表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
194/213

嫌悪

 ・



 ・



 ・




 「しゃ……社長……なにを?」


 父と姉の会社を離れ、協力企業として新たな会社の社長となった。

 私は社長などと呼ばれる立場で、数名の部下を持つ立場になる。


 父親が目にかけて、利用し投資を続けてきた企業……


 私の標的のリストを見て、イサナと言う男性の部下は驚いた声をあげている。



 「……イサナ君、驚くことではないさ……」


 ゆっくりと私は呼び出された良く知る廊下を歩きながら、

 それがいる部屋を目指す。


 「神が然るべき仕事をしない……だったら私が代わりにそれをする……」


 「しかし……どれだけの犠牲が……どれだけの恨みを買うおつもりですか?」


 これによって……人生そのものを奪われる……

 そんなモノがどれだけ居るのか……



 「イサナ君……好きな人は居るか?人生をかけたい相手は居るか?」


 そんな私の質問に彼は私の顔を一瞬見た後……


 「……好きかは……わかりません、……尊敬する人なら……居ます」


 そう告げられる。



 「……突き動かす動力源など、それくらいのものだ」


 ……一瞬、足を止めたそれを再び目的地に向け動かす。


 「例え、それに関係ないものを巻き込んだ……としても私はその目的を変えたりなどしない」


 一つのとびらを開く。



 父と姉を含めた人間たちがコの字のテーブル座っており、

 正面に位置する場所に父が立っている。


 私はそんな緊迫している空気を無関心に……気づかないようにそのコの字の真ん中に立つ。



 「何が起きている……説明しろっ」


 父がその理由を求めるように私を威嚇するような口調で言う。


 「……何が?ですか……父さん、私はあなたの教えをただ……実行しているだけだよ」


 そんな複数の厳しい目すら気にせず言い放つ。


 「ここまで……私を育て……あなたの生き様を見てきた……だからこそ、この言葉を貴方に捧げにきた……」


 白い歯を父に見せ付けるように……



 「何を言っているっ」


 焦るように父が私に叫ぶ。



 「……父さん……逆に問う……あなたは今まで……この状況で、そんな人たちになんて言葉を送ってきた?」


 「馬鹿なことはよせ……今ならまだ許す……だからっ!!」


 恐ろしい眼差しで私を制止する父に……



 「許す……?今のあんたがそんな立場だとでも……?」


 「何が目的……お願い、馬鹿な真似は……私たち家族でしょ、何かあなたの機嫌を損ねたら謝るからっ」


 隣で姉が威圧的な父に代わり私に請う。



 「……ねぇ、ねぇさんは……だんながそう言った時、なんて返したの?」


 冷たく父を見ていた瞳を姉にずらす。



 「……イサナ君、かまわない……はじめよう」


 私は右手をあげて、彼に合図する。



 その瞬間、その場にデスクに座る人間たちがパソコンを眺めながら、

 なにやら騒ぎ始める。


 もちろん、その犠牲はこの場にいる人間たちで収まらない。


 私は私の目的のためだけにあらゆるものを犠牲にした。

 その罪は……いずれ報いるべきものだ。


 それでも、私はただ……それを守るんだ。

 


 「父さん、あなたはきちんとそんな人たちにこの言葉を送ってきたのか……」


 ゆっくりと父を見る。



 「悪ふざけはよせっ……いったい何をしたっ」


 「社長……取引をしている全ての会社の株価が大暴落していますっ!!」

 周りの大人たちがただ騒ぎわめいている。



 「……今まで……ありがとう……」


 私はそんな彼らに背を向ける。


 「いくよ……イサナ君」


 私は動揺する彼にその言葉を告げ……



 「《《サヨウナラ》》……」


 与えるべき言葉を私は告げて、部屋を出る。



 「待てっ!!待たないかっ!!」


 そんな言葉を聞こえないように私は、その場に二度と踏み入れぬ覚悟を決める。




 ・



 ・


 

 ・




 ゆっくりと目を開く。


 今度こそ……守るのだと……


 そして……それに復讐してやる……


 逃げも隠れもしない……



 おまえすら出し抜いてやる……


 そのつもりで……






 キカとツキヨが競り合いを続けている。


 初桜を装備していたツキヨの頃は、

 その力任せのキカが少し優勢だったが、


 まさむねに装備を変換したツキヨが、

 今はその技術的な面から優勢になっている。



 キカは一度、後ろに高く飛び距離を取る。



 「得意じゃねーんだけどさ」


 青白い光の玉を左手にためる。



 「こっちを振るってる方が楽なんだ」


 バットのような棍棒で自分の右肩を叩きながら、

 手のひらで作り出した魔法弾をツキヨに放つ。


 その彼女の持つポテンシャルから威力は高いのかもしれない。

 でも、やはり彼女の戦闘スタイルからすれば、

 その攻撃を回避することなど、ツキヨには容易い。



 「あたる訳ないか……」


 キカはそう呟きながらも再び光の玉を左手に貯める。



 「……だったら、あたしらしく……」


 光の弾をポンと頭上に投げる。


 ゆっくりと落下するその光の弾を……



 「っ!?」


 ツキヨが地面を強く蹴り上げ右に飛ぶ。



 キカは手にしたバット型の棍棒を両手で握り、フルスイングで光の弾をツキヨに向けて打ち放つ。


 ツキヨが居た座標に物凄い打球スピードで通過する。



 「まだまだ……続けるぜおらぁーーーっ」


 新たに左手に光の弾を創り出す。





 「私は……普通を嫌悪します」


 ぐるぐるとメノウが等身大のハンマーを振り回しながら狐面と対峙している。



 「全く……贅沢な人です……普通など贅沢……そう思いませんか?」


 そんな狐面の言葉に……



 「……思いません」


 手にしたハンマーで繰り出される狐面の攻撃をはじき返しながら……



 「誰が……普通を愛すのでしょう?」


 ゆっくりと狐面の攻撃を拒絶しながらも、その歩みを止めない。



 「せいぜい……自分おろかなものだけなのです」


 再びハンマーの先を狐面につきつける。



 「それは……?」


 どういう意味?と狐面はそのハンマーの先を恐れず問う。



 「普通を愛する人など……自分だけですよ、そう言いました」


 メノウが狐面の面の奥を睨むように……



 「他人はそんな普通わたしを愛しなどしない……」


 「たよられるのは……強気もの……まもられるのは……弱きもの……立場そうばは決まっています……普通はどちらにも属しませんから」


 メノウが狐面を見つめながら……



 「さて……あなたの言うその普通は本当に普通ですか……普通になりたい……その時点で今は普通では無い……そうではないのですか……私は普通を嫌悪します」


 メノウがあえて、つきつけたハンマーを開放し、一度距離を取る。



 「さて……では、普通のモノが……そんなあなたかを出し抜くにはどうすればいいのでしょうか……」


 メノウの周囲の重力が変わる……


 手にしたハンマーを天にかざす。


 そんなハンマーは一回り巨大化するように……




 「私は普通を嫌悪します……たとえそんな資格が無くても……そんな普通は誰も守れず、守られないのなら……わたしはただ……」



 彼女の身体能力が10倍に跳ね上がる……



 「私は……普通じぶん嫌悪りょうがします……」


 完全にその場の空気が変わっていく……。


 

 

ご覧頂き有難うございます。


少しでも興味を持って頂けましたら、


広告下からの【☆☆☆☆☆】応援

ブックマークの追加、コメントなど評価を頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ