……」

 「静風しっぷう

 シグロの刀から風の刃飛ぶ。


 「静か過ぎて、音が届いてないぜ」

 俺の結界に攻撃は遮られる。


 ナイツに聞いた話では、攻撃能力と防御魔力では、

 もちろん、発動する規模にもよるが、

 防御魔力の方が消費魔力ねんぴはよくないらしい……


 確かに、俺は基本的に部分結界しかはらないが、

 全体を包む結界の消費は結構疲れる……


 まぁ、防御極降りのお陰なのか、防御こっちに回せる魔力ってのも多いんだろうけど……

 ただ、防いで敵の動きを見ているのは余り続けたくない。


 そして、魔王の魔力おかげで、いろいろと能力にアレンジできるようになった……


 「たまには……違う使い方でもしてみるか……」

 俺は呟きながら……

 小さな結界を自分の周囲に発生させる。


 「なんだ……?」

 黙って俺とシグロのバトルを見ていたツキヨが不思議そうに見ている。


 「飛べっ」

 魔王の魔力を送り多少攻撃魔力を高めた結界を飛道具やいばのはへんのように飛ばす。


 「ちぃっ」

 シグロの右、左と掠る様に切り刻む。

 斬撃は衝撃に変換される。


 見た目は無傷ではあるが、それなりのダメージにはなっただろうか……

 オトネのレイフィスと戦った時の応用ではあるが、

 結界まりょくを砕いていないだけ、消費ふたんは軽い……

 威力ははるかに、オトネの魔力で飛ばす方が高いだろうが……


 「小賢しい……真似を……」

 やはり、それくらいでやられてもくれない……か。


 

 シグロが再び刀を構えると、地面を蹴り一気に詰め寄ってくる。

 一撃を防ごうと結界を張ろうとするが、


 「……レス、私がやる」

 その一撃をレイヴィが刀で受け止めていた。


 「ねぇーさん、今の……僕に勝てると思ってるの?」

 そう自信あり気にシグロが言う。


 互いに幾度も刃をぶつけ合い、互いに引く様子が無い。


 ただ……素人目、贔屓目無しで見ても実力はレイヴィが上だ。

 先程の俺たち4人との対決が無ければ……


 明らかに魔力も身体も負担が大きい。

 崩れ落ちそうな足を何とか保っている。


 お互いに、技を出すように構える……

 レイヴィが自分の身体の心配をするように一度目線を反らすが、


 同じ流儀でありながら……


 それでも、片方は何度も努力の末に手にした技だ。

 その強さも……弱点も知り尽くしている。

 

 ぶつかり合う刃の音と……

 向かい合っていた互いの身体が入れ替わるように、互いに背を向けあい立っている。


 がくりと足をついたのはシグロの方だ。


 「ははは……あははははっ……いいよ、ねぇさんの勝ち、今回は勝ちだ」

 そう言いながら笑い続け……


 「でも……あんたは一生報われない……一生、そのままだっ!」

 そう言葉を投げ捨てる。


 膝をつく、シグロの首にかけていた刀の刃を納める。


 「知ってるよ……ずっと……ずっと……私の言葉おもい一方通行だれにもとどかない……」

 ゆっくりと俯き……言葉を聞き流す……


 「あんたがいくら……あいつら言葉いいつけを守ろうと……もう届かない……」

 そうシグロは言う。


 「父さんは……先週、命を引き取ったよ」

 シグロは立ち膝をついたまま、姉を冷たい目で見上げうっすらと笑みを浮かべ言う。




 ・

 ・

 ・



 「どうか……サイレス家の誇りを繋いでくれ……」

 1年前……


 学校を卒業し……

 ブレイブ家の使者としてその身柄を置くことになった。


 父もかつては、その一員として仕えていた。

 だが、15年前くらい前の話だと思う……魔王の瘴気による災害……

 学園がまだ魔王をその手に収めていなかった頃……


 その瘴気による災害は世界の至る場所で起こっており……

 ブレイブ家に仕えていた父も、その都度に、

 災害のあった場所へと訪れ、その討伐にあたった。


 だが……ある日、その強い瘴気にあてられ、

 瘴気に身体を蝕まれ……障落ちしないまでも、

 前戦に出ることが難しくなった。


 わたしシグロにその役目ねがいを託すことになった……


 ただ、私は……そんな父に手をかけさせないと、自分で考え……懸命に努力をしてきた。

 弟は……病弱で……兎に角、手間のかかる子だった……

 才能はあったのだろう……それにやはり跡取りとしては男が良かったのか……

 

 平均より上の成績が私が出しても……

 弟が1から1つ2つ、頑張って良い成績を出すと、

 全てそちらに持っていかれた……


 私がこの家を出て……ブレイブ家に仕える時も……言葉など無かった。


 そして……1年前に再び私は家に呼ばれ……

 いよいよ、立ち上がることすら出来なくなった父親の寝床に呼び出された。


 「どうか……サイレス家の誇りを繋いでくれ……」

 後、一年……弟の卒業せいちょうを見届けられないと悟ったか……

 今更、このひとは私にそんな言葉ねがいを……


 「お前だけが……頼りだ……」

 今まで見たことのない……弱りきった……それでも優しい顔で……


 煩いっ煩いっ…… 


 ・

 ・

 ・






 再び、レイヴィがこちらを向く。


 「和解など……無理……せめて静かに散らせてよ……レス」

 そう寂しそうに……レイヴィがこちらを見る。

 託された言葉ねがいを全部……壊してほしい……と。


 「……聞いてなかったな……名前」

 そう……俺は彼女の覚悟を聞き流すように……


 「レイヴィ=サイレス……」

 そう彼女が名乗る。


 「レイヴィか……俺結構、舌足らずでさ……あだなで呼んでいいか?」

 その問いに……不思議そうな戸惑うような顔で……


 「レイ……だと……色々と被るからなぁ……」

 レインにレイフィス……の顔を思い浮かべる。


 「レヴィ……なんてどうだ?」

 そう……了承を請う。


 「……煩いっ……やめてよ、私は……レスと……戦う……サイレス家……私は……ブレイブ家のため」

 そう、悲痛な顔で刀を強く握る。


 「……まぁ、敬語を使えよって話だけどさ、年上わかいやつに敬語を使うのが苦手なんだ……そこは許してくれ」

 そう苦笑しながら言う。


 「煩いっ……聞けっ聞けよっ……私はレスを……斬らないとならないのっ」

 悲しそうに……その役目を全うしようと……


 後ろで再び臨戦態勢になる仲間を無言で左手を伸ばし停止する。


 「聞いてるよ……レヴィ……だから、俺の言葉も聞いてくれ」

 そうできるだけ、優しく笑顔で言う。


 「あぁ……来い、不満ぜんぶ……俺が受け止めてやる」

 そう右手を前方にかざし、結界を創り出す。


 「煩いっ煩いっ……だれも私の言葉を聞いてくれないっ……わたしはそうして実現してるんだっ」

 刀を構える……

 あえて、真正面から結界おれに立ち向かうように……


 「今更……何してんだよ、もう……(僕たちは)終わりなんだよっ!」

 そうシグロが言う。


 「うるせぇーーーー! 黙ってろっ」

 そう俺はシグロに叫ぶ。


 「聞こえねぇだろ……俺は今、レヴィと会話ことばを交わしているんだ」

 そうレヴィを見る。


 「……ほら、続けろよ……レヴィ、俺が全部、受け止めてやる」

 そう、結界を創り上げる手に再度意識を送る。


 「無常迅速むじょうじんそくっ」

 今ある全力を……本気の想いを……その刃に乗せて……


 「レヴィ……やっとお前の本音が聞けそうだ」

 俺は小さく笑って……

 右手を下ろすと結界を解く……


 「レスっ?」

 レヴィが戸惑い攻撃の手を緩めるが……その刃は止まらない。


 俺は両手を広げて、その一撃おもいを受け止める。


 刃が腹部を貫いて、背中から刃が突き抜ける。

 強い衝撃を受けるが血は流れていない……

 本当に面白い仕組みだよな。


 それでも、相当な身体への負担だろう……

 口から少しだけ血が零れ落ちる。


 「レス……レス?」

 突き刺した本人レヴィが一番に戸惑いながら……

 周りの仲間もさすがに心配そうに見つめている。


 パニックの中……引き抜こうとした刀を彼女の手の上から阻止するように左手を置く。


 「どうして……どうして……」

 何がしたいのか……完全にパニックになっているレヴィに……


 「こうでもしないと、お前……俺と会話してくれないだろ……」

 そう言って、レヴィの頭の後ろを優しく掴み、自分の肩のあたりに頭を寄せる。


 「レス……それより、手当てを……」

 そう慌ててるレヴィの背中に左手を回して……


 「大丈夫……俺、結構、丈夫なんだ……防御とりえがそれだけなんだけどな」

 そう、意識を保つのがやっとの状態で表情を作る。


 「……レス……ごめん……ごめんなさい……」

 自分のした事を震えるように……怯える。


 「大丈夫だって……」

 そう言い……


 「いいから……話してくれ……お前が今日までどう頑張ってきたのか……俺なんかでよければ……全部聞いてやる」

 そう……レヴィに請う。


 二十歳おとなになった自分ことすら忘れて……

 5年も10年も遡り、幼くなった自分レヴィの姿を映し出すように……


 子供のようにわんわんと泣きながら……

 思い返すように、1日、1日の出来事を俺に話してくれた。


 「それから……それからねぇ……」

 ずっと……ずっと聞いてもらいたかった言葉はなしを……


 「うん……うん……それから?」

 俺は邪魔しないように……静かに相槌をうちながら……


 「……レヴィ。 ここまで……よく頑張ったな……」

 そう優しく囁く。


 「……うん」

 ずっと聞きたかった言葉おとに……

 彼女は……無邪気な子供のように嬉しそうに笑った。



 ・

 ・

 ・



 「ねぇ……レス、大丈夫?本当に痛まない?」

 確認するように俺の身体を触って確かめるレヴィ。


 「あぁ……大丈夫だって」

 そう何度も確認するレヴィに言う。

 ここでのんびり休んでいる暇もない……

 

 「ててて……」

 少しだけ休んでいた身体を無理に起こそうとして、

 そう言葉が漏れる。


 「大丈夫……レス……おっぱい触る?」

 その言葉に思わず吹き出す。


 「どさくさ紛れに何言ってるんですかっ」

 そうクリアがレヴィに叫ぶ。


 「煩い、黙れ……」

 レスが視界から外れた瞬間、スイッチが切り替わるように人格が入れ替わる。


 「おっぱい揉んだら傷が癒えるかもしれない、男とはそういう者だと聞いたことがある」

 そんな淀んだどこかの知識を披露する。

 ……案外、本当せいかいかもしれないという言葉は今は口にしないでおく。


 「だったら、わたしのモノを揉ませますっ!!」

 そうムキになってクリアが叫ぶが……


 「クリア……あんたも恐ろしいこと口走ってるぞ?」

 そうツキヨが突っ込みを入れるが……

 興奮しているクリアの耳には届いていないようだ……


 「もぉ、落ち着いてよ、二人ともぉ……そうやってね、二人が喧嘩するならねぇ、レスちゃん、私のおっぱいをね……」


 「「「 黙  れっ!

        って! 」」」


 「えーーーー、なんでぇ」

 3方向から浴びせられた罵倒にヨウマが嘆く。


 「駄目だよぉ、皆ぁ……中には揉ませたくても揉ませられないクレイも要るの……言葉には気をつけるんだよぉ」

 そして、何故か説教を始めるヨウマに……


 「……ヨウマ、あんたも言葉には気をつけろ……あのクレイは、貧乳そのはなしのあるところ、何処でも現れるぞ?」

 そう本人も冗談交じりに言う。


 「そんなB級ホラーみたいな展開……」

 俺も笑いながら返そうとするが……

 俺たちを照らしていた部屋の明かりが不意に遮られるように影がおりる。


 ヨウマがおそる、おそる後ろを振り返りその影の主を見上げる。

 そして、全員が同時にその顔を見上げる。


 俺らの戻りが遅いと探しに来た女性に……



 「「「「 きゃーーーーーーーっ 」」」」

 全員がその結末に悲鳴をあげる。

ご覧頂きありがとうございます。


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励みと今後の動力源になりますので、何卒宜しくお願いします。


また、気に入った話面白かった話があれば、イイネを添えて頂けると

今後の物語作りの参考にさせていただきますので、あわせてお願い致します。


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この場を借りてお礼を申し上げます。

有難うございます。

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