代表
互いに……、自分が国のその学園の最強だというわけじゃない。
それでも……そんな代表は自分であると……
神々しく美しい長い金髪……ワイン色に輝く瞳を宿すライトと、
ピンク色の髪……その同じく長い髪を細い尻尾のように縛り付けるサリス。
「それじゃ……大将戦始めっ」
1勝1敗……その中で、リプリスの声で二人が同時に動く。
ライトが黙って魔力の剣を作り出す。
「宿せ……炎属性っ」
始まりの合図から数秒で、
両国の代表はその武器を繰り出す。
鍔迫り合いをはじめる。
「宿せ……氷属性……」
サリスは一度刃を戻し、再び刃を振るう。
一面を凍りつかせながらその刃を再びライトの魔力の剣にぶつける。
鍔迫り合いになる刃から魔力の刃を通し、
ペキペキとライトの右腕が凍っていく。
一瞬、凍り始める腕に瞳を落とすが、
興味なさそうに、ライトのワイン色の瞳がサリスを見る。
「放て……聖剣っ」
ライトの手にする魔法剣の魔力が数倍に膨れ上がる。
そんなライトの高い魔力から、まるで高熱が放たれているかのように……
周囲の氷を……腕の氷が剥がれ落ちていく。
「宿せ……雷属性」
再びサリスは刃を一度引く。
黄色く光輝く刃……
同時にサリスの動きは誰にもとらえられないほどに、
素早く、一瞬で……ライトの背後を取る。
……が、興味なさそうにライトの瞳は、
その一瞬もサリスの位置を見逃さなかったように……
ライトが首だけを90度曲げたライトの瞳とサリスの目が合う。
当然、背後をとった一瞬で繰り出したサリスの一撃を、
ライトの手にする聖剣が防いでいる。
「全く出る幕がないな……」
邪魔せぬよう水を差さぬように、クレイがその様子を眺めながら言う。
「ふぁ、いいねぇ、勝手にやれ、やれぇ」
サリスの相方の女子生徒もあくびをしながら無関係者のような立ち居地で、
傍観している。
別に自称したつもりは無い……
そう自覚した事もない……
それでも、世間の評価はいつも勇者を求める……
その責任には答えてきたつもりでいる……
それが、今の彼女に与えられた最強……
それは、誰もが自然と認めるだけの学園、代表……
「父を失い……私は貴公ほどの支持などされていない……」
瞬間的な火力なら、メノウやイブにすら劣っているかもしれない。
「……刀術最強、それも父があっての名だ……」
でも……
「……私は……貴方を超える……」
いや……超えた……
「宿せ……」
空気が変わる。
「竜王……弐っ」
サリスの持つ刃に凄まじい魔力が送り込まれる。
刃は真紅に染まり、その高い魔力に影響し刃が少し大きく見える。
少しだけ警戒するようにライトの瞳がその刃を一瞬目を落とす。
が、それでも……冷静に、ゆっくりとライトの瞳はサリスを見た後……
油断するように目線を反らす。
「あんたの強さになど……興味は無い……」
そして、ライトはそう呟くように……
「私はただ……取り返す、迎えに来た……君を」
ライトがリングの外の俺を見て言う。
「うっわぁーーすっごい美人……かなわないなぁ」
イブが少し大きい声で独り言のように言う。
「(これ)……そんなに価値あるのかなぁ」
俺を眺めながら……おそらく失礼なことを言っている。
いや、間違ってはいないが……
「そっちの子もさぁ、すっごい美人さんだしぃ」
クリアがイブと目が合うと、少し恥ずかしそうに目を伏せる。
「イブ……お前も相当に……(かわいい)だろ」
俺は横目で少し拗ねたように言ってるイブに言う。
「えぇーーー、本気で言ってるぅーーー?」
疑うように、イブが俺をにらんで言う。
「レスーーー私は軽口の男は嫌いだよぉ、誰にでも言ってるでしょそれ」
疑いの言葉をかけられる。
「……そんな、器用な男だと思うか?」
「まぁ……確かに」
変なところで納得される……が。
ゆっくりとリングの上に目線を戻す。
手にしている能力、剣の火力としては……
サリスがライトの上だと、素人、視点からも読み取れる。
それでも、ライトの瞳はその刃の動きをひとつ、ひとつ読み取るように……
刃と刃がぶつかり合うたび、ライトが圧されるように後退しながら、
刃で刃を受け止め、時には回避を続けている。
だが……
次の一瞬、隙をつくように……
切り替えしたライトが聖剣をサリスの首筋にあてがっている。
「ここにきてまで……情けのつもりかい?」
なぜ、その手を動かさないのか……
そんな侮辱のような真似に、ライトを睨むように……
「悪いが、あんたの強さにも、この勝負の勝利にも興味は無い……レスを返せ、私がお前たちに興味することなど、他にはない」
ブンっと振り回されたサリスの刃から、
その小さな面積から到底考えられない風圧が作り出され、
周囲を破壊する。
そんな好機など、はなから興味なさそうに、
バックステップで距離を取る。
「ファラ=イメイジ」
長い髪……前髪で片目を隠しもう片方は眼帯で瞳を隠している。
片手の拳銃のようなものをいつの間にか手にしている。
今更……そんな武装で……
周囲がそう彼女を眺めているが……
それでも、ライトが興味無さそうに、少しだけ警戒するように瞳を向ける。
「っ!?」
手にした拳銃を自分のこめかみに当てる。
「はぁ……これ、痛いから嫌いなんだけど……」
ダンっという音と共に、魔力の空弾がファラのこめかみを貫く。
「針……地獄っ」
そんな自滅の銃弾で左にふらつきながら、ファラが呟く。
ゆっくりと他の皆が見る上空をライトが見上げる。
数千とありそうな針の魔力が浮いている。
「……自滅技ってだけあってね、威力はそれなりだと思うけど……」
少しだけ自己評価するようにファラが告げる。
一気に降りだす真紅の針を……
ライトの瞳が一つ一つを瞳を細かく揺らしながら見ている。
多分、それを回避するなど……誰にもかなわない。
その攻撃を破壊するほかに無いだろう……
それでも……ライトはただその一瞬……
その攻撃がライトに到達するまでの数秒で……
何かを導き出すように……
一つの場所に立つ。
落ちる針地獄をただ……その攻撃も見上げずに……
「う、嘘でしょ……」
信じられないものを見るようにファラがライトを見ている。
一箇所、自分の体一つ分、その攻撃が行き届いていない場所を見極め、
その攻撃が通過するのをただ、黙って待つ。
そのほとんどが通過した後、ゆっくりと右手をあげると、
最後に目の前に迫った針を聖剣で叩き落す。
「なにこれ、ボクの自身の叩き損じゃん」
主張するつもりは無い……
そう呼ばれる努力をした訳でもない……
それでも、彼女の誇り高きその強さは……
そんな最強を裏切らない……
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