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ナンバー

 「動くなよ……っ」


 特殊部隊、ギリシャ文字でナンバリングされている女性……カイは、こちらを静かに睨みながら言う。



 「話し合おうって言ってるんだよ、わたしはっ」


 「だから、ストリングさん……話し合いなんですからぁ、駄目ですよ、今すぐ能力は解除してくださいってぇ」


 ルインがそう叫ぶように訴える。



 その性格の通り、カイと呼ばれる女ほど、ルインという男から殺意や恐怖の魔力は感じられない。

 そんな彼女と一緒にいるのだから、彼女ほどじゃないにしても、彼もまたナンバーの所有者かと思ったが……



 「あんたさ……自分がどれだけのことしたか、あんま理解していないだろ?」


 初めは誰に言ったのかと思ったが、カイの瞳が俺を見ている。



 「そこの神代理かみさまがどれだけ、この世界を拘束していたのか……」


 自分の能力いとをギュッと締めるように、その言葉の意味を強調する。



 「そこの神さまの能力は覚えているだろ……ルールの書き変え……そんな自分の能力を脅かすような能力者はその神の居る世界の外かその能力を封じられていた……それくらいにやべー奴だったんだよ、そいつに手を貸していた奴はさ」


 そして、ゆっくりとフィーリアを見る。



 「でも……なんの血迷いかそんなもん全部手放して……そんな男に負けちまって、世界を修正もどした……弱まった世界で邪神も復活して……よくねぇもんがさ……いろいろと目覚めてきてしまってるわけだ」


 たぶん……そんな彼女の瞳に写るのは、おそらくあのキツネ面。



 「……で、この話し合いの意味は……俺をただ、口で痛めつけに来たのか?」


 ぜんぶ、お前のせいだと……



 「別に……世界が元に戻っただけだ……別にあんたのせいで、世界がピンチですってわけでも、あなたのおかげでまた自由に暴れまわれますなんて感謝もしてない……あんまり、自惚れるな……元に戻っただけ……あんたが世界を変えたわけじゃない」


 「だからぁ……挑発的な発言は……駄目ですって」


 ルインがそうカイをなだめる。



 「だったら……なおさら、あんたらがこの場所まで来た訳はなんなんだよ」


 俺の目線に……カイは睨み返しながら……



 「あんたらの存在が……今後のわたしたちの敵になるのか……邪魔になるのか……見極めたかっただけさ……」


 「それで……その結果は……」


 カイの指がクイっと動く……



 「……判断するのも面倒だし……全員肉片に変えてやろうかぁ」


 その言葉と同時にルーセウスのサーベルが素早く動くが……


 部屋に張り巡らされる糸の一本も切り裂くことすら適わず、少しずつ狭まる糸に身動きが取れなくなる。


 「くっ……」


 ゆっくりと狭まる糸……

 そんな目で捉えることがやっとの細い糸……


 ゆっくりと体に皮膚に食い込めば……

 斬撃は衝撃に変換される。


 それでも、その激痛は……

 そして、やがてはその魔力を断ち切られてしまえば、

 現世ほんらいの仕組みの通り、その身体はバラバラになるだろう。



 ひんやりとする……

 糸を通し、そんな冷気が漂うように……



 「騒がしくて、ゆっくり休めもせん」


 客間……明かりも点けずに談話していた。

 そんな空間で一人壁を背に目を瞑っていた女は……


 冷気……冷たい雫が糸を伝っている。


 「飛べっ」


 アストリアが差し出した右手から魔槍が作り出されると、

 一気にカイ目掛け飛ぶ。


 「ちっ……」


 カイは小さく舌打ちすると、部屋に巡らせていた糸を回収すると、

 自分の目の前で綾取りのように細かいネットを作り出す。


 そのネットの中にかきけされるように、魔槍が消滅する。



 「ストリングさん……ここ他所様の家ですよぉ……駄目ですって」


 ネット状の繋ぎ合わせた糸を崩し、器用に次の攻撃の一手に繋げようとしているカイにルインが言う。



 「邪魔するなよ……喧嘩を売ってきたのは向こうだよっ」


 引き寄せた糸が両腕にまとわりつき、手甲のように構える。



 アストリアの放つ、拳や蹴りを受け止めながら……


 再び、手甲を崩し、ほどけた糸を束ねるように操り、



 「くっ……」


 その糸にアストリアの右手が吊り上げられるように強制的に手をあげるように、

 カイの糸がアストリアの右腕に巻き付いている。


 「フッ」


 カイが小さく笑い、クイっと指に力を込める。



 「がっ……」


 さすがのアストリアもその激痛に苦痛の顔をつくる。



 「意外と魔力がんじょうだなぁ……でも……いつまで持つか……その右手貰おうか」


 不適にカイは笑い力を込めようとする……



 「それ以上は……やめろ」


 俺は……俺も、それ以上をするつもりなら……覚悟を決める。



 カイはそんな俺の脅しにも引くことなく……むしろ景気つくように……



 「やめてって……僕も何度もそう言ってる……もう一度言うよ……やめろ」


 ルインが静かにカイにそう告げる。



 「ちっ……」


 カイが再度舌打ちして、能力を解除する。



 「ほんと、ごめんなさい……ストリングさんも謝ってよ、ほんとにもぅ」


 ぷんぷんとルインが可愛らしく怒っている。



 アストリアが自由になった右手を再び、カイに振り上げるが……



 「っ!?」


 透明な壁に遮られる。


 「なんのつもりだ、小僧っ」


 アストリアが俺を睨む。



 「よかったぁ……そっちにも話のわかってくれる人が居てくれてぇ」


 ルインがゆっくりと俺に笑みを浮かべる。どこか不気味にすら見える。



 たぶん……ここで今……彼女……そして彼に挑んでいれば……

 ……俺たちは……



 「ほら、いきますよぉ、ストリングさぁん、挨拶は済みました……敵か味方かは、また今度の話ですよ……」


 カイの腕を強引に掴み、ルインが屋敷の外へと向かう。



 「助かりました……えっとぉ、レスさん」


 去り際にルインが振り返る……


 「……あなたと……対決できる日を楽しみにしています」


 楽しそうにルインが笑みを向ける。



 「あんたは……」


 俺は、そんな無害そうな白髪の男に問う……



 「僕は………」



 ・


 ・


 ・



 翌日……俺は、自分の担任フレアのもとへ訪れる。



 「ストリング……カイ……か……」


 「あいつまでもが動き出したか……」


 学園の屋上、タバコのようなものを口に含みながらフレアが言う。



 「そんな……やばい奴なのか?」


 そんな俺の問い、天に向かい煙を吐きながら……


 「実際に、あいつの能力は見たのだろ……私にはあいつより遥かに高い一撃の破壊力はある……が、あの糸に捕らえられれば、私も敵わないだろうな……そして、そんな私の破壊力に匹敵する糸による破壊すら可能とする……」


 ゆっくりとその女の危険性を告げる。



 「……特殊部隊のナンバリングに置いて……厄介で危険な人物なのは間違いない……まぁ、私は特殊部隊の裏切り者になるときに入ったとされる、ラムダって奴も相当にやばい奴らしかったけどな」


 俺もフレアもまさかその女が……俺のクラスメイトの母で、ついこの間、この学園の教師として雇われていることを知らない。



 「そんじゃ……まぁ……あのルインとかいう男は……やはりそこまで危険視するほどでもなかったか……」


 一瞬覚えた……感じた……アストリアを止めなければ……と。



 「はぁ……?」


 戸惑うように、フレアはタバコのようなものをぽろりと地面に落とし、こちらを見る。


 「あいつにも出会ったのか……」


 「あぁ……」


 対戦を楽しみにしてるまで……言われたな。



 「私は今……オメガ……あいつにだけは関わるなと忠告するつもりだったのだぞ」


 その言葉に……


 あの日……ストリング、カイをつれかえる、ルインという白髪の男に……



 ・ ・ ・




 「助かりました……えっとぉ、レスさん」


 去り際にルインが振り返る……


 「……あなたと……対決できる日を楽しみにしています」


 楽しそうにルインが笑みを向ける。



 「あんたは……」


 俺は、そんな無害そうな白髪の男に問う……



 「僕は………ルイン……オメガ=ルインと呼ばれています」


 彼の奥底にある何かを押し殺すように……

 そんな、おどけた笑みは、どこか不気味で……



 「離せっ……離せってルイン、一人で歩ける、引っ張るな」


 握られた腕を振り解こうと、ブンブンとカイが腕を上下に揺するが、ルインは許さない。


 「駄目ですよぉ……今日のストリングさんは信用できませんから、また……すぐ、他の誰かに喧嘩をふっかけかねませんからねぇ」


 そんな平和的な会話がゆっくりと遠ざかっていく。



 ゆっくりと……今日という日を整理する。


 問題となる事はとりあえず二つ……



 キツネ面の存在……


 昨日まで……ただの女の子だった……彼女……


 それが……神代理が不在となったことで……


 だったら、フィーリアを……ずっと神代理ぎせいにしていればよかったか……


 たぶん……どんな答えを用いても……


 俺という今日までの行いを正当化するだけの言い訳だ。



 二つ目……


 それにより、クリアが……巫女とやらに選抜されるかもしれない。


 それが意味するところは、まだよく理解できないが……



 それをよく思わない、また彼女のためにもそうさせないという人間が居る。



 そんな中で……今、俺がするべき行動は……



 ゆっくりと目を瞑る。


 「大丈夫……いつも通り笑っていろ」


 不安そうに俺の顔を見ているクリアに告げる。



 「いつも通り……学園生活を送る……そうだな、そん時はあんたも一緒だ」


 俺はフィーリアを見る。



 「あら、それは……随分と楽しそうですね」


 フィーリアは俺とクリアを見て笑う。



 「……学生生活半ばで、こんな世界に飛ばされてしまいましたから……あなたたちとクラスメイトとして、学生に戻れるってのは中々に楽しそう……ですね」


 フィーリアはそうさびしそうに笑う。 



 

ご覧頂きありがとうございます。


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