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真実

 「皆さん……もの凄く、真面目に考えるんですね……答えなんて本当にもっと簡単なのに……」


 長い青い髪をなびかせながら彼女は俺を見る。



 「ほんと……二人の少女の小さな悪戯のような事から始まった話なのです」


 そんな彼女を俺達クラスメイトはただ無言で見ている。



 「……世界こたえはもっと単純……7人の転生者がこの世界に来たタイミングってのは……《《同じ》》だったんですよ」


 さすがのフィーリアもその言葉には嫌悪そうな驚きの表情を向ける。



 「レスさん……そんな神に選ばれた転生者あなたは、やっぱり転生者その中でもやっぱり《《特別》》だったんです」


 何を言っているのか……

 誰も理解できないまま……



 「答え合わせは……もう少し後にしましょうか?」


 そう言って彼女は取り出したマントを羽織、フードを深くかぶる。

 そして……



 「リヴァー?」


 信じられないというように……レインがリヴァーを見ている。

 手にしたキツネの面をつける。


 「皆の望み通りに……《《ただの女の子》》……に……《《してあげたつもり》》でしたが……」


 キツネ面はゆっくりと歩き、スコールとクロノが争う前に立つ。



 サーチ……人の考えや能力ステータスを覗き見る。

 確かに……何処か能力が他と違う気がした……


 争う事に特化した訳じゃないが……

 



 「何のつもりだ……」


 当然スコールを戸惑うようにキツネ面に言う。

 クロノもキツネ面にその左目を向けている。



 「……少し抵抗じゃまをしに来ました」


 その正体をあっさりとあかし、俺に私の正体などはじめからわかっていたのだろと言いたげに……



 「集えっ」


 「貫けっ」


 そのキツネ面の強さは、一度手を合わせ知っている。

 スコールがすかさずに攻撃を向ける。


 「……そもそも……私の本当の能力は……」


 リヴァーはキツネの面の中で口角をあげて笑う。

 胸の前に出した両手の人差し指だけを伸ばし、

 その場で両手でくるりと円を描くように回す。


 上空からキツネ面めがけ飛んだ水の魔力で出来た魔装具がくるりと回転し、

 方角を変える。



 「なっ!?」


 そして、落ちる魔装具をクロノが黒い矢で懸命に打ち落とすが……

 さすがは、生徒会長さいきょうとよばれていたその能力を完全に無効化できずにそのいくつかを受ける。


 「囲えっ……スィージアロー」


 リヴァーの周囲に黒い矢が発生する。



 「……そんなそんざいが……たった一人の少女の我侭いたずら……それが普通の女の子に憧れて起こした好奇心きまぐれ……」


 くるりとまわした両手で今度は中指と親指をこすりあわせるように音を鳴らすと、

 宙に舞う黒い矢が、しゃぼんだまのような水の球体に包まれる。



 再びキツネ面が指を鳴らすと、触手のように伸びる水の鞭がスコールとクロノを拘束する。



 「何が……どうなって……」


 クロノは……彼女きつねめんを救うために……

 俺は少し混乱しながら考える。


 「リヴァー……お前を信じていたのに……お前まで妹を裏切るのかっ」


 スコールは自分の過去の過ちを返りみながら叫ぶ。


 「案外、ひどい事を仰っているのは……彼女レインのお兄ちゃんだと思いますが……」


 「そうは思いませんか……レスさん?」


 急にキツネ面にふられる。



 「あら……賢い貴方ならもう《《真実》》に気づいていると思いましたが……」


 キツネ面の中から残念そうな顔をこちらに向けているのだろう……



 「思い出してください……レスさん……《《私達》》と最初に出会った日のこと……」


 キツネ面がこちらを見る……どんな表情をしているのだろうか……



 「……ほんと、ほんと小さな改変いたずらだったのです……答えなど簡単です……その記憶を少しだけ入れ替えるだけですから」


 理解は追いついていない……

 ただ……語られる真実に戸惑うことしかできない……



 異世界の転生者は7人同時に召喚された……?



 「盗み聞きしていたように、記憶を覗かせて頂いて申し訳ございません……」

 「そちらの……レイムさんが少し面白いことをおっしゃっていたので……」

 「時間と世界の果て……のお話をされていましたね……実に賢いこの世界の矛盾の的を得ています……レスさん、あなたがたの居た世界は知りませんが、事実こっちの世界はそれらは、人が作り出した概念に過ぎないのです……」


 「クロードさん……見てきたのですよね?世界の果てを……」

 拘束されるクロードを見る。


 「システムが映し出す世界には限界がありますからね……」


 世界の中心……世界の心臓、そこで世界が作られているというのなら……


 「時間なんてものが存在しない……そんな世界の中心で……ただ、過去も未来も作り出している……そんな世界を……世界が作り出した歴史の中で、人間という概念がその世界が写す過去未来を歩き回っているだけです」


 「そんな世界の中心で、そんな過去と未来を書き換えられる存在がそれというだけです……」


 「世界の中心には……時間という概念は存在しない……だから、この世界の過去も未来も……システムが書き出している事項でしかない……だから、同じタイミングで召喚した人間を過去、未来……どこに書き込んでも、それが未来……過去でバラバラであっても、中心そこでは同じ時間の中で召喚されているのです……」


 「とは言っても……世界の中心システムが人、ひとりひとりの動きを監視している訳じゃない……人が誰かを危めた、障落ちた……そんな小さな変換かきかえは無視される……だけど、まれに大きな変換ことをやってのける様な人がいるんです」


 そう、リヴァーが俺のほうを見る。


 「なぜ……それは……貴方を選んだのでしょうね?」


 「特別っていうのなら……俺よりもフィーリアの方が……」


 仮にも……神代理という役割を果たしていたんだ……



 「それも書き換えられた……書き足されただけなのです」


 「また……会話を盗み見るようで悪いのですが……フィーリアさんが過去に召喚された、その時に不自然なものがあったと言ってましたよね?」


 「……エリード……?」


 フィーリアがその名を口にするが……



 「神聖魔力……それが人を形取った存在……」


 ぴくっとフィーリアが反応する。


 「そんな都合の良い存在が本当に過去にはじめから居たのでしょうか?」


 全部……世界が書き換えた……書き足したものだと……



 「さぁ……答え合わせと行きましょうか」


 「リヴァー?」


 レインの前に立つキツネ面にレインが不安そうに声を出す。



 黒い矢が突如、リヴァーを襲う。

 それをすばやく回避する。


 クロノが水の拘束から自力で逃れ、攻撃にでる。



 俺は何か……見誤っているのだろうか……

 黒い矢を放っては、華麗に回避するリヴァーを見ながら……



 「クロノっ……無事かっ!」


 赤紫色の少しボサボサの髪。

 体中傷だらけでボロボロのマントをなびかせた女性……


 俺たちの入ってきた入り口とは逆の入り口から現れ、

 手にする短剣で、リヴァーに斬りかかる。



 何かを見誤っている……


 役者はそろった……

 多分、《《それ》》は間違いない……


 あんな仮面ひとつで、その年月は探し人を守りたい者を見破れないほど……

 そんな姿すら、改変したとでも言うのか……


 互いに互いを試すように攻撃と回避を続けている。


 「リヴァー……」


 2対1、どこか苦しそうなキツネ面を心配するようにレインが動く。


 「だめだ……」


 俺はそんなレインの体を抱え込むように……3人から隠すように……



 何を見誤った……


 「まもらな……ければ……」


 思考は追いついていない……


 だけど……そんなものにどう……抵抗する?



 「レス……どうした?」


 レインは戸惑うように、少し照れくさそうに言う。



 「いいから……ここに居ろっ」


 俺は少し強い口調で言う。


 何がそんな……不安なんだ……



 「あら……っ」


 リヴァーは黒い矢の回避に手間取り、バランスを崩す。

 迫るミルザに水で作り出した剣で反撃するが、

 ミルザのナイフはそれを逆に華麗に弾きかえし、その身体に一撃を入れる。


 白い床を転がるように俺のそばに倒れこむ。

 すぐに起き上がろうとあげたあたまに黒い矢が突き刺さる。


 その一撃は仮面に守られるように……

 それでも、ピシリと仮面にひびがはいり割れ落ちる。


 「リヴァー!!」


 俺の身体をすり抜け、リヴァーを心配するようにレインがその身体に駆け寄る。



 「……っ!?」


 その様子に……


 「まさか……」


 その素顔に気づいたミルザに……

 連鎖するようにクロノもこちらを目を点にしおどろくように見ている。



 「リーーーーヴァっ!!」


 ミルザが叫び、リヴァーの方へと駆け寄ってくる。

 それは、彼女にとって……何年ぶりの再会なのだろうか……


 そんな彼女はリヴァーに目もくれずに……


 レインの身体を強く抱きしめた。



 世界を騙し……騙して……騙しあってきた……


 そこに真実があるなら……本物はどれだ? 

ご覧頂きありがとうございます。


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