表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/213

名前

 「煩い……聞きたくない……もう……何も……」

 耳を塞ぎ、雑音を振り払うように頭を振る。

 何十年もずっと……ずっと悩まされてきた雑音おと……


 「落ち着けよ……貴方おまえは何で敵対かたなを……」

 俺の声も雑音ききたくないと……


 「煩い……勝利をっ……」

 そう答える……


 「……聞きたい言葉おとを……」

 この数十年……聞けなかった音をただ求めて……



 「……頑張ったのに……頑張って優勝てにいれたのに……勝ち取ったのに……努力した……不正などしなかった……なのに……」

 なんで……成し得ない努力ばかり評価するっ……


 「無常迅速むじょうじんそくっ」

 そう突進するレイヴィに……


 「舞い散れっ残桜ざんおうっ」

 そうヨウマが俺の前に陣取り、その一撃を相殺する。


 唯一、技を封印だまらされていない……

 そして、刀能力かりょくだけなら、恐らくは刀使いの中では、

 現トップであろう……


 一人、修羅きかくがい能力者かたなつかい……

 一人、嘘吐げんかいしらず能力者ぺたんこは要るが……



 「レスちゃん……よくわからないけど、駄目だよぉ」

 何故かヨウマに心を読まれるかのように叱られる。


 「無断借用むだんしゃくよう……舞い散れっ残桜ざんおうっ」

 再び、見よう見真似でレイヴィが一気にヨウマに突進する。


 言って、自分の技……

 そして、妖刀ダリアは……

 この場の刀を頭一つ抜けた能力だ……


 基礎能力、運動能力……それらを劣っていても……

 真正面からぶつかれば……


 ヨウマが振り払った刃で、レイヴィは再び元の場所で刀を構えている。


 「煩い……煩い……聞こえない……聞こえないだろ」

 そうレイヴィは耳を塞ぎ……耳を傾け……


 「……わたし……頑張るから……頑張るから……勝つから……だから……」

 そう……遠い昔に聞けなかった言葉おとを……

 ずっとずっと……求めている……


 「無眼……」

 俺たちには、余り意味が無いというのは気がついているだろうが……


 「無音……」

 それでも、厄介なのは変わらない……


 それでも……

 俺とツキヨの瞳がそれを追う。


 対抗できる手段なかまは揃っている。


 「無常迅速むじょうじんそくっ」

 ツキヨの瞳がその残像するほんものを見極める。


 突き出した刃がそれを相殺する。


 その隙をつくようにヨウマがレイヴィを切り裂くように刃を振るうが、

 レイヴィが同じく刃を振るい刃同士がぶつかり合い、それを受け止める。


 すぐにレイヴィが刃を振り上げそれを地面に向けて振り下ろす。

 俺はその間に入り……


 頭上に液体のようなビームシールドのような結界を創り出す。

 魔王の力によって多少のアレンジを加えられるようになった。


 「……これ、失敗したら超かっこ悪いよな……」

 そう苦笑しながら、失敗したときの保険のように呟く。


 結界ビームシールドでスピードと威力が軽減されながらも、

 刃が俺の顔に迫ってくる。


 俺は屈んだ姿勢のまま、レイヴィの振り下ろされる刀を見上げながら、

 頭上めさきで合掌するように強く手を合わせる。


 「なっ……」

 レイヴィが目を見開き驚くように俺を見ている。


 「無刀取むとうどり……」

 成功したことに安堵しながら、破邪暗黙あいてのかたなに魔力を送る。


 「オトネッ!!」

 今だとそう告げる。


 「びゅーん」

 黙らされていたオトネがその能力で……


 「どーんっ」

 レイヴィが刀から手を離し、後ろに吹き飛ばされる。


 「無言だまれっ」

 そう立ち上がったレイヴィが言葉にするが……


 「ばぁーんっ」

 オトネから指先から飛び出す強力な魔力に成す術なく吹き飛んでいく。

 能力を発動させるための破邪暗黙かたなは俺の手に今も収まっている。


 俺が手を離さない限り、再び抜刀はつどうすることもできないのだろう。


 「煩い……どぉして……」

 そう……立ち上がる気力も失うように……


 「あーあぁ、大丈夫?」

 そう一人の男子生徒が入ってくる。


 「うるさ……」

 蹲ったまま、瞳だけを後ろから来た男に向けるが、言葉を途中で失う。


 「……シグロ?」

 その男の名を呼ぶ。


 「3年B組……シグロ=サイレス」

 そう男子生徒が名乗る。


 「僕がかたきをとってあげるようか、おねーちゃん」

 そう冷たく、地に両膝をつけた姉を見下すように言う。


 「あんた……学園に……」

 魂を売ったのか?そう睨むような瞳で訴える。


 「……持病も……非力も……もう僕は劣勢じゃないよ、ねぇーさん」

 そう答える。

 瘴気を取り入れ、その病も魔力も全てを補った。


 「……勇者に対立してるってことか?お父さんとお母さんを裏切ったのか?」

 そうシグロと名乗った弟に言う。


 「煩いなぁ……黙れよ、あいつらの愛情ことばは聞き飽きたんだ」

 そう見下すように……

 ずっと……ずっと……その愛情ことばに飢えていたあねを知っていたように……

 勝ち誇ったように笑みを浮かべる。


 「シグロォーーーーーッ!!」

 そうレイヴィが叫び立ち上がる。


 「……僕がもうおまえの適う相手じゃないってのを教えてやるよ」

 そう刀を取り出し……


 「抜刀……王者静寂おうじゃせいじゃく……」

 鞘から灰色の刃の刀を抜き取る。


 「静まれっ……静風しっぷう

 風の刃がレイヴィ目掛け飛ぶ。

 刀を持たぬレイヴィは黙ってそれを見ているが……


 彼女に静風しっぷうが届かず、シグロの顔が俺の方を見る。


 「兄弟喧嘩の邪魔して悪いな……」

 その一撃を防いだ事を誤りながら……


 「なんのつもりだ……」

 シグロは俺を冷たく睨みながら……


 「フェアじゃねぇだろ……」

 刀を持たぬじょせいに……

 そう言いながら、結界で手のひらを守りながら、

 刃の部分を手にして刀のグリップをレイヴィに差し出す。


 黙ってレイヴィが破邪暗黙を受け取る。


 「まぁ……お節介ついでにもう一言、煩いこと言うけどよ」

 ……そうシグロを睨み……


 「姉を敬え……悲劇気取りならもっと謙虚でいろよ……」

 少ない会話で全てを理解したわけじゃないが……


 「静かにしていろ……それとも静かにさせてやろうか?」

 そう刀を俺に向ける。


 「……やってみろよ」

 俺はそうシグロに返す。


 「……なんのつもりだよ」

 そう戸惑うようにレイヴィが俺に尋ねる。

 当然だ、さっきまでやりあっていた相手が自分を庇うように立っている。


 「そいつ……あんたの弟か……申し訳ないけど……」

 そう俺を睨みつけるシグロを睨み返すように……


 「気にいらねぇ……」

 そういい捨てる。


 「数日前までまったく逆の事を言っていたから説得力ないかもしれないけどさ……」

 そうアクア家の兄妹を思いだしながら……


 「会って間もないあんたらに言える立場じゃないが……頑張ってる、あねを侮辱するな……黙って尊敬していろっ」

 そうシグロに言い捨てる。


 「……ねぇ……教えて」

 そう主語無くレイヴィが俺に尋ねる。


 「ん……?」

 当然、質問の意図がわからない……


 「君の名前……」

 そう尋ねられる。


 「レス……」

 俺は素直に答える……


 「……レス……」

 そう彼女がその言葉を繰り返す。


 「ん……あぁ」

 そう名を呼ばれ答える。


 「……その名前おとは……好き」

 そう……疲れた目で……初めて小さく笑った。

ご覧頂きありがとうございます。


少しでも面白い、続きが見たいと思って頂けたら、

ブックマークの追加、下から☆評価、コメントを頂けると、

励みと今後の動力源になりますので、何卒宜しくお願いします。


また、気に入った話面白かった話があれば、イイネを添えて頂けると

今後の物語作りの参考にさせていただきますので、あわせてお願い致します。


すでにブックマーク、☆評価をつけて頂いた方、イイネをつけてくださった方に

この場を借りてお礼を申し上げます。

有難うございます。

本当に励みになっています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ