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因縁

 「くっ……」

 余裕を見せるように、懸命に苦笑いを続けながらも額に汗を浮かべる。

 少しでも油断、隙を見せればあっという間に決着がついてしまう。


 セティは懸命にライトをその瞳で追いながら、

 能力トラップを駆使してそれを回避している。


 身体も思考も休む暇がない……

 それくらいに容赦の無いライトの攻撃が続く。


 そして、そのライトの能力ひとみは少しずつ……

 セティの能力トラップに応用していく……


 その勝機を逃すわけにはいかない……

 スコールもそれに加勢しようとするが……


 後ろから足音が聞こえる。


 「……学園長自らこんな場所に?」

 そのスコールの言葉の先にいる男。


 「スコール君……生徒会長……あなたとは少しお話がしたいと思っていました」

 そう学園長がスコールに告げる。


 「……別に俺はあんたと会話することはない……」

 そう能力みずが、スコールの周辺で形どり、様々な武器が精製される。


 「わたしもできれば、可愛い生徒に手荒な真似はしたくないのです」

 そう……学園長が言う。

 そう……学園長が両手を自分の肩あたりまで持ち上げ……


 両手が青白く光る。


 「……!?」

 その様子にスコールが少しだけ驚くが、すぐに冷静に学園長を見る。


 倒れる学園側の生徒、倒れる反乱軍側の使者……

 所持していた武器が学園長の周辺に集まり……


 お互いが合図するように、その手を相手側にかざすと、

 その武具が飛びゆく。


 だが……その数が有利なのはスコールだった。

 相殺しきれない武器こうげきが学園長に飛ぶ。


 が……学園長はその飛んでくる武具に向かい上空に手をかざすと、

 再び両手が輝くように……


 それらが学園長から外れるように、地面に突き刺さっていく。



 「スコール君……君にはわたしの言葉が理解できる……して頂けると思っていたのですが……」

 そう学園長がスコールに言う。


 「……俺が、学園おまえたちの不正に……?笑わせるな」

 そう冷たくつき返す。


 「妹……レインさんでしたか?」

 そう……学園長の瞳がスコールを見る。


 スコールは……ただ黙って学園長を見る。


 「……その不平等なかのじょを……彼女いもうとに……その不平等に誰よりも理不尽を感じていたのではないのですか?」

 そう……スコールに……


 「……くだらない……それで、妹に不正させ、その結果だけに満足して喜べと?」

 そうスコールが真っ向からその言葉を否定する。


 「……スコール君、君は優秀もつ側の人間だ……劣勢いもうとくんの事をもう少し理解するべきだ……」

 そう、さらにその言葉を否定する。


 「くどいな……二度言わせるなっ……不正で得た平等に価値きぼうなどないっ」

 そうスコールが再び自分の周囲上空に水で武器を製造していく。


 「……スコール君、君こそ二度言わねば理解できないようだ……持つべき者が言うその言葉は無きものにはとっては拒絶ぜつぼうの言葉だ……在るべき者のその正論ことばを聞かされることは……それは、もう地獄なのだよ、生徒会長」

 そう学園長は再び繰り出される攻撃をなんらかの能力を駆使して、

 自分の身体を避けるように武器が次々に地面に突き刺さり消滅する。


 「……くだらない、弱者が不正ちからを得て、強者に成り代わり、優秀者を蹴落とす……そんな入れ替わりが希望だと?それこそ……地獄だな、学園長」

 そうスコールが冷たく学園長を見る。


 「スコール君、わたしはね……君以上にこの異世界りふじんを見てきた……現世でも異世界このせかいでも……苦しみ果てた人間を見てきたのだよ」

 そうスコールに少しだけ圧をかけるように……


 「もし……君の妹が……その異世界りふじんなルールに飲み込まれ、亡き存在になっていた……それでも君は今と同じ言葉ぼうげんを吐くと言うのか?」

 そう学園長が言う。


 「……確かに俺も、学園長きさま同様に……間違った……妹への対応を間違えていた……でも、それを教えてくれた奴がいる……兄妹けいまいなんだ……助けるさ、兄として……不正まちがった……道に進ませない」

 そうスコールが返す。


 「……さて、スコール君、君たちが信頼をよせるそのだれかは……平等に君たちを助けるのかい?」

 そう学園長が言う。


 「……何が言いたい」

 そう少し不機嫌そうに……


 「……今回の戦争あらそいに……彼は君たちに手をかしているのかい?」

 そう何かを見透かしているように……


 レスは今回、ライトと共に戦っていない……

 理由は知らない……

 何か理由があり、この場に駆けつけることができないのか……

 ライトに協力する気がないのか……

 それでも……


 「くだらない……そう言っている……俺はアイツを信じている、確かに今回の争いにあいつが何らかの理由、考えで俺たちに協力していないのかもしれない」

 そう冷静に学園長を見る。


 「それでも……理解かいしゃくしているつもりだ……アイツと共に戦えなくても……俺がライトに協力し、この場にいることを多分、アイツは望んでいる……それが、妹をライトを……アイツを……皆を守るためになっている」

 そうスコールが学園長に言い捨てる。


 「……生徒会長……もう少しあなたは賢い人間だと思っていましたが、少しわたしの買いかぶりでしたか……所詮、優秀あなた方とは、見えている世界が違いすぎるのですよ、劣勢わたしたちは……」

 そう学園長が、目の前の生徒会長おとこの説得を諦める。



 ・

 ・

 ・




 一つ階段を下る。

 自分が今、何階に居るかも理解していない。


 「……右の通路です」

 そう言われ、正方形の部屋の四方にある扉の自分の向いている向きの右側の通路を見る。


 リヴァーのお陰で、迷子になることなく、

 着々と階段を下っていく。


 そして、言われるがまま通路を通っている。

 その部屋の一つで……


 いやな予感……

 

 ぷつりと一瞬感覚が飛んだ気がして……


 「右ですっ!」

 リヴァーが叫ぶ。

 しかし、それは階段に続く道を示すためのものではなく……



 「レス……最後だ……」

 そう、いつの間にか右側に立つ人間が言う。


 「これが、てめぇとの最後の戦いだっ」

 灰色の髪、能力じぶんに絶対の自信プライドを持っている人間……


 「……ハイト……」

 俺はその名を呼ぶ……


 プライドの塊……恐らく本来の彼であれば、

 学園の闇になど魂を売ったりはしない……

 その自分の能力を不正しようとなどしない……


 なぜ、そんな彼が俺への勝利などに固執するのか……


 それに……正直、俺が戦ったのって、

 交流戦の初戦だけで、

 何気に皆勤賞はヴァニで何気にヴァニの全勝だ。


 だが……ハイトにとっての敗北おめいは……

 俺との戦いにあるようだ……


 部屋の隅にはもう一人の女子生徒が居て……


 「お前はそのまま隅で僕の能力を強化だけしていろ」

 そう、ハイトがその生徒に命令する。


 瘴気で強化された能力……そしてその魔力に耐えれるだけのステータスを、仲間に底上げさせる。


 先までの戦いのように、場外など存在しない。

 どちらかが、意識を失うか……死ぬまで争いは続く。


 最後の戦い……ハイトの覚悟のような言葉に……


 「さて……どう乗り切るか……」

 そう……状況を分析する。


 交流戦の時のように閉じ込め動きを封じても、暴力男ヴァニの力は無い……

 まして、二度もそう簡単に引っかかる相手でもない……

 そして、瘴気とサポート……彼のステータスもかなり高くなっている。


 数十回相手の攻撃を凌いだところで、時間凍結まりょくが尽きるとも考えにくい。


 「右ですっ!」

 そうリヴァーが叫んだ瞬間、ぷつりと感覚が飛ぶ。


 意識が戻る瞬間に右手に魔力を集中させ結界をはると、

 自分の顔の前まで腕をあげる。


 創り出された、前より遥かに威力の高い魔力の棒が右腕を捕らえる。


 「なるほど……」

 リヴァーの能力をハイトが理解する……


 「ハイト……頼める相手じゃねぇのを承知でお願いしたいんだけどよ」

 俺はそうハイトに言う……


 冷たい目線だけをハイトが俺に送る。


 「……お互い、攻撃の対象は俺とお前だけにしよーぜ……お互いのパートナーには手をだすのは禁止にしようぜ」

 そんな俺の言葉に……


 「……それに従う理由が僕にあると?」

 そう当然の言葉が返ってくる。


 「……お前は俺に勝利することに意味があるんだろ?互いにサポートが必須だが……互いにそのサポートに対して卑怯だなんだ言いっこなしでさ……負けた言い訳もなしに……本気で二人だけでぶつかり合おうぜ」

 そう……できるだけ、彼のプライドを利用し……


 「……別にかまわない」

 ……所詮はリヴァーの能力は自分の攻撃の方向を示す程度のもの……

 ハイトは自分の能力でその言葉を聞いた上で行動を変え、対処が可能だ。

 恐れる能力ではない……


 リヴァーに危害を加えたくない……

 それが、一番の理由ではあったが……


 前回の戦い同様に……

 彼女の能力ちからは……今回の勝利にも不可欠だ……


 だが、足りない頭でそこにたどり着けるのか……


 「左ですっ!!」

 その言葉と同時にぷつりと意識が飛ぶ。


 意識が戻る瞬間に……


 即座にリヴァーの言葉じょげんの意図を読み取る。


 右手にまとった結界をそのまま、頭の横に構える。

 再び、右手に重たい感覚……

 その一撃を防ぐ。


 ハイトは当然、リヴァーの言葉を聞き、行動を変える。

 そして、リヴァーには予測する能力もある……


 もちろん、ハイトが自分の言葉で行動を変えることも……

 そして、そのハイトの行動を読み取っての自分リヴァーの言葉を、

 聞き取って、間逆の行動をとることも予測して……


 「なるほど……」

 それでも、ハイトは冷静に……


 そのプライドは今回も自分の負けなど見えていない。


 「ひだ……」

 りです……の言葉もいい終えないまま、ぷつりと時間が凍結する。


 意識が戻る瞬間……

 再び右手を構えようとするが……


 「っつ……」

 左の頬に一撃を受ける……


 時が戻る前に、その一撃をすでに加えている……

 そう、彼の能力は律儀に時間が戻ってから攻撃する必要がない。


 ならば、時が止まっている間に、無防備な場所に攻撃をくわえるだけ……

 そう……彼に負ける未来など見えていない。


 「この能力ぼくは絶対無敵だ……」

 そう……ハイトがゆっくりと俺を睨み付ける。


 ゆっくりと……考える……

 ゆっくりと考えている暇などないのに……


 それでも……


 自分の能力……そして、リヴァーの能力……

 時間凍結……どう攻略する……


 時間凍結……その間、もちろん身動きはとれない……

 だが……魔力は生きる。

 それは、ハイトにかかる能力だけではなく、

 こちらの魔力も生きている……


 で……どうする?


 ぷつりと意識が飛ぶ……

 そして、無防備のお腹に激しい一撃をくらい、

 増幅された攻撃に壁に叩きつけられるくらいに吹っ飛ぶ。


 場外はない……


 俺はゆっくりと立ち上がる……


 魔力は生きる……

 ゆっくりと考える……


 攻略すきはどこにある……


 凍結後……凍結中に攻撃されてしまえば、全て意味が無い。

 凍結前……どれだけ予測しようが、凍結中自由に思考も行動も変えられる敵にはどうにもならない……


 それじゃぁ、他に方法は?


 凍結中……思考も行動もできない……


 凍結中も魔力は生きている……

 その3つの中で……どこに突破口はある……?


 考えろ……

 おまえは、それを可能にする力を授かっている……


 

明けましておめでとうございます。

今年も宜しくお願いします。


少しでも面白い、続きが見たいと思って頂けたら、

ブックマークの追加、下から☆評価、コメントを頂けると、

励みと今後の動力源になりますので、何卒宜しくお願いします。


また、気に入った話面白かった話があれば、イイネを添えて頂けると

今後の物語作りの参考にさせていただきますので、あわせてお願い致します。


すでにブックマーク、☆評価をつけて頂いた方、イイネをつけてくださった方に

この場を借りてお礼を申し上げます。

有難うございます。

本当に励みになっています。

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