目的…
私はただ……楽に人生を終わりたかっただけだ……
楽……という表現が正しいかはわからない……
ただ人生に苦しむ理由が理解できなかった……
なぜ……そうまでして人生を全うする理由が理解……できなかった。
楽と苦を天秤にかけて……苦が勝る時間を過ごす意味がどこにあるのだろうか……
だから……私はそうならないようにって……賢く生きたつもりだった。
それでも……私より少し賢い男に騙されて……
私は幾度も失敗を繰り返して……
結局……望む世界を手に入れることはできなくて……
命を捨てる事で……楽ができるのなら……とそう何度も思っていた。
でも……それを実現する日は無かった。
人が産まれ持ったその恐怖は……そんな楽をしたいことだけでは……身体は言うことを聞かないのだ……
明日は……誕生日……
といっても……予定があるわけでもない……
会社からの帰り道……たまたま見つけた小さな屋台で……
おでんと……普段より多めに日本酒を摂取しながら……
閉店で無理やり席を立たされ……帰りの車もつかまらず……
フラフラと路地裏をさ迷っていると……
「テン…セイ……屋?」
その看板に疑問を覚えながらも……
そこに足を踏み入れる……
「いらっしゃいませ……」
目の前にはこの世界では少しだけ不思議な雰囲気の女性……
「なに……ここ?」
アルコールに支配された頭ではとても理解など追いつかない。
「転生したい人間と転生者を願う人間とのマッチングが成立したのです」
そう……目の前の女が言う。
・・・
酒のせいか……彼女の説明など……半分くらいしか入ってこない。
これが、現実なのか夢なのかさえ理解していない……
アニメとかそういうものに……ここ最近までは興味無かった……
社会に出て……出来た友達に進められて見た程度の知識だ……
それでも……そんな世界の能力を与えるなんて……
言うのならさ……
久々に……考察していた……
私が楽して……楽しく生きる異世界生活……
現実じゃないくても……夢でも……
楽しませろよ……新しい異世界生活を……
・
・
・
ライトが俺に料理を振舞ってくれた日も……
ライトの計らいで皆で海で過ごし……ラプラスという女性と出会った日も……
疑問だったんだ……
俺ときちんと面識が無かった彼女たちが……どうして俺の世界の知識を得られたのか……
ラプラスが……どうやってライトに日本食の知識を与えたのか……
簡単だ……レス……
お前がこの世界で……たった一人の転生者じゃない……
前任者が……現世の知識を与えていた……
ラプラスはセティから現世の知識を得て……
俺と会う前からライトはその建築に興味を得ていた……
簡単な理屈だ……
自惚れるな……俺は唯一なんかじゃない……
所詮、転生したっててめぇはそんなもの……
そんな俺の覚悟を裏切るように……
そんな俺の自覚を許さぬように……
アストリアが俺の肩を叩き……
「この私をがっかりさせるなよ……貴様の可能性……貴様にしかできない……人生を……」
右手を前に差し出し魔力が巨大なランスを作り出す……
目の前の女にそれが向かう……
彼女は急速に迫るその攻撃を恐れることも無く、つまらなそうに眺め……
それは、彼女の目の前で何かに吸い込まれるように姿を消す。
負けることは許されない……
ただ……勝てるなんて思うな……
彼女は俺より全て上手だ……
負けられないのだろ……俺は……
そうアストリア……
オトネ……
レイフィス……
ツキヨ……クレイ……ヨウマ……
を……見る。
そして……セティを見る……
守ると誓ったのだろう……
どんな形でも証明して見ろよ……
理由で……彼女が、
それを勝利することはありえない……
何を掲示する……俺が彼女を勝るものは……
「少年……能力の発動条件を君の魔力の波動から切っておいた……」
そう安心して能力を開放しろよと目の前の女が告げる。
マリアが拳銃を構える……
その攻撃に対する結界を俺は発動する……
爆発はおこらない……
彼女の言葉にうそはない……
それでも……彼女がそれで……終わるわけがない……
アストリアは俺を肩にくの字で抱えると……
リング状を駆け回る。
彼女のトラップにより銃弾があっちこっちに転移して不規則に飛び回る。
ライト程の回避能力は無い……
自分の前に転移された銃弾をその身を犠牲にしながらもできるだけ回避し、俺を無傷でいられるように立ち回る。
アストリアの肩から下ろされ自由を得る……
アストリアが反撃にと……強大なランスを目の前に作り上げるが……
そのランスが大きく爆発しアストリアを襲う……
彼女のトラップはアストリアの魔力に合わせられた。
そんな爆風すら気にせず……そのダメージに血を流しながらも……
作り上げたランスをセティに向かい放つ。
が……当然彼女の能力の前に能力は届かない……
それでも……今の彼女はまだ本気ではないのだ……
未だ捕らえれている仲間……
彼女たちに使っている能力……
それでいて……あのアストリアがここまで……
下手をすれば……最強も最凶も……
この学園全てに置いて……彼女は頂点にいるのかもしれない……
もしも、彼女が最強に興味を抱けば……
たった……ひとつでいい……
彼女の能力を出し抜けよ……
説得できる事などそれくらいだろう……
アストリアが強大なランスを目の前に作り上げる。
爆風が起こる……
そのダメージに手負いを追いながらも……
その姿勢を崩すことなく……
そのランスの先をセティへ向ける……
その彼女の行動を……魔力を……
全力でない彼女を出し抜ける隙があるのなら……
彼女の魔力の発生源を探る……
できるだけ彼女の邪魔にならない程度の結界を……
その発生源と思われる場所に結界を張り巡らせる。
彼女の能力が俺の結界を破壊し彼女の能力を通過していく……
煙の中から……セティが姿を現す。
苦笑いしながら、立ちひざをついた姿勢を起こし……
「まさか……一撃でも受けるなんてね……」
そうこちらを睨み付け……
セティは……それだけを伝えこちらに背を向ける……
「なにを……?」
マリアは不安そうにセティに投げかけるが……
そんな自分の責任を放棄するように……
「こうさーーーん」
そう……ラビに告げた。
彼女にとってこの勝負は何の意味も無い。
どうでもいい……その勝利も……
敗北も……
彼女がこの世界に召喚された理由も……
彼女がこの世界に望んだ人生も……
俺には理解できなくても……
多分……残す決勝戦……
そんな勝利を放棄した彼女のためにも……
勝たねばならないのだろうと……
そう彼女の想いを理解する……
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