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珈琲

 「隣国のバルナゼクの女帝?」


 リプリスが経営している喫茶店。

 店の外のパラソルを屋根とした外にいくつか用意されたテーブル席に座っている。


 そして、俺はクリアと共に、目の前のキリングとセキラの二人と会話している。



 「あぁ……前にグレイバニアに敗戦した国だ……そこの王、刀剣の王と呼ばれた男はその終戦の日に処刑されている……」


 キリングが言う。



 「その娘が国を継いで……この国に復讐しようと……?」


 俺のそんな返しに……



 「わからないが……神としての加護を失った我が国なら……刀剣最強と呼ばれる血筋の自分なら今のこの国に抵抗できると思ったのかもしれないな」


 キリングが俺にそう告げる。



 「……そして、そのバルナゼクの国の者がこのグレイバニアに忍び込んでいると聞く……この国の国王がどうなろうと、この俺の知ったことではないが……この我が庭とする国を土足で荒らす連中を許す訳にもいくまい……レス、その者を見つけたとなら俺に知らせよ、無論、その首を取り俺に差し出しても構わん……無論、お前が望むほどの褒美はくれてやろう」


 キリングはそう俺に一方的に言い、その場を立ち去る。



 「国の偵察……グレイバニアは攻め込まれちゃうのでしょうか?」


 クリアが不安そうに俺に言う。



 「さぁ……な」


 もちろん、そんなことは俺の理解できる範疇ではない。

 それでも……こんな期に……

 この国に忍び込む……


 クリアの顔を見る。


 案外……俺が考えている以上に……

 巫女という存在は大きいのだろうか……



 「スノー家の娘だな……俺たちと着てもらおうか……」


 グレイバニア最高のギルドに喧嘩を売るわけにはいかない。

 彼らが去るのを待っていたように、いかにもゴロツキのような連中に、

 ぞろぞろと囲まれている。



 「さて……」


 こいつらはどこの連中だ……

 今じゃ、巫女クリアという存在を欲しがる連中はたくさん居る。


 そんな中で、そんな俺たちの争いに巻き込まれるように、一人の女性がこの店で提供されているブラックコーヒー、カフェオレなど数々のコーヒーを並べて味比べするように堪能している。



 「邪魔だっ」


 「あ……」


 ゴロツキの一人が、そんな空気を読まずに、逃げ出すこともせず微動だにしないその女性の席に蹴りを居れ乗っていたコーヒーがバシャリとその場に倒れ零れる。



 ピンク色の髪、綺麗なその髪を後ろで縛り上げている。

 思わずそんな女性の姿を目に追う。


 悲しそうに零れる飲み物を眺めながら……



 目線をゴロツキどもに戻す。

 一人、一人はそれほど高い能力を持っているわけじゃない。


 だが、攻撃に欠ける俺と……

 未だ、その能力を存分に発揮していないクリア。


 この数の敵をどうにかできるのだろうか……



 そんな心配をしている中……



 ガシャンッと大きな音が鳴る。



 俺は自然とその音をした方、ピンク色の髪の女性を見る。



 「何故ゆえに……この我の至福の邪魔をする?」


 彼女の座る席のテーブルを蹴り飛ばした男が彼女の座る席のテーブルを叩き割るようにその掴んだ頭を叩きつける。



 「貴公はお困りか……」


 多分、その言葉は俺……クリアに向けられていて……



 「我を雇ってみぬか……」


 こちらを見ずに女は言う。



 「……悪いが、誰かを雇う金など持っていないぞ……」


 「なに……この店のコーヒーを一杯奢って頂ければそれでいい」


 そんな俺の言葉に女は簡単に答える。


 そして、こちらの答えも聞かず……懐の刀を抜く。



 クロハ達のように……何かしら刀の名前と抜刀の言葉を口にするかと思ったが…… 



 「宿せ……氷属性シヴァ……」


 銀色の刀が水色に染まっていく……



 その刀を横に一振りする。


 その周囲を氷つかせるように……

 そして周囲のゴロツキが凍り付いていく。


 そして、容赦なくその刀を凍りついたゴロツキの氷に叩き斬っていく。


 容赦なく粉々になるゴロツキ。



 「おや……殺しはご法度だったかな……」


 そう、少しだけ申し訳なさそうにこちらを見る。



 「いや……助かった」


 素直に目の前の女に感謝の言葉を送る。



 俺は、リプリスの経営する店のスタッフの側に行く。


 「コーヒー代は払う……俺にコーヒーを一杯作らせてくれないか?」


 店員の女性にそう断りを入れて、半ば強引にコーヒーを入れる。

 熱いお湯ではなく、研いだコーヒーに水を注ぎ……


 「なぁ……氷はある?」


 俺はそうスタッフに尋ね、取り出した氷をカップに入れると、

 それを3名分用意する。


 ここの商品には無かった。



 「今日みたい暑い日は……こっちの方がいいだろ」


 不思議そうに眺めている女性に俺はそれを提供する。



 「至福……至福だぁ」


 ピンク色の髪の女は嬉しそうに声をあげる。



 「美味しいです……」


 クリアも俺にそう告げる。



 「体の熱が冷めていくようだ……」


 ピンク色の髪の女性は大げさに表現しながら……



 「レス……そして、こっちがクリア……クリア=スノーだ」


 俺は、俺、そして勝手にクリアの名を彼女に語る。



 そんな言葉に、彼女の目は鋭く……表情を変える。


 多分……それは必然で……



 「サリス=アトリ……我の名前だ……そうか……」


 ゆっくりと……アイスコーヒーを味わい……立ち上がる。



 ゆっくりと……クリアの前に立つ。


 俺は予想通りという表情で……クリアは少し驚くようにサリスと名乗った女性を見上げている。



 刀剣の王の娘……その女帝を主に持つ国……

 それは……彼女のような、部下の一人は居るのだろう。


 「……我が国に……どうか力を貸して欲しい……敵対する国……愚かな事を言っている承知の上でお願いする……巫女の……貴方様の力をどうか……」


 片ひざをついて、右手の拳を地面につけ……低い姿勢で頭を下げる。



 「貴方を探していた……女帝……そんな地位を捨て、我は貴方様に願いこの頭を下げる……それに担う価値があるとは言わない……我が国を立て直す……そのために神の力をどうか……その奇跡を希望を我が国に与えてほしい」


 「そして……貴公には、我の直属の部下として……コーヒーを毎日入れて貰いたい」


 そんな一国の女帝は俺とクリアに請う。



 自ら……その頭を下げるために、敵陣に乗り込んできたというのだろうか……



 「悪いが……」


 「頼むっ!」


 そんな俺の言葉をかき消すように……



 「貴公とは敵対したくない……」


 たかだか、アイスコーヒー一杯の関係……

 それでも、彼女は……俺からの否定の言葉を否定する。



 「……悪いが……クリアには……そんな巫女うんめいを背を合わせない……だから……」


 その言葉を聞き入れられない……



 サリスはただ、本当に残念そうに立ち上がり……

 残りのアイスコーヒーをゆっくりと味わうように飲み干す。



 正直……全く反応できなかった。


 鼻先に突きつけられた刀の先。


 「有り触れたこんな脅しに屈したりはしないか?」


 悲しそうな目で俺を見つめる。



 「悪いが……」


 俺はなるべくその恐怖を悟られないようにサリスに返す。



 「なるほど……だからこそ、そう魅力的に映る訳か……」


 何かを確信するようにサリスは俺を見る。



 「噂には聞いていた……隣国に現れた冴えない転生者えいゆうの話だ……我の目的は……神の力……そのために巫女を手に入れる……そう国のために誓ったのだ……だが……」


 ゆっくりと俺の姿を眺め……



 「取り合えず……お礼を言う……至福の一杯ときを有難う」


 俺の鼻先から刀を下げる。


 イロハ……彼女と戦ったのならどちらに軍配はあがるのだろう……

 そんなくだらない思考が脳裏を横切る。



 多分……彼女の本気は今……見た以上に凶悪なのだろう。



 そして、俺は……あの理不尽な凶悪、イロハという女の力をその身を持って知っている。




 そして、そんな彼女の力を借りなければならない場面が……

 サリスと対立する未来ばめんがあるのだろうか……



 「名残惜しいな……」


 そうサリスは言いながら……

 自分のために用意したアイスコーヒー、

 俺が一口、二口、口をつけたそれを奪うように、

 躊躇うことなくそのストローを口にしながら、



 「忘れない……そして手に入れる……」


 そうそのストロー越しに流れる液体を味わいながら……



 そして、次々と出揃う強敵を前に……

 俺はただ……その運命というものに……



 「心配するな……」


 俺は、不安そうに俺を見上げているクリアに言う。



 そんな根拠の無い言葉……



 「1200キャッシュです……」


 その店舗のスタッフの女性は、俺にそうレシートを差し出す。



 「……えっ?」


 俺はそんな現実に引き戻される言葉に動揺しながらも……


 自分がこれまでに貯めたキャッシュのカードを女性に差し出した。



 


 


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