新シイセカイノ造リ方。
「セシル……お前の仕業か」
レゼスが宙からセシルを見下ろしながら言う。
「くそ……《《もう少しだけ》》時間が在れば……」
悔しそうにセシルは空を見上げながら……
「魔力を瘴気を元の場所に返すのだ、それは、世界を形どるのに必要なものだ」
「あなたの世界の創り方は間違えている……僕がそれを証明する」
レゼスはつまらそうに、セシルを見下ろし。
「所詮、貴様も失敗作か」
レゼスはただ、黙って右のてのひらをセシルに向けると。
セシルの胸から魂のようなものが抜け落ち、
レゼスの手のひらに掴み取られる。
「なるほど……世界を元に戻すのも面倒だ……」
「ならば、セシル……お前がそうしようとした通りに、この世界を一度破壊するとしよう」
「セシル、次は無駄な感情など抱くなよ」
レゼスはその光の玉を見つめながら言う。
「返せ、それは僕が次の世界に繋ぐ希望だ」
「くだらん、愚かな人間の言葉など、どれも同じだ」
上空に待機している要塞のような戦艦の中央が開くと大穴がこちらを向く様に広がっている。
「フィルっ!!」
俺はそう叫び、全魔力を集中する。
一瞬で世界を破壊できるほどの魔力の砲撃が現れた大穴がピカリと光ると……
降り注ぐ崩壊の光を……
無駄だったとしても……俺は全魔力でそれを防ぐ結界を作り出す。
結界が全壊する激しい痛みが襲うと同時に、
身体全身が吹き飛ばされる。
「ほう……加減をしたとはいえ、これを防ぐか」
レゼスは少し感心するように俺を見る。
「しかし、それが何になる……ほんの数分、運命が伸びたに過ぎない」
要塞が再び魔力をチャージするように光を集めている。
「……こんなところで、レスに続けっ」
ライトの言葉に続き、その場にいる全員が能力を開放し、
要塞を見上げる。
「平伏せ」
レゼスのその一言で、地面に埋め尽くされるような重力がそこに居る全員を襲い、
能力が次々と消滅していく。
セシルがその中を一人ゆっくりと立ち上がり、右手を空に構える。
「新しい世界に神は不要だ」
セシルが今持つ全魔力を手のひらに込める。
それをレゼスに放つ。
それはレゼスの頬をかすめるように……
そして、レゼスが同時にかざしていた手のひら。
「……セシ……ル?」
フィーリアがその重力の圧の苦痛に耐えながら、
その目の前の状況を整理する。
レゼスから放たれた魔法で、右腕を失っている。
「困ったな……フィーリアちゃんと対局ができなくなっちゃうね」
這いつくばるフィーリアを申し訳なさそうに見ながら……
同じく這いつくばっている俺の前にセシルが立つ。
「もう少しだけでいい……時間を稼いで欲しいんだ」
「……世界を守る、その能力はやっぱり君が適任だ」
セシルが残る魔力を俺に託す。
「レス……?」
悔しそうに這いつくばるライトが、
以前にエリードの戦いの時に覚醒した能力。
エメラルド色に光る俺の髪。
ゆっくりと立ち上がる俺の姿をただ、見上げることしかできない。
「ふん、何をするかと思えば、そんな男一人を起こしたところで何になるというのだ」
レゼスが俺とセシルを交互に見る。
再び要塞の大穴が光る。
俺は全力の魔力でそれを防ぐが……
再びせっかくセシルの力により手に入れた結界はその一撃で消滅する。
「くだらない……その一瞬のためだけに何を抵抗する、防ぐことしかできぬそいつに何を託すというのだ」
再び要塞は魔力を集める。
ゆっくりと立ち上がる。
だが、もうあれをもう一度防ぐ魔力は残っていない……
「レス……この俺を失望させるなよ、今度は貴様はどんな奇跡をやって見せる……」
キリングが這いつくばる体制のまま右手をあげる。
「おい、貴様ら……意識のあるもの、魔力の残っている者は全員、魔力を右手にこめて天へとかざせ、その全てを俺に差し出せ……」
キリングの右手に魔力の玉が出来上がっていく。
「……レス、俺たちの全てをお前に託すぞ」
その球が俺の体内に沈んでいく。
再び、要塞の大穴が素早く光る。
落ちる滅びの光。
俺はその渡された魔力で防ぐ。
「だから、それになんの意味があるというっ」
言葉とは裏腹にそのしつこい抵抗に少し苛立つようにレゼスが言う。
崩壊の光を防ぐのにすべての能力を使っている。
レゼスが無防備の俺のからだに手のひらを向ける。
魔力が俺に振り下ろされる。
歯を食いしばり、耐える。
あの光を世界に落とす訳にはいかない……
「貴様ぁ、その結界を解けっ!!」
レゼスの攻撃をただ、耐え続ける。
意識が遠のいてく。
まだ……倒れるわけにはいかないのに。
・
・
・
長い……長い……夢を見ていたのだろうか……
目を覚ます……
道路の真ん中で……眠っていた。
此処は何処だ?
俺は確か……
夕焼け、オレンジ色に染まる町。
しばらく見ていなかった……
見慣れた日本の町並み……
俺はのそりと起き上がる。
俺以外の誰もそこには居ない……
世界から俺以外の人類が消えてしまったように……
大災害の後のように、滅んだ世界のような風景。
ひび割れた道路……数メートル先の道路は奈落の穴を開くように……
それ以上の進行を妨げている。
記憶の整理は追いつかない……
死した世界……なのだろうか。
ふわりと背中に長い青い髪がなびく。
「レインっ!!」
俺は確証も無いのにその名を呼び後ろを振り向く。
ザザッザザザッ……と砂嵐を流す、現世で知る昭和のテレビがそこにある。
正直、それをおれ自身余り……認識していない。
調子が悪いときはテレビの横を叩けば映像を映すということくらいの認識。
それが正しいのかさえ知らない。
俺は、その砂嵐を流すテレビの前に立ち、トントンとテレビを叩く。
ザザ、ザザと映像は何かを流す。
「レスっ……レス、目を覚ましてくれっ」
白黒で流れる映像は……何処のものか。
懸命に金髪の神々しい美しき女性がその俺を呼んでいる……
<ねぇ……君は何を願う……>
直接頭に……誰の声が響く。
声の主をその場所で探すがそれは見つけられない。
俺は再び黙ってテレビの映像を見つめる。
ザザッザザァと……テレビのチャンネルは電波の受信をうまくしないように……
「れ……す、レス……」
「あー、あーーー、聞こえるか」
今、俺がいる世界と同じ時間帯の教室……
ヴァニが自撮りしているカメラに話しかけるように……
「なぁ……レス、覚えているか……お前と俺の最初の出会い……」
そう言った後、何かを思い返すようにヴァニは鼻で笑い……
「昔……色々あってさ……親父のために自分のために……一人で強く生きてるつもりだった……力で恐怖で……周りを支配しているつもりだった……」
「きいたぜぇ……お前の拳……目が覚めた……俺はどうして強くなりたかったのか……その理由がその目的が……お前となら手に入れられるそう思えた……」
ヴァニは少し照れくさそうに顔を背きながら……
「おぃ……他に何を語ればいいんだよ……」
そのカメラの奥の誰かに言うように……
「痛かったぜ……お前の拳……でも、あの日、あの出来事……笑えよ……俺さ、あの日の痛覚が……一生の思い出だ……あの日、あの最悪の出会いがあったからこそ……今の俺がある」
ザザ、ザザザと映像が切り替わり……
ヴァニが倒れる俺の前に立ち、
懸命に、神へと立ち向かう姿がテレビに映る。
「レス……お前が目を覚ますまで俺が……俺が守ってやる……お前を世界を……だから……帰って来いっ」
口から血を吐きながら……
神に抗う姿……
「ヴァニッ……ヴァニッ!!」
俺はそのテレビの映像に向かい叫ぶ……
ザザ……ザザザと映像が切り替わる。
懸命に……ただ真剣に……
誰もが命を主張する……
テレビのチャンネルが切り替わる。
「レス……?」
「見てる……の?」
黒髪のショートカットの女性が映る。
世界最強の母を持ち、将来それ以上の存在となる事が約束される女性。
クロハが夕暮れの教室のカメラの映像を覗き込むように見ている。
クロハは首を傾げ、カメラに向かい語る言葉を探りながら……
「レス……には、ね……感謝……感激……」
カメラのレンズに向かい、クロハがペコリとお辞儀する。
滅んだ世界……
そんな場所に俺は一人、取り残されて……
不自然に置かれたテレビの映像を俺はただ……眺めている。
何が……起きているのか……
理解は追いつかない……
世界を創造……する……
誰かが……そう言った。
その映像は何を言葉とする……
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