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 「へぇ……こっちは医者になった君かな、じゃぁこっちの綺麗な女の人は?」


 スケッチブックに描かれた子供のらくがきを眺めている。


 「りーちゃん、りーちゃんが病気になったら僕が治してあげるからね」


 そんな将来を約束するように、目の前の少年が微笑む。



 ……何が、神に抗う……だ。


 何が神に成せないことをするだ……



 私にできるのはせいぜい、お金を集めること……


 そのお金で何かを手に入れ、人を動かすことだ。



 そして、結局……肝心な部分は何一つうまくいかない……



 《《つみ》》あげたのは……お金……


 それが私に与えたのは……罪……





 「今までの中では適正は高いが……正直今回も適正は低い……」


 心臓を押さえ苦しむ少年を横で私と医師は会話をしている。



 「この子は……後、何日生きられる?」


 私の率直な質問に……



 「わからない……が、下手をすれば次の発作には耐えられないかもしれない」


 酷く苦しむ少年……



 「進めてくれ……」


 私はそう医師に言う。



 「しかし、あなたにその権利などっ」


 「金は払う、責任も負う……この子を助けられる可能性があるのなら、私はそれに賭ける」


 いずれにしても、このままではこの少年は数日ともたない。

 それは、この医師が一番に知っている……

 それでも、手術が失敗すれば世間はきっと、

 この判断を悪とする。



 


 少年に取り付けられた生命装置が弱々しく波うっている。


 医師はただ……申し訳なさそうに俯いている。



 「りーちゃん……りぃちゃん、居るぅ?」


 少年が私を呼ぶ。


 「ん……んん」


 私は返事をしながら、そんな自分の判断……

 奇跡を起こせるなどどこかでそんな風に考えていた自分を嫌悪する。



 「ねぇ……りぃちゃん、目の前がね……真っ暗なんだ……電気つけてくれる、りぃちゃんの顔がね……見たいんだ」


 我慢していた涙が流れて……



 「ごめん、ごめんね……ごめんなさいっ」


 その右手を握る。

 私はただ……そんな言葉を繰り返すことしかできなくて……



 理不尽に向けた神への怒りも……

 誰かを犠牲に手にした富と罪も……


 ただ……意味を成さなくて……



 「知ってるよ……りーちゃんがね、僕にね……いろいろしてくれてたの……りーちゃんが買ってくれたゲーム機、今度学校で自慢したかったなぁ……」


 ゆっくりと語る少年の言葉を……



 「……知ってたよ……僕を助けてくれていたのは神様じゃなかった……女神様りーちゃんだったんだよね……」


 「違う……違う、私は……私は……」


 結局……あいつ、同様に助けてあげられなかった……



 「……りーちゃん、有り難う」


 そんな資格など……私には無い。


 神よ……あんたは本当に何をしている。



 罪深い……裁かれるべき者はここに居る。


 慈悲深い……救うべきしょうねんはそこに居た。



 ピーーと不快な音を鳴らし、生命装置の液晶が平らの線を描く。


 

 そんな……少年の運命、私の使命に……

 あんた復讐うらむのは……検討違いか?



 「イサナ君……次だ……」


 何をすれば……私は許される?

 どうしたって少年は生き返らない。


 それでも、何を望む……これから何を成す?



 「社長……」


 離れた場所でずっと俯いていたイサナという男が重い口を開く。



 「正直……今の貴方にはついていけません……すいません」


 そうイサナという男は私に告げると、私より先に病室から外に出る。



 病院から外に出る。


 まるで、私がここに現れることを待っていたというように……


 女性……だろうか?

 パーカーのフードを深く被り、不審にも……目元すら確認できないくらいに深くフードを被っている。

 ただ、体格から女性そう判断する……



 互いに何かを意識しあいながらも……


 ゆっくりと歩き始める。



 「……ねぇ……さん?」


 なぜかその言葉がこぼれる……

 私に恨みを持つ人間など今となっては沢山居る。


 そんな覚悟はしていたはずだ。



 ドンっと肩と肩がぶつかり合うように……

 通り過ぎる。



 あぁ……いずれこうなることなど……わかっていた。



 何事もなかったようにお互いに……

 フードを被った誰かは病院の入り口のほうへ。


 私は病院の門から外に出る。



 そんな私を見た人間は驚き、また誰かは悲鳴すらあげている。



 私はただ……何事も無かったように歩き続ける。


 「……ぐふっ」


 口いっぱいにためた、血を地面に吐き。

 それでも、何事も無かったように歩く。



 しばらく、歩いているとファンファンと赤いランプを点灯させながら走る車の音が近づいてくる。


 捕まる訳にはいかない……

 私にはまだ……成すことがあるんだ……



 神よ……私はお前を出し抜く……


 私はビルとビルの間を抜けるように……

 そのサイレンの音から遠ざかるように……


 腹部から血を地面に吐き散らしながら歩き続ける。


 意識は朦朧としている。



 こんな場所でおまえに負けてなるものか……



 私は、意識が朦朧とする中で……

 ひとつの建物に逃げ隠れるように入り込んだ。




 「マッチングは成立しました……」


 中に入り、まったく状況を読み込めない私に女は語りかける。



 「新たな世界であなたが求める能力ちからを創造してください」


 転生屋を名乗る女は私に言う。



 理解などしていない……

 それでも……



 意識を失いそうな中で私は能力それを望んだ……


 おまえに……復讐するんだ。




 ・



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 ・




 ゆっくりと……リプリスが目を開く。


 自分が今……個々にいる理由を思い返すように……



 ゆっくりと……交戦を続ける生徒たちを見る。



 「決着をつけましょう……」


 自分の何十倍もある重さのハンマーを片手で振り回しメノウが言う。



 自分に匹敵する、またその上をいく二人の強者を見ながら……



 「私は……普通を嫌悪します……」


 くるくるとハンマーを振り回す。



 「私の努力が……足りなかったというのですか……私たちの努力は……あなたに否定などされたくないのです」


 ツキヨの紫桜とメノウのハンマーがぶつかり合う。

 どちらもその勝利も負けも譲らない。


 狐面が何かを察知するように、メノウの邪魔をしようと攻撃を仕向けるが、

 キカの魔力の打球がそれを邪魔する。




 「……今……この一瞬を……凌駕ひていします……」


 バリバリと青白い火花がメノウを手にするハンマーに流れ込み……



 「凌駕一打ギガスマッシュっ!!」


 ツキヨにその一撃を……

 その本日、繰り出せる懇親の一撃をツキヨに振るう。



 「ちっ!?」


 赤い瞳でそれに反応したツキヨが手にする紫桜かたなでそれを防ぐ。



 が……全能力を注いだメノウの一撃。



 そんな彼女のズバ抜けた能力すらその一撃は貫く。



 ツキヨの身体はその一撃をそんな自慢の刀で防ぐことすらできずに吹き飛ばされ……



 「場外……勝者……バルナゼク」


 すべての力を使い果たしたというように、息を切らしながら……

 手にしたハンマーを振り下ろすメノウの姿がある。



 悔しそうにツキヨが、場外に出た身体を起こす。



 「予測は出来ても対処は……難しいものですね」


 狐面はそう対戦者に向けるように言って、

 リングから降りる。



 変わるようにライトとクレイがリングにあがる。


 そして、サリスと残った女性がリングに登る。



 おそらく、ライトもサリスもその負けを想像などしていない。



 始まる大将戦。



 果たして、神が居るというのならどちらを贔屓するのだろうか……


 俺はただその結末を眺めている。



 

 

ご覧頂き有難うございます。


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