言葉
「煩い……煩い……静かに……しろっ!」
ゴシゴシとレイヴィは目元を擦りながら、ツキヨたちを睨む。
薄っすらとした化粧が落ちたのか、隠していただろう目下にはクマが見える。
「今日こそ……ゆっくり休みたいのに……静かにしろよぉっ!!」
そうレイヴィが叫ぶ。
「だってさ、ヨウマ……静かにしろ」
そうツキヨがヨウマに言う。
「えぇーーーー、私なのぉ??」
不服そうにヨウマが言う。
「……黙らさせるっ」
そう破邪暗黙を強く握る。
「……散れっ徒桜っ」
そうツキヨが地面を強く蹴るっ
「無発っ」
そうレイヴィが言葉にする……
「なんだ……」
発動を中断される技……
そういう能力何だということはすぐに理解するが……
「無眼……」
その姿を見失う……
多分、この能力に影響がなく戦える奴は……
あの勇者か……
リヴァーとかいう女の能力だろう……
即座にそう理解するが……
それでも……
まさむねの魔力を瞳に送る……
瞳が赤く染め上がり……
二人の能力には遠く及ばない……
それでも……
その瞳が微かに動く敵を捕らえる。
「無音……」
音が消える……
微かに辿った足音も消える……
それでも瞳はその姿をしっかりと追い……
「無閃っ」
その攻撃になんとかツキヨが反応し、差し出した刃でその一撃を防ぐ。
「煩いっ……煩いっ……」
レイヴィは耳を塞ぐように蹲る……
いつだって……言葉は耳障りで……
いつも……言葉は聞こえない……
・
・
・
自分で言う音じゃないけど……
「私は……努力をした……」
10年近く前の私は自分にそう言う。
隣には……私より2つ離れた弟がいて……
大粒の涙を流しながら……
目をこすりあげている……
もともと、身体の弱かった弟……
可哀そうな弟……
有利……私。
そんな弟を母と父は……
「偉いっ頑張ったね」
と、そう優しく言葉をかけていた……
なんの大会だった……だろう……
もう忘れてしまった……
優勝した……
父と母の期待に答えるため……
頑張って、頑張って……
優勝したんだ……
「ねぇ……お父さん、私ね……いっぱいいっぱい頑張ったよ……」
弟を慰める事に忙しい父……私の言葉は聞こえない……
「ねぇ……お母さん……私ね……優勝したよ……」
弟を涙をぬぐうのに私の姿など見ていない……
そのくせに……
「レイヴィ……お前は姉として……サイレス家の長女として……」
その期待の音だけが……耳障りで……
「将来は……ブレイブ家に仕える、そのためにも……」
その言葉が……耳障りで……
「煩い……煩い……」
いつしか世界から色が消えるように……真っ白な世界に物だけが黒く見え……
言葉が……騒音にしか聞こえなくなった……
5年前にこの学園に入学をした時も……
努力をして……刀技を磨いて……
私が3年になり……弟が1年で入学して……
私はこの学園で開かれた大会で優勝した……
その結果に世界は変わったりなどしない……
「お母さん……お父さん……私……」
優勝したよ……結果などわかっていたのに……
知っていたのに……
笑顔で帰ってきた私の横をすり抜け、
大粒の涙を浮かべ負けた自分を責める弟に……
「頑張った……頑張ったね……」
「大丈夫……お前は半での中、よく頑張った……」
……言葉は……
別に弟が嫌いな訳じゃない……
病弱が羨ましい訳でも、可哀そうではないと思ったことも無い。
それでも……その言葉は私を醜くする……
世界は私を正しく眠らせてくれなどしない……
聞きたくないのに……聞きたくないのに……
「煩いっ……煩いっ……うるさーいっ!!」
私はたった……一つの言葉を聴きたかっただけなのに……
・
・
・
「煩いっ……煩い……静かにして……私はゆっくりと眠りたいの」
知っている……
例え静かな場所で独りになった所で……
回想はずっと鳴り続けている……
休まることなどできやしない……
相手を封印ことだけが能力じゃない……
刀技だって……
努力して来た……
言葉が聴けなくても……
ずっとずっと……
勝利だけは、私を裏切らなかったっ
「無常迅速っ」
レイヴィの姿が4人に分離するように残像がツキヨを襲う。
「くっ……」
ツキヨのその瞳では、捕らえることができない……
その間にヨウマが入り込み……
鎧の手甲でそれを防ぐ。
「あいたぁーーーっ……ツキヨちゃんだいじょおぶ?」
自分でその一撃を庇いながらそう、後ろのツキヨを心配する。
「無断借用……徒桜」
そう地を蹴り、カスミ家の技を見よう見真似で使用する
「なっ……」
「えーーー!?」
ツキヨもヨウマもその姿に驚く……
たった一度見ただけで……
「……騒音?」
うんざりする様な目で……
両腕に結界を巻きつけた俺がヨウマの間に割って入っていた。
離れた場所で邪魔をしないようにクリアがその様子を見ている。
「刀を納めてはくれないか……あんた学園の人間じゃねぇんだろ?」
そうレイヴィに尋ねる。
「黙れ……黙れよ、騒音は排除する……壊れるまで続ける……それが親の復讐だからっ!!」
そう叫ぶ。
「無眼っ」
その瞬間……レイヴィの姿を見失う。
その技が初見の俺には、その対処など追いつくことなく……
「無音っ」
音が聞こえない……
「無断借用……徒桜」
その真っ白な暗闇の中で……
今度はツキヨが俺の前に立ち、その一撃を受けている。
「煩いっ……煩いよっ……」
クマのできる疲れ果てた目をこちらに向けて……
「無眼っ」
二度は……
ライトやリヴァーには適わない……
それでも、自分の目に魔王から貰った魔力を巡らせ、
能力でその能力を無効化する。
その姿を追うことはできるが……
俺の身体が追いつくかは別だ……
「無音……」
耳鳴りのようなキーンという音だけが煩く耳を支配する。
「無常迅速っ」
相手が攻撃をする方向は目視できた……
俺は目に宿した魔力を放棄すると全身に魔力を送り……
両腕に魔力の結界のオーラを送ると右腕と左腕を交差させて、
その攻撃に身構える。
「くっ……」
それなりのダメージを受けるが、なんとかそれを耐えしのぐ。
「なぁ……もう一度言うぞ?」
そう俺は目の前の女に……
「刀を納めろ……あんたとは戦う殺気が感じられねぇ」
そう彼女に言う。
「黙れ……煩い……学生が……私に言葉を投げかけるなっ」
そう耳を塞ぎながら……
「無眼っ」
そう言い放ち、刀を幾度も振り下ろすが、
再び、目に魔力を送り、その動きを追う。
両腕に巻きつけた結界で刃を防いでいく。
「生意気……邪魔すんなよっ」
疲れ果てた目を見開き、レイヴィが叫ぶ。
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