追い詰められる者…
「……今年の一年はどいつもこいつも本当に生意気だ……」
ニアンはアレフを睨み付ける……
「……ぐっ」
思わず、右足が一歩後退する……
逃げ出す真似はしない……
それでも、今日までにあの男に何度も挑み、
何度もその実力の差を身を持って教え込まれた……
あいつらが……彼女を……
守ってやれなかった奴の台詞じゃないのはわかっている……
それでも……結果を……
今日という日までの二人の苦悩を……
「ミスト……いくぞ」
そうアレフがミストに掛け声をかける。
ミストの身体を覆い隠すマントの中から、投擲具がいくつも飛び出し、
ニアンを標的に飛ぶ。
「ミスト……めでたく昔の男の腕の中に帰ったか……」
蔑む目でミストを見る。
ニアンの周りを飛び交う水晶がそれら投擲具を打ち落としていく。
「……もう一度だミストっ!!」
そうアレフがそうミストに叫び、ミストは再びマントのどこか奥から、
投擲具を取り出し投げ飛ばす。
「……そんなものがこの僕に届くとでも?」
そう蔑む目をそのまま、アレフに向ける。
「届かせてやる……っ」
そうニアンをにらみ返す。
両手を左右に広げると、両手にまとっていた電流が周囲を飛び交う。
それが、ミストの投げる投擲具にまとわりつく……
「……っ!?」
蔑むニアンの顔が、曇る。
全部とはいかないが……投げた投擲具の三分の一くらいの投擲具がまとった電流でその水晶からのビームをバリアーのような役目をするように突破してくる。
「なるほど……」
一瞬曇った顔をすぐに元に戻す。
ニアンの周辺を飛ぶ水晶がその投擲具に直接ぶつかり、自分の身体にたどり着く前に叩き落していく。
トラップの中で不意打ちだったとはいえ、あの勇者にすら、匹敵する実力……
転生者の能力でその能力が薄れてしまっていた……
それでも、学園の代表を勤めてきた男……
「覚悟はいいか?」
水晶が二人を取り囲む……
「くっ……」
アレフとミストの二人の周辺にバリアーを張るように半球型の電流を作る。
アレフなりの彼の真似をしたバリアのつもりではあるが……
余りにもその効力は劣っている上に、彼自身の魔力の消費量も大きい……
……効果的とは言えない。
「……っ!」
再びニアンの顔が曇る……
途端にぐるりと薄紫色に淡く輝く鎖が右腕に絡みつく。
「相変わらず、後輩虐めの似合うお方……」
クエスがゆっくりと歩いて部屋に入ってくる。
「1度だけでは飽き足らず、2度も邪魔をするか……」
そうニアンがクエスを睨む。
「……すっかりと勇者側に裏切ったか……」
そうニアンがクエスに言う。
「ふふふっ……正確にはレス様の元にですが……あのお方に魔女と呼んでもらえた時、最高に絶頂を感じたの」
そう頬を赤らめながら言う。
「馬鹿か……そんな理由で学園を裏切ったのか?」
そうニアンが返す。
「……そもそも貴方には、魔女が使えたいと思える魅力がなかった……学園で魔王様にでも会えれば、そんな私を満たしてくれる相手に出会えると思ってたけど……それ以上に私を興奮させる人が現れた」
そう恋する乙女のように……
「……レス様は誰よりも……人の魅力を引き出すことに長けている……良くも悪くも……人を利用ことに長けている……それは、貴方にも学園長にも……たぶん、魔王様にもできないこと……そんな素晴らしい人に認められる魔女に……そんな一人に私はなるの」
そう、ニアンへ返す。
「くだらんっ」
そう、水晶が鋭い刃のように鎖を断ち切るが……
「ぐっがぁ……」
右腕を左手で押さえながらその場にうずくまる。
右腕に鎖の一部が消えていく。
「ちっ……」
黒い瘴気がその右腕を取り巻くように……
呪いのように絡まった鎖を断ち切るように消滅する……
黒い瘴気を取り入れる事でそれらを可能にする……便利そうには見えるが、
その副作用は……余りに大きい。
本来、純粋な成長枠をそれで埋めてしまうようなものなのだろう……
そして……それが限界に達した時、その身体は障落ちしてしまう。
そんな切り札のようなものを魔女の呪いを解くためだけに使用したのだから……
それでも……さらなる瘴気がニアンを包む……
3対1……そんな不利……そんな負けても誇れる恥じることはない……
それでも……瘴気を取り入れ……負けることなど……
「……あら、ちょっと挑発しすぎたかしら」
そう笑みを浮かべながらも額に汗を浮かべクエスが言う。
飛び交う水晶の数が増えている……
「……後悔しろっ……」
そうニアンがクエスを睨みつけるが……
「後悔するのはてめぇだよっ」
オレンジ色の髪……制服の上着をマントのように羽織り、
赤黒いオーラをまとった拳を一気にニアンに振り下ろす……
「レイ……フィス?」
その目の前の女の名をニアンが呼ぶ。
その一撃をまともに受けながらも、何とか踏みとどまる。
……4対1……さすがに分は悪い……
撤退という考えも脳裏に過ぎるが……
「ひひっ……駄目だよ、せんぱい」
そう頬をあからめ、ミストが言うと……
周囲に黒い霧が立ち込める。
逃げることなど許さない……
「……邪魔をするな……」
黒い瘴気を幾度も取り入れる……
そんな窮地さえも負けるわけにはいかないと……
「……取り戻す……」
アレフが両手に電流を帯びながら……
あの日、つかみ損ねた手を……
「……なめるな……」
そうニアンが返す……
勇者も、転入生も居ない……
あの二人さえ居なければ僕の力は……
遅れは取らない……
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