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勝者

 ヴァニとヨウマが地面を蹴り上げ、相手に向かうがエトナが舐め上げるあめ玉……その逆手とシンクロしているように俺の右手が動く。


 そして……俺は彼女、そしてローの前に結界をはる。



 「くっそ……」


 ヴァニが結界の前で拳を寸止めする。



 「わかんねぇけど、こいつを殴るとレスを殴っちまった気分になる……」


 「だよねぇー、でも、斬っても斬れる気もしないよねぇ」


 ヨウマも結界の前で歩みを止める。



 「壱の型……爆破拳ショットガンっ」


 現に操られたレスの特化防御けっかいとはいえ……

 エトナの魔力が干渉できる上で作られている……

 ヴァニの本気の一撃なら……破られるかもしれない。


 が、ヴァニの拳は地面を叩き、その場から高く飛び上がり……エトナの頭上を位置取り、そのまま落下する……。



 「ふーーーん」


 興味なさそうに理解したように声を漏らす。


 あめ玉を口にしたまま、右手をヴァニの居る頭上に向ける。


 頭上のヴァニの落下時点に結界をはる。



 「弐の型……」


 ヴァニはその場で身体を150度くらい回転させ、

 空に自分の手甲を向ける。



 「火炎弾ロケットパンチっ」


 その反動を利用し、落下時点をずらしさらに勢いよく地面へと落下する。


 かたひざと左手でその勢いと身体を止める。



 すぐに、身体を起こし……振り上げた拳をエトナに振りかざす……



 「えっ……女、殴れないとか……?もしかして……童貞?」


 「関係ねぇ……だろ」


 手甲をエトナの顔面手前で寸止めしているヴァニが答える。



 「……今は女に……興味はねぇ……おいつきてー奴がいるんだ……」


 目の前の色気おんなに惑わされることなく……



 「……えっそっち系?」


 思わぬ疑惑を向けられる。


 「ん(そ)なんじゃねぇーよっ!!」


 「っ!?」


 そんな突っ込みの声をあげた瞬間、側頭部を狙った三節棍こうげきを避ける



 「よく、わかりませんが……女相手がやりにくいというのなら……このローがお相手します」


 ローが三節棍を回収しながら言う。



 「ふーーん」


 エトナは余所見をしながら、取り出した新しいあめ玉のようなものの袋を剥がしながら興味なさそうな声を漏らす。


 そして、その新しいあめ玉をヴァニの口の中に入れる。



 「なっ……」


 ヴァニがそれを吐き出すように顔を背ける。



 「……まぁ、あたしの口は塞がってるからさぁ」


 エトナは今口にしているあめ玉のようなものを指すように……

 ヴァニから回収したあめ玉を……


 腰に巻いていたポシェットのようなものを開けると、ポシェットの中が真っ黒闇で……その奥に、目と口のようなものが見える。


 そして、ばくりとそのあめ玉を食らう。



 「洗脳完了インストール……」


 鞄の中から、棒部分の無いあめ玉のようなものがいくつも宙に浮かぶ。


 「火炎弾っ」


 あめ玉が小さな赤い火の玉のように赤く染まる。



 「飛び散れっ……飛花ひかっ!!」


 ヨウマの持つダリアが地面を数回撫でるように、

 作り出した刀風がエトナに向かう。


 「こっちは……私が受け持つよ、ヴァニ君」


 ヴァニと入れ替わるように、エトナとヨウマが対峙する。



 「……助かるっ」


 ヴァニは地面を蹴り上げるように、拳を振りかぶりながらローに向かう。


 「壱の型……爆破拳ショットガンっ」


 ローがバックステップするように後ろに飛び上がるとその一撃を回避する。



 「参の型……火槍バーストっ」


 振り下ろした、拳をそのまま地面に押し付け、攻撃を再開する。



 「っ!?」


 素早さ、運動能力は高い……

 ローは、寸前でその攻撃方法を察知すると、少ない動作でそれを回避する。



 そして、しばらく互いに攻撃を繰り出しては互いに回避を繰り返し……


 ローがヴァニの繰り出した拳を棒状に戻した能力で受け止め、

 その攻撃を数センチ両足をつけたまま地面を引きずるように後退する。


 「あなたの強さ、理解しました……であれば、こちらも本気れいぎを尽くしましょう」


 再びローの持つ棒が三節棍に変化する。

 そして、その三節棍を自分に巻きつけるように、

 旋風を起こす。



 そんな青白い旋風が、青白い炎の竜のような姿に変わる。


 「っ!?」


 ヴァニの身体がそんな青白い炎の竜に弾かれるように吹き飛ばされる。



 そして、青白い炎の竜は再びローの右手に治まると、

 その姿を三節棍に戻す。



 少しひざにきている、ヴァニはその場に立ち上がる……が、


 ローの手に戻った三節棍をまともに数撃受け、再び吹き飛ばされる。



 「これ以上の意地など不要でしょう……」


 まだ、起き上がろうとするヴァニを止めるようにローが言う。


 「意地それを通す、意味りゆうが、この決闘にあるとは思えません」


 また、一撃を与え、地面に転がるヴァニを見て、起き上がることを放棄させようと説得する。


 「別にあなたがたにとってもこの決闘で、彼を失う訳ではありません」


 俺を指し、さらにこの争いの無意味さを語る。



 「……レス……お前の隣に並べる人間おとこになるんだ……それに、親父と約束したんだよ……絶対に倒れねぇ……それが俺の取柄つよさだ……」


 「……わかったら、てめぇこそ諦めろ……あんたに俺は倒せない」


 「そうですか……」


 情けを無下にされ、少し呆れるようにローが言う。


 再び三節棍で旋風を巻き起こすように青き竜を作り出す。



 立ち上がっていることがやっとのように、

 ヴァニは無抵抗にその一撃を受け吹き飛ばされるように地面を転げ回る。



 「……意味などない……あなたは立ち上がる必要がない……あなたにできる助言です」


 ローが地面に這い蹲るヴァニに言う。



 「例え勝負に勝てなかったとして……負けは屈辱、勝利は名誉……男として……それを受け入れられなくなったら……ダメだろ……例え……負けたとしても……俺は倒せない……その恐怖を植えつける」


 ヴァニが立ち上がる。



 「壱の型……爆破拳ショットガンっ」


 再びローの巻き起こした旋風、青白い炎の竜がヴァニめがけ飛ぶ。



 そんな青白い竜を殴り飛ばすようにヴァニの拳がぶつかりあう。


 相殺するように、三節棍がローの手に戻り、

 少し後退するように、ヴァニは地面に足をつける。


 「腰……が引けてるぜ……その一撃で俺が倒せない……そう思ったか?」


 ヴァニが瞳をローに向ける。



 ほんの……少しの動揺、恐怖……

 少なからず、この一撃で仕留めることは不可能だと……


 だが……倒れるまで攻撃を継続するだけ……


 旋風を起こし、再び青き竜をヴァニに飛ばす……



 「終焉チェックメイトっ」


 ヴァニの手甲が激しく燃え上がる。


 赤き炎と青き炎がぶつかり合う。


 「……恐怖を覚えた……あんたの負けだっ」


 弾き返した青き竜がローの右手に戻る。

 三節棍が握られる。



 振りかざしたヴァニの拳がそのままローの身体を捉える。


 吹き飛ばされたローの身体は……リングの外まで吹き飛ばされる。




 「場外……勝者……グレイバニア」


 リプリスのその判定の声が響く。



 互いに競っていた、ヨウマとエトナがその声で、争いをやめる。



 「ふーーん」


 興味なさそうにその試合結果をエトナが受け入れる。



 そして、ヨウマに背を向けるとリングの下に下りる。



 「しゃぁーーーっ」


 一人、その勝利をかみ締めるようにヴァニが叫ぶ。

ご覧頂き有難うございます。


少しでも興味を持って頂けましたら、


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