転生
明日……30回目の誕生日を迎える……
つまらない……
生きている意味がみいだせなかった……
ビルの屋上……
フェンスを越えて、一歩歩けば真っ逆さま……
靴のかかと部分を右手の中指と人差し指に引っ掛け……
虚ろな目でその下を眺める。
心残りなんてないはずなのに……
恐怖など克服したつもりなのに……
その一歩が何故か踏み出せない……
「わたしは……ただ……楽な道を進むだけ……」
だから……その一歩を……
・
・
・
準決勝……最終戦……
目の前の二人を睨み付ける……
セティとマリア……
そして……残るメンバーはまだ彼女のトラップの中……
アストリアが俺たちの窮地に感づきこの場に来ていなければ……
いや……
それよりも……
ずっと……ずっと……この女だけは……
「どうした……少年……今日は随分と感情的じゃないか」
そう目の前の女が俺に言う。
ひとつの推測……
推測に過ぎない……それでも……この目の前の女は……
余りにも厄介すぎる……
下手をすれば、最強と最凶よりも……この学園の黒幕よりも……
場合によっては……一番に……
「少年……自分だけが《《特別》》なんて思うなよ」
そう……俺に告げる。
ずっと……ずっと疑問だった……
その少年……が……
自分と世界の見方が余りにも……類似している気がした……
そんな思考を巡らせる俺……
そんな俺の思考を覗くように笑う女……
そんなことはお構いなしに、マリアは二丁の拳銃をこちらに向ける。
放たれるそれを俺は……結界で防ぐ。
同時にアストリアは地面を蹴り上げ一気にセティの元に詰め寄る。
セティの身体を目掛けその拳を振り下ろす……
「全く珍妙な……技だ……」
いつの間にかアストリアはセティに背を向けて拳をふるっている……
「貴様は何者だ……ずっと……ずっと不快な存在だったぞ」
そう……アストリアがセティに向かい言う。
ライト、トリア…スコール…ナイツ……そしてセティ……
同じ3年前にこの学園に入学した……
奇妙な能力だと思ってはいたが……特別目立つこともなく……
今日まで共に学園生活を過ごしてきた……
だが……今思い返せば……
彼女の敗北は今まで一度も見たこと……聞いたことはない……
「最初に言っとくぜぇい、少年……私はさぁ……学園らに利用なんてされてねぇからな……私は私の考えでここにいるだけだ……私の人生にも能力にも学園を干渉させたりしていない……これは純粋に私の想像だ」
その言葉の意味に……その挑発に……
「少年……私は……君の仲間だよ」
そう……改めて告げる……
その呼び方に……ずっとずっと……疑問を覚えていた……
「あっちじゃさぁ……私けっこう……そこそこ……できる女……だったと思うんだけどさぁ……ちょっと賢い人間がいれば簡単に利用されるし……騙される……だから……こっちでは、私はそっち側に周る……そんな想像を手に入れたんだよ」
そう……俺を睨む……
再び……マリアが拳銃を構える。
俺はそれに備え結界をはる準備をする。
「……やめとけよ、少年……何事にも先輩には敬意を払うべきさ」
そうセティが俺を睨む。
拳銃から放たれる弾……俺は構わず俺……アストリアの身を守るための結界をはる……
「!?」
同時に強い衝撃が俺とアストリアを襲う。
「二度と利用されるのはごめんだ……少年……私はお前を利用する」
そうセティが俺に告げる。
「トラップの発動をあんたの結界の発動に合わせた……」
お前は自分の能力で自滅する……そうセティが無言で告げる。
「……何者だ、貴様……」
再び、アストリアが彼女に問う……
「少年……ゲームってのはさ……自由に能力を振るえるなら……バランス型……か……まぁ……それよりも、火力に特化してパラメーターを振り分けたいと思うもんじゃないのかい?」
そうセティがアストリアではなく俺に問いを答える。
「……その点では、少年……私も君も同じ能力をしていた……ってところなのかな?」
そう……セティが俺に言う。
マリアが拳銃を構える……放たれる弾……
それを防ぐために俺は結界を張る。
「ちぃ……」
その発動と同時に襲う爆風に……俺もアストリアも襲われながらも……
その発動条件を再度確認する……
「きゃっ!?」
そうマリアが小さく叫び……
マリアと一緒に爆風に襲われたセティが楽しそうに笑っている。
「私のトラップを逆に利用してあたしたちを攻撃する……か」
結界をはることでセティの能力が発動するというのなら……
それを相手に向けるだけ……
「……っ!?」
アストリアから強力なランスがミサイルのように放たれる。
それをセティは直撃間近でそれをトラップで別な空間に転移する。
「二人だけで……無言で会話を進めるな、きちんと説明しろ」
そうアストリアが俺とセティを睨みつける。
「あっちでは……後悔しかできない人生だったんだ……それをこっちで自由に能力ってなら……私は能力を望んだだけさっ」
そうセティがアストリアに答える。
「……わかるだろ?少年?」
そう俺に同意を問いかける……
同時に放たれる銃弾を防ごうとした結界が俺とアストリアを襲う……
「わかるさ……理解できないけど……」
そう俺はその自分の結界の爆風から姿を見せると……
「あんたも……同種か……」
俺のその言葉に……
「何事にも先輩ってのはいるもんさ……少年、あっちであんたが私の年上か年下かなんて知らない……それでも転生では私が先輩だ……私を敬えよ少年」
そうセティが俺に告げる。
その少年……
疑問だったんだ……
同時に接点を感じていた……
この世界の見方に……
現世の彼女の年齢を知らない……
それでも今の俺の年齢が現世の彼女の年寄り離れていれば……
俺が周囲に敬語を使えない理由と……
その呼び方は何となく……納得できてしまう。
俺とは違い今日まで周囲には転生者というのを明かさないできた……ということか……
「……最初にも言ったけど……あたしは別に学園側でもない……ただ……私はこの異世界を誰に利用されることなく終えるだけさ……」
そう俺とアストリアにセティが告げる。
「なるほど………実にくだらんっ」
そうアストリアが言い捨てる。
少しだけ不愉快そうにセティがアストリアを見る。
「……所詮、小僧には遠く及ばん」
そうアストリアがセティに告げる……
セティが不快そうに……中指と親指をこすり合わせる。
パチンッという音と共に……
様々なトラップがアストリアを襲う。
煙の中から……額にうっすらと血を流しながらアストリアが現れる。
これで少しは現状を把握しろよという冷たい視線をセティが無言で送る。
それでもアストリアは不適に笑う。
「確かに……能力……それを利用し、人を出し抜く……その点に置いては貴様は優れているのかもしれない……」
そうアストリアはセティに告げる。
「……レス……誇れ……貴様のその能力は……お前が誰かを守ろうとする能力には遠く及ばない……誰かを守れるのは小僧、お前の特権だ……貴様のその能力こそが、彼女に勝る能力だ」
そうアストリアがセティを睨みつける。
「………」
セティは一度俯き……その言葉に負けのような悔しそうな表情を見せながらも……
すぐにその表情を崩し……逆に小ばかにするような笑みでアストリアを見る……
「………だから?」
そう……そんな能力など……必要ないと……
「私はね……ただ……楽に生きるだけ……干渉されたくないだけぇ……誰にも騙されたくない……そして……」
俺と……アストリアを交互に眺め……
「……誰も守る気もないね」
そう……告げる。
彼女が何も思いここに立っているのか……
何を考え、学園側につくのか……
誰を敵対するのか……
異世界願うのか……
わからない……わからないけれど……
それでも彼女の言っていることは本当だ……
今の俺は彼女には適わない……
その能力も具現化する想像……
俺のはるか上で……この異世界に上手く同調している……
はじめから適うはずのない戦いだ……
それでも……彼女は……
彼女の本音は余りにもその勝利はない……
学園が勝とうが俺たちが勝とうが……彼女には等価値……
だったら……それを利用するだけだ……
利用を悟られないようにするだけだ……
安心しろどうせ俺の人生など変わりなどしない……
安心しろ……強大な仲間はそこにある……
守かう理由などそこにある……
守れないなら初めから干渉するな……
戦えないなら初めから参戦するなよ……
お前のその能力は戦うも守るも同価値なんだ……
仲間は……一人……その役目が俺の役割だ……簡単な話だ……
二人は……敵……簡単な役割だ……
「全く……気に入らないな、少年……その目……同じ境遇でこっちに来た奴だと思ったのにな……同じ境遇で……分かり合えると思ったのにな……」
そうセティが俺に言う。
そう彼女は……現世にもこの異世界でも……ただ楽観的な人生を望むだけ……だから……何も望まない……自分以外の誰かがどうなろうが……そんなことは彼女には関係のない話だ……
俺も……変わらない……
だから、せめて自分の願ったその能力で自分の出来ることをするだけだ……
だから……探れその理由を……
ご覧頂き有難うございます。
ほんの少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けたら、
☆評価、ブックマークの追加、コメントなどを頂けると、
モチベーション、執筆速度に繋がりますのでどうぞ宜しくお願い致します。




