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ミルザ

 俺はその場にお姫様抱っこで抱えていたクリアを丁寧に地面に立たせる。

 少し残念そうな表情で黙ってクリアが従う。



 「で……その過去改変が失敗した腹いせを俺にしに来た訳か?」


 だったら犠牲ひょうてきは俺だけでいい……



 「なるほど……やっぱりレス君、君が余計な事をしてくれたのか……でもね、事はそう簡単じゃないんだよ……」


 眠そうな目を再びこちらに向ける。



 「神が存在していた……だから大人しかった神聖教会のじじぃ達が再び騒ぎ出す……俺達、災いの存在……世界の理の禁忌に触れた俺たちを許しはしないだろう……そして、クリアは巫女としての使命を取り戻す……そして、次に巫女に選ばれるのはクリアだ……」


 「あんな連中にクリアは渡さない……リーヴァを渡さない……彼女も守る……だから、もう一度問う……手を貸してはくれないか?」


 再びクロノが俺を見る。



 「人の事をここまで追い詰めておいてよく言うよな……」


 俺は信用できないというように目線と言葉を返す。



 そして……ぞわりという恐怖に近い震えが襲う。

 恐らく、そこに居た全員が同じように体を震わせる。



 ゆっくりと……目線をスノー邸のいりぐちに向ける。



 ボロボロの深緑色のマント……

 長く伸びた、赤紫色の髪……

 しばらく手入れがされていないと思われるそれは、

 少しボリュームが有りボサボサで……


 どれだけの戦場を……死線を潜り抜けてきたのか……


 大人びた女性……

 20代中盤……後半くらいだろうか……

 大人の魅力を持ち、そしてその危険な雌雹を思わせる容姿。


 そんな女性の綺麗な肌には、戦場の傷跡がいくつもある。


 リスカと対峙したときとは、また違った恐怖ききを感知する。



 「……ミルザ……ミルザ=パリング……」


 目を見開くようにマシロがその女の名を呼ぶ。



 「……この地を捨てて、世界の果てに逃げたはずでは……」


 その女に問うようにマシロが呟く。



 一言も語らず門の中を潜る女に……



 「させねぇぞってっ!!」


 ディアスの雷撃がミルザと呼ばれた女に飛ぶ。


 ミルザは回避することも歩みも緩めることもせずこちらに近寄りながら、手にした短い短剣……それを目の前で振るう。


 その短剣の剣先でその雷撃を払い流すように……瞬間、その場から姿を消すように……一瞬でディアスの前に現れると……


 反撃に繰り出されたミルザの斬撃しょうげきで吹き飛ばされる。



 「ならばっ!!」


 冷たい空気がアストリアの周囲を取り巻く。

 地面を蹴り上げたアストリアの居た場所が凍りつくように……


 ミルザの目の前に迫ったアストリアが拳と蹴りを数発繰り出す。


 その数発を、少ない動作で回避しながら、それでもミルザの顔面に迫った蹴りを、

 振り上げた右手で受け止める。


 「小癪な……」


 アストリアが即座に右足をミルザの右手から逃れると、

 少し後退するが、誰の目にも囚われることの無い速度で、再びミルザの真横に接近する。


 右手をミルザの胸のあたりにあてる。



 「魔槍……零距離……」


 そんな……俺がこの異世界でみてきた中で最強に近い技。



 「なっ……」


 その光景にアストリアでもない、俺が声を漏らす。



 アストリアの右手とミルザの体の間にはミルザが手にする短剣がその間に入っている……



 アストリアの魔力の発動に合わせ、その短剣でその魔槍を払い流すように……


 そして、再び繰り出される短剣の一撃の斬撃しょうげきが、アストリアを吹き飛ばす。



 アストリアを吹き飛ばし、ミルザはその場で次の行き場を探すように一度足を止める。




 そして、突如真横の空間が歪むようにゲートを潜るように現れる女性。



 「フィーリア?」


 俺はその名を思わず呼ぶ。



 「残念ながら……今の私に……かつての能力などほとんどがありませんが……それでも……その結末に……努力をけじめを……付けましょう」


 ミルザの標的ひとみはそちらに向く。

 同時にクロノの向けた弓の矢がフィーリアを狙う。


 が……俺の結界でその一撃を防ぐ。



 「相変わらず……お節介が好きですね」


 そんなフィーリアの言葉と共に一人の男が素早くクロノの前に移動し、

 サーベルを突き出す。



 「……フィーリア様にはこの私が指一本触れさせないっ」


 金髪の男……ルーセウスの一撃をクロノも少ない動きひとつで回避している。



 「全く……複雑に因果というものは絡みあうものだね……」


 迷惑そうに薄っすらと笑みを浮かべながらクロノはルーセウスを見る。



 そんなルーセウスは俺の横に位置を取るように構える。



 ゆっくりと……嫌悪そうな瞳を俺に向ける。


 無理も無い、彼が溺愛し全力の忠誠心を注ぐ神代理フィーリアを貶めたおとこが横に居るのだ。


 俺は気まずそうに目線を反らし、取りあえずの敵を見る。



 そんな、気まずい目線を送ったルーセウスも、同じ敵を見直す。



 そして、素早く突き出されるサーベルの動きを、

 少ない動きで、ミルザはすべて回避し、

 再度繰り出した一撃を……短剣で受け流す。


 反撃に繰り出される一撃を……

 俺の結界で防いでいく。



 そして、そんな隙を狙うようにフィーリアを狙ったクロノの矢を俺は両手に結界をまきつけ手を交差するようにその攻撃を無効化する。



 「用済みになれば……即排除か……案外、薄情なやつらだな」


 俺はクロノとミルザに向けて言う。



 冷たい目線をクロノとミルザが向ける中で……



 「私が神代理その役目を果たさなかったから……です」


 まるで他人事のように笑うようにフィーリアが言う。



 「どういう……意味だ?」


 俺は頭は動かさず、瞳だけを真後ろのフィーリアに向ける。



 「……遊戯のルールを覚えていますか?」


 真後ろで、冷たく笑うフィーリアが俺に言う。



 そして、それに無言の俺に……



 「……神代理わたしが勝者として有利なルール……」


 「そして……敗者となれば、勝者に……願いを、そして転生者には、その神代理としての器そのものを受け渡す……私はそのどちらも果たさなかった……」


 そう、フィーリアがクロノとミルザを見る。



 そのどちらかを継続していれば、神代理を継続していれば……伝承していれば……


 過去改変せかいは……維持されていた……



 「……フィーリア様には指一本触れさせない……」


 ルーセウスはそう繰り返すが……



 「神としての器を失った放棄した……そんな彼女に……まだ、その忠誠を誓うのかい?」


 そんなクロノの言葉に……



 「そうですね……ルーセウス……貴方にも謝らなければ……私は、神聖教会あなたたちを私の役目を裏切ったのです…… 」


 フィーリアはルーセウスにそう告げる。



 「しかし……フィーリア様……私はっ」


 何かの使命を全うするように……

 そんな絶対なる忠誠心を……



 「……役目を失った私に……その忠誠を誓うと言ってくれるのなら……ルーセウス……それならば……今……あなたが取るべき行動は……わかってくれますか?」


 そんなフィーリアの言葉ねがいを……



 ルーセウスは目を瞑り……少しだけ考え……


 再び俺の方を向く。



 少しだけ身構えるが……



 ルーセウスは俺の前に立ちひざをついて、頭を下げる。

 右手拳を地面に突きつけ……



 「私の名は……ルーセウス……ルーセウス=フェイスフル……これまでの無礼をここでお詫びさせて頂きます……そして、今より……私が……英雄みな登庸とうよう者様の貴方様の……剣と盾となりましょう」


 ルーセウスが俺にそう忠実の言葉を交わす。



 そして……再び……敵に向き直る。




 「貴方への忠誠心こそ……私の力になる……」


 ルーセウスはサーベルを構える。



 「さて……どうするの……ミルザ?」


 クロノが、ミルザにそう確認を取るように言葉にする。



 「そうだな……」


 ミルザは少し考えるように天を眺めながら……



 「ここは、一度引くとしようか……クロノ」


 その言葉と同時に、ミルザとクロノの姿を見失う。




 「取りあえずは……助かった……のか」


 ゆっくりと周囲を見渡す。



 そして……


 情報を少し整理しよう……



 俺は周りを見渡して……そう心で呟く。


ご覧頂きありがとうございます。


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