決勝戦
「それでは……これより、決勝戦を開始します」
何処か司会を担当するラビの声にも緊張感がある。
特別会場……会場は今までよりもはるかに大きく……
もちろん試合の場となるリングも一回り以上も大きい。
そんなリングに整列する自分とチームメイト。
そして向き合うように並ぶ相手チーム。
リーダーのように立つのはライトと相手側はニアン……
さて……さすがに今回はこちらも勢ぞろいしている訳だ。
場合によっては俺の出番などない……
「それでは……各チーム自チームの後ろ側に進み、用意された12個の扉に一人ずつお進みくださいっ」
そう……ラビに告げられ、?と思いつつ後ろを振り返る。
確かに正面に大きな入り口と……それに並ぶように入り口がいくつもある。
「各チームのリーダーは正面の大きい入り口へ進み、他は自分が思う入り口へと進んでください」
いったい……何をさせようっていうのか?
「リーダーは決勝の最終戦が約束されますが、その相方……そして、1回戦と2回戦、選出者は出口にたどり着くまでわかりません」
そうラビがルールを説明する。
「……なっ、ここに来て……そんなルール……」
思わず文句が口にでる。
「6つの入り口は試合会場……残りの6つは観客席へと繋がっています」
ライトとニアンは黙って大きい入り口へと入っていく。
できれば残りの6つの入り口とやらに入りたいが……
何故か全員が俺がどの入り口を選ぶのかを待っている。
「さすがにその結果に……責任も何もないだろ」
そう言いながら……ひとつの入り口を選び歩く。
そして同時にそれぞれ適当な入り口に進んでいく。
「ぱらりらっぱらりらぁ」
一人は陽気に一つの入り口を目指し駆けていく。
入り口に入ると長い廊下が続いている。
ごくりと唾を飲み込む。
よくわからない緊張感……
さっさと抜けて、観客席へと向かおう。
そう……足を進める。
……前夜のことを思い返す。
……バシっと自分の顔を叩く。
「……今は目の前に集中しろっ」
そう自分に言い聞かせる。
薄暗い廊下を歩き続ける……
目の前には大きな扉がある……
軽く触れてみるが開きそうにない。
横には休憩室のようなものがあり……
試合開始までそちらでお待ちくださいと書かれた紙がある。
大きなモニターが置いてあり、試合の様子を見られるようになっているようだ。
ようするに……俺は決勝進出が決まって……1試合目ではないということか。
モニターには……一試合目に選ばれた選手が再び先ほどのリングにのぼっていく。
相手チームはすでに二人のぼっていて……
こちらのチームはようやく一人目がリングにたどり着いたようだ。
逃げ出したい気持ちを隠して……どうどうとした振る舞いを保ちながら……
「……レイン……」
俺は思わずその名を心配そうに呼ぶ。
・
・
・
目の前に……さっきぶりの光が広がる。
ツキヨが黙ってその先に進むと……
リングを見下ろすように囲む客席。
その中に一つの群れを発見する。
「おーーいツキヨちゃーん」
ヨウマがツキヨに手を振っている。
「……はずれか」
そう呟き、声のする方に足を運ぶ。
嬉しそうにツキヨを見ているヨウマの横にはすでに、
何故か不機嫌そうに座っているクレイ。
「どうなんだ……学園側にいたんだろ?決勝の相手はどれくらいやばい?」
そう、どかりとヨウマの席の隣をとる。
「……まぁ、能力的には協力だが……こちらも負けていないだろうが……」
……奴らは闇を瘴気を利用している……
「……そして、今日という日のために瘴気をどこまで取り込んだかだな……」
そう……リングをにらみつける様に……
「私らの妖刀で一時的に能力を引き上げるのとは訳が違う……学園のやってることは、魔王の瘴気を身体に取り込んで、本来の基礎能力ごと書き換える真似をしている」
そのクレイの言葉に思わず、ヨウマを見る。
本来、その妖刀の瘴気に耐えられない者が……
妖刀を振るう……
「欠点すらその瘴気で補ってしまう……まぁ、誰よりも才能の塊であっても可愛いものに目がないみたいな欠点は埋めようがないがな……」
そう嫌味を付け加える。
「黙れ、ぺたんこ、それも補えなかったんじゃないのか?」
そう返す……
「あーーーー、ツキヨちゃん、クレイちゃんのこと、ぺったんこって言ったらダメなんだよぉーーーっ」
そう周りが注目するくらいの大きい声で……
クレイがツキヨの方を向くヨウマの肩をたたく。
「きゃふんっ」
鋭く振り落とされる拳にクレイを見た顔が一気に地面を向く。
「えーーーーなんでぇ?」
言ったのはツキヨ、私は注意しただけなのにと……涙目で叩かれた場所を押さえながら訴える。
「声がでかい」
そう……要点を短く注意する。
そして……リングに敵チームが先にのぼってくる。
そして……こちら側……のぼって来る人物……
少しだけ厳しい視線をツキヨとクレイが向ける。
・
・
・
逃げ出したい……
まさか……自分が……
震える肩を……足を……隠すように……
ゆっくりと足を向ける。
「どんな強敵が対戦相手かと思ったけど……」
馬鹿にするように……
「どこぞの出来損ないじゃないか」
アクア家と因縁があるのだろうか……
目の前の男はそうレインを見下すように……
「まったく……楽勝だったなぁ」
すでに決着がついたというように……
「黙れっ……私はアクア家の人間だっ!」
そう……レインが相手を睨み返す。
「出来損ないが……さっさと降参しとけよ」
そう返される。
「出来損ないじゃ……私は……」
そう何か言葉を捜すが……
「私は……?私は、アクア家の出来損ないですっだろ!!」
そう返され、一歩後ろに下がる……
「聞こえなかったか?そいつが黙れと言ったのが……」
後ろから声がする……
「貴様風情が……誰の妹にその舐めた口を聞いている?」
リングに上る男……
「……これは、底辺に落ちた生徒会長様のお出ましか……兄妹揃って出来損いだなぁ」
そう目の前の男が言う。
「……黙れと言ったはずだ……どいつもこいつもあいつの凶悪も知らずに、まるで自分の手柄のようにわめき散らす……いい迷惑だ」
そう……レスに向かい言葉にする。
「兄……様……」
おそる、おそる……振り返り……
「……お兄ちゃんでいい……呼び方を二度は間違うな、レイン」
そう……レインの前に立つ。
ずっと……ずっと……ピンチの時には私の前に駆けつけてくれた背中……
「……おにい……ちゃん……」
おそる、おそる……その名を……
「……ただいま……レイン」
ずっと……同じ家に住んでいたはずなのに……
ずっと……レインが守ってきてくれた場所に……
ようやく……足を踏み入れる。
「撤回しろ……貴様風情が、我が妹を侮辱したこと」
そう敵チームをにらみつける。
「返すぜ、その言葉……撤回しろよ、兄妹」
そうスコールをにらみつける。
学園の闇によりその能力は桁外れに引き上げられている……
もちろん、それを理解している……
「愚か者は二度ならず、三度言わせるか……」
そうスコールは実にくだらなそうに……
「黙れ……そう言ったはずだ……貴様が口にできるのは、妹に対する謝罪の言葉だけだ」
そう……そんな相手を恐れることなく……
「それでは、トーナメント決勝、一回戦……はじめっ!!」
ラビの試合開始の合図が響き渡る。
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