沈黙
「ぱらりらっぱらりらっ」
オトネが一人、一つの部屋に入り込む。
「ぐっ……」
目の前で、学園側の教師と思われる男がその場に倒れる。
他に、近くには二人の生徒も倒れている。
二十歳くらいの女性……
白に近い水色の短い髪……
「え……まだ、居た……せっかく静かになったと思ったのに……」
レイヴィ=サイレス
首を傾げ、不思議そうにオトネがレイヴィを見上げる。
「おばさん……だれ?」
……悪気なさそうにそうオトネが尋ねる。
「……イラッ……黙らせる」
そう……一度収めた刀に手を伸ばす。
「びゅーん」
オトネの言葉と共に一気にレイヴィの横を位置を取る。
「どーんっ」
先手必勝とまでにオトネの拳がレイヴィを襲うが、
「わぁお、うるさぁ」
鞘に収まったままの刀でその一撃を防ぐ。
吹き飛ぶ身体を、地面に両足をつけその両足で勢いを殺すように後退する身体を止める。
「……黙らせるっ」
冷たい目でオトネを睨み付ける。
だが、ゆっくりとオトネの右手が拳銃を作るように構え、
「ばぁーん」
その言葉と共にレイヴィの身体が壁に叩きつけられるように吹っ飛ぶ。
初見でこの攻撃を対処できる者はそうはいないだろう……
「ははははっ……あははははっ……煩っ」
天を見上げ笑っていると思えば、ゆっくりと顔を戻しそう静かに言う。
「抜刀……破邪暗黙……」
白い刃の刀をぬきとる……
再び、オトネが手を構える。
「ばぁーんっ」
再びオトネがそう口にする……
「無視っ」
そうレイヴィが言うと……
レイヴィの身体が残像のように消える。
「……その擬音は私には届かないよ」
そう……レイヴィがオトネに言う。
「……まぁ……その言葉を私に届かなくても、他は他で厄介そうだしね……」
そう一人で何かを言い……
「びゅーん」
地面を蹴り、猛スピードでレイヴィに迫ろうとしたところ、
「……無言っ」
そうレイヴィが左手の人差し指を唇にあて言う。
「わっ……」
勢いよく突っ込んだオトネの身体のスピードが急に遅くなると、
バランスを崩すようにその場に止まる。
逆にレイヴィが地を蹴り、こちらに迫る。
「ぴたっ」
オトネがレイヴィの身体に手をかざしそう呟くが……
止まることの無いレイヴィの身体がオトネを切り裂く。
「……痛い」
後ろに転がるようにオトネの身体が吹き飛ぶ。
尻餅をつくような格好で、手で再び拳銃を作り出し……
「ばぁーんっ」
オトネが口にするが……
「ようやく、静かになったな……」
そうレイヴィが言いながら、ゆっくりとオトネの前に立ち、
刀を頭上に構え、振り下ろす。
「う…うぅ…」
悔しそうにオトネが身構える。
「睡れ……睡蓮ッ」
振り下ろされる刀が別の刃に受け止められる。
「……だいじょおぶ、オトネちゃん……怖かったねぇ、おねーさんがね、助けにきたよぉ」
緊張感の無い声が響き渡る。
「……ひつようない……」
そうオトネがそっぽを向く。
「えーーーー、オトネちゃーん、どぉしてぇそんなこと言うのぉーー」
そうヨウマが悲しそうに言う。
「あぁーーー、また煩いのきたなぁ」
そう、レイヴィが少しイライラしたように言う。
「レスちゃんとオトネちゃんはねぇ、感謝に感謝なの、だからぁ……わたしはねぇ、助けるからねぇ」
そう言ってヨウマが刀を構え……
「睡れ散れっ睡閃っ!!」
そう刀を振るう。
「無発しろっ」
そうレイヴィが言葉にすると……
「あれぇーーー、どぉーしてぇーー」
技が出ないのを嘆く、ヨウマ。
その後も、睡閃と叫びながら、ヨウマが何度も刀を振るうが……
「だまれっ」
レイヴィがそう言い、刀を振るうとヨウマの身体が吹き飛ばされる。
「おねーちゃん……大丈夫?」
思わず、オトネがその身を案じるようにヨウマに言う。
「えへへ……ありがとねぇ、おねーちゃんはねぇ、クレイちゃんにもツキヨちゃんにも負けないくらい強いんだよぉ」
そう言いながら……オトネにおねぇちゃんと呼ばれたのを嬉しそうに……
「ふん……」
黙らせると……レイヴィが再び刀を強く握る。
「……大丈夫、負けないからねぇ」
そうヨウマは言いながら……
周囲に黒い瘴気が漂ってくる。
「ヨウマ……駄目……それっ」
不安そうにオトネが言う。
あの時、レスが必死に止めようとしていたもの……
「だいじょぉぶ……使い方は覚えてる……」
そうヨウマは返し、
「呪い咲けっ……ダリアっ」
黒い瘴気がヨウマを包み、真っ黒な花を形どる。
瘴気がはれたその場所には黒き瘴気の部分てきな鎧のパーツに身を包み……
手には真っ黒な刀が握られている。
「私もね……特別組の一員なんだよ」
そうヨウマが誇らしげに言う。
レイヴィの顔が変わる……
同じ刀術使い……
目の前の刀がどれだけ危険なものかも……
目の前の瘴気がどれだけのものかも……
「妖魔状態……そんな真似を……」
あれだけの妖刀……早々は扱える代物じゃない……
妖刀をあえて取り入れ……それを実現している……
どちらにせよ、正気の沙汰じゃない……
少なくとも、さすがにあの妖刀を沈黙させるなど不可能だ……
「散れっ……徒桜」
不発には終わらない……
放たれる攻撃を刃で防ぐも、後ろに弾き飛ばされる。
「煩い……黙れ……黙らせるっ」
負けじと、ヨウマを睨み付け……
「無眼……」
そうレイヴィが呟くと……
「えっ……」
そのヨウマの戸惑いの声と共に、
同時にオトネもその姿を見失う……
「わぁ……」
放たれた刃を、黒い瘴気で作り出された手の甲で防ぐ。
「無眼……」
再びレイヴィを見失う……
「無音……」
そう呟く……
「えっ……」
キーンという耳鳴りのような音だけが響き渡る。
他の音が何も聞こえない。
試しに自分の右足で地面を強く叩くが……
音は響かない……
「無閃っ……」
レイヴィの刃がヨウマの身体を引き裂く……
「かはっ」
斬撃が衝撃に変換されその身体を吹き飛ばされるが……
「……黙らせるっ……沈黙しろっ」
そうレイヴィが再び刀を構える。
ヨウマが攻撃に構えるが……
「無眼無音……無閃っ」
そうレイヴィが言う。
姿も音も聞こえない……
迫りくる刃に……
「何してるっ」
紫色の刃の刀が……白い刃を止めている。
「ツキヨちゃん!?」
その目の前に現れた黒髪のポニーテール女性に……
「……また、その妖魔化を使ったのか……クレイにまた打たれるぞ?」
そう脅すように……
「えぇーーー、お願い、ツキヨちゃん、クレイちゃんには秘密ねぇ?」
そう、ヨウマが現れたツキヨに請う。
「あぁーーー、なんでこう敵が次から次へとぉ……」
そうレイヴィがイラつくように……
「黙らせるっ」
そう再び強く刀を握りなおす……
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