神激(1)
「不満なんじゃないのかい……」
セシルは周りを見渡した後に、ナイツを見る。
「何が言いたい……」
ナイツが瘴気が創りあげた化け物を一体、また一体を消滅させながら、
その姿を見る。
「……君は彼、彼女たちとは違う……正しい正義を持って、努力も忠誠も培ってきた……」
それを……非協力的な言葉と一緒にされることが……
「無論……自分の正義を信じている……」
誇らしげに揺ぎ無い意思の瞳をセシルへ向ける。
「だけど、それが……神の言葉で、その勝手な分類で……自分の正義が否定されたつもりはない……彼、彼女の正義を否定するつもりもないっ」
黒い瘴気がセシルの前に集まる。
黒い盾を作り出すように、突き出したナイツの拳を防ぐ。
同時に、セシルの隣から愚者の仮面をつける大型の化け物が、
ナイツに巨大な拳を打ち付ける。
その衝撃に、後方へと吹き飛ばされていく。
「おらぁーーーーっ」
キカが棍棒、全力のフルスイングが愚者の化け物の右足を吹き飛ばす。
が……黒き瘴気がすぐにその右足を修復する。
「……少年、どう思う……」
現状をどう突破するかを問うように、セティが俺に言う。
「この黒い瘴気を全部払うか……」
そんな途方にくれる方法を口にする。
「……後は、あの仮面か……」
根拠は無いが、この化け物を制御しているだろう……
「だよな……」
同意するように、セティが化け物の仮面を見る。
「なるほど……どうしても神に抗うと言うのだね……」
「抗う~?違うねぇ……私は誰にも利用されたりはしない……」
振り下ろされた愚者の化け物のパンチが、
セティの作り出したゲートに触れると、数メートル離れた場所に落下する。
「それは……君が彼に依存する理由と……利用という言葉に違いはあるのかい?」
セシルは右手をセティに向けると、黒い瘴気がいくつもの武器を作り出す。
それは、セティが俺を利用することにならないのかと言う様に……
飛び交う武器を……セティの身体を貫く前に俺の結界に防がれる。
「自由を求めるくせに……意思を持たない……不自由を嫌うくせに、ルールに従う……」
そんなセシルの言葉に……
「自信を持つこと、それを言葉にすることなんてさ……簡単じゃないんだよ」
俺は、セシルの攻撃を防ぎながら口にする。
薄紫色に輝く鎖が化け物の身体を拘束する。
「躊躇わないでください……思ったことを口にすればいいのです……私はただ、それに従うだけ……さぁ……言葉をくださいっ」
「ひひ……ひひひ……私は……私は……」
投擲具を取り出す。
そしてそれを放り投げる。
「届かせる……約束……したんだよ」
アレフの電撃の魔力を投擲具が帯びる。
「おらぁーーーっ」
キカが魔力の球を棍棒で打ち飛ばし、仮面を狙う。
「神域鎧化……」
ナイツがその鎧をまとい、一気に巨大な化け物に詰め寄る。
「愚かなのさ……私達は……」
「なるほど……聞かせてくれるかい……」
そんなセティの言葉をセシルは求める。
「完全、完璧なものを……嫌悪する……そして不完全なもの、壊れかけのものが美しく見えるのさ……完全、完璧を求める過程が美しい……手元にある完璧は、そんな未完成にすら及ばない……」
「まぁ……それにすら挫折した、私の言える言葉じゃないけどさ……」
俺は自分の魔力をセティの右手に送る。
エメラルド色に輝くセティの右手。
黒い霧……瘴気が上空に恐ろしい数の武器を創り出していく。
「……あんたがこの世界を創造するっていうのなら……私はそれに従うつもりはない……それを利用するだけだ」
エメラルドの右手で指を鳴らす。
電撃を帯びた投擲具、棍棒で打ち上げられた魔力の球……
その攻撃が愚者の化け物の仮面をとらえる。
ピシリとヒビが入るが、破壊には届かない。
パチンという、セティの指の音に合わせ、
上空に作り上げられていた漆黒の武器が愚者の化け物に刃の先を向ける。
「貫けっ」
セティのその言葉と同時に数多の漆黒の武器が愚者の仮面を貫き、化け物の頭部を破壊する。
「アアアアアアアアアーーーーーーッ」
化け物は悲鳴をあげるようにその姿は崩壊していく。
「……なるほど」
セシルは自分のつけていた仮面を地面に投げ捨てると……
黒い墨に代わる様に消滅する。
「おらぁーーーっ」
キカが魔力の球を今度はセシルに向けて打ち放つが……
セシルの背から解き放たれる六つの翼がその身体を覆い隠す。
そこに絶対なる壁があるように、
そんなキカの球も、ミストが投げた投擲具も……
そんな絶対なる壁の前にかき消される。
「一つの言葉は主張する……それは皇帝……優れた正しき、指導力を……責任を主張する……」
そんな翼に覆われながらセシルがその仮面を付け替える。
「……なんだ」
ナイツの真下に漆黒の渦が現れる。
黒い触手がその身体を拘束する。
同様に、キカ、アレフ、ミスト、クエスの真下から現れた黒い渦から伸びる触手にその身体を拘束される。
「しょーねんっどけろっ!!」
セティが俺の身体を右肩でそこから吹き飛ばすように位置を入れ替えると……
俺の真下から現れた黒い渦、そして触手に身体を拘束される。
「……そんな届かない言葉、そんな世界に……何を願う?」
セシルが翼を開くと……物凄い圧がその場を支配する。
そして、その触手、渦に飲み込まれるように俺以外の全員が地面に飲み込まれていく。
そして……再び、セティが創りあげたものとは別のゲートが現れる。
「そんな……必死の言葉が届かない世界を創ってあげるよ……僕が……」
「……誰もが平等に……誰もが幸福でいられる世界を作りたかったのです」
マナトがゆっくりとその場に現れる。
「なぜ……平等は……不正なのでしょう……」
「いけないことをしている……そんな自覚はありました……それでも……」
その場にいる全員を敵対する覚悟でマナトが口にする。
「これが……私の正義なのです」
偽りのない……彼の言葉。
「個性の無い……同価値の人類……ひどくつまらないとは思ったことは?」
セシルのそんな言葉すら……彼には……
「それを得られない者にとって……世界など地獄なのです……私はただ……生きやすい、生きられる世界を作る……私の前で障落ちする人間をこれ以上……」
マナトは何かを懺悔するように……
「リザ……君が笑って教師として生きる世界をわたしが作る……例え、君がここに居なくても……そんな平等な世界をわたしが……つくるっ」
そんな言葉をセシルは新たな仮面越しに聞いている。
「それは……その願いは正しき、優れた指導と責任感……でもそれは……優柔不断の主張……」
そんな、優しすぎた男に……セシルは告げる。
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