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神戦(4)

 邪神との決着がつく……


 エリードから水晶が砕け散るように……

 魔力が消滅する。



 そして、俺、ティセ、ライトと……フィーリアのルーセウスは自然に睨み合うように見つめあう。



 「……いい加減、終わらせてください」


 フィーリアがそう、何かを願うように……



 「……貴方様には誰一人と……」


 それを否定するようにルーセウスがフラフラの身体でその前を遮る。



 ただ……素早く、そんな彼の素質……

 そんな身体神経を持ってしても……


 勇者の瞳はそれを追い、聖者の剣は俺に向かい突き出したサーベルを弾き落とす。



 「正義に英雄……実に万人受けする言葉ですね……」


 悔しそうにこちらを睨むルーセウスの後ろからフィーリアが言う。



 「でも……それはただ、無性に……不幸な誰かを救うための存在であっていい者なのでしょうか……」


 「努力をして得た幸福てがらです……努力なにもせず、得られるものではないのです……」


 ただ……そんな信念に縛られるように……



 「世界は表裏一体……誰かの受け売りだけどさ……努力して勝利した人間の裏には、努力をしたかはわからないけど、それに比例するだけの敗者がいるんだ……」


 俺はその言葉にゆっくりと返す。



 「……別に無駄に……そんな不幸はいしゃの全員を助けたいって言うんじゃない……それでも、自分の関係のある誰かがそう不幸たすけを叫ぶのなら……無視はできないだろ……それが俺の正義こたえだ……」


 「でも……それは、そんな助けを得られずに、ただひたすらに努力を続けた人間は報われない……そんな正義は、努力した人間を不幸にする……それが正義だと言うのなら……自分の不幸にただ、一人で立ち向かい、努力を続けた誰かは悪なのでしょうか?」


 「現世べつのばしょだれかの戯言だけどよ……そして、ちょっと例えが中二病くさいが……消費魔力10でその努力を成せる奴が居て……でも、その隣には魔力を100消費しても努力おなじことができねぇ奴も居るんだよ……」


 俺は、少し悲しそうにフィーリアを見る。



 「わかってくれとは言わないけどさ……理解してくれ……同じ土俵でどうしても理解し合えない惨めな奴も居て……必死に不幸どりょくを叫ぶだけ……それがずるだとしてもさ……努力を惜しまない人間に送るにはおこがましい言葉だろうけど……同じくらいに苦しんでるんだ」


 「わかりませんが、わかりました……決着をつけましょう」


 「……そうだな……でも……決着をつけるべき相手は俺じゃないだろ」


 そんな俺の言葉に少しフィーリアは不快そうに顔を歪ませる。



 そんな視線を無視して俺は、右手を目の前にかざすと……



 体内に宿っていた神域魔力が開放される。



 そして、そんな存在ひとの形をつくりあげていく。



 そんな久々の再開に緊張するように、

 男は、遊戯の盤を右脇に挟めながら……目線を右下に反らしながら……



 「じゃぁ……決着をつけようか……」


 「なに……偉そうに……ずっとあなたの全敗だったじゃない」


 盤を広げ座りこんだ、男の前にフィーリアは同じように座る。



 そんな最初から決まった記憶けつまつを繰り返す。



 そんな、俺たちはただそんな決着を見守るように見ている。



 遊戯のルールの知らない俺でも……どちらが有利なのかはわかる。


 次々と駒が減る男はただ、それでも楽しそうに笑い……


 不機嫌そうに駒を取る、女もただ、楽しむように笑う。



 「……努力したものが幸福むくわれる……だからそうじゃない者が不幸になる……」


 フィーリアが男の王将と思われる駒を追い詰めながら言う。



 「そうか……そうだね……」


 そんな言葉を男はただ受け止めながら……



 後、2手、後……1手で勝負はつく……

 そんなフィーリアの手の動きは躊躇うように遅くなり……


 伸ばした手を……握手を求めるように止める……


 男は黙ってその手をとるように握手をする……



 「わっ?」


 その手をフィーリアは自分のほうに引き寄せるように引っ張る。

 さすがに予想していなかったように男は戸惑うように前のめりに身体を倒す。


 その表紙でひっくり返る盤面を……瞳が素早く追うように、


 「……大丈夫」


 すぐ直すからとその手を伸ばそうとするが……

 それを許さぬようにその手を奪ったまま……


 フィーリアはそんな彼の身体を奪い取る。



 「……もう……いいの」


 弱々しく……フィーリアはその言葉を男に告げる。



 「……私の負け……やっぱり私は貴方には勝てない……」


 悔しそうに……笑う。

 ずっと勝ち続けた女はただ……



 「……私は不幸じゃない……そう私は努力あらがい続けた……」


 「……だから、不幸にならないためにそう名乗らないためにね……私は頑張ってきたの……」



 「うん……」


 男はそんな女を、その一言で受け止める……。



 「だから……ね……今、この瞬間……私が不幸じゃないのなら……私の負け……なの」


 多分、その意味はここに居る俺、他の皆にも……もしかするとこの男にすら理解ができていない……



 「……だって、私が……今……不幸じゃないのはね……ずっと、ずっとね……そうならないように……(貴方が)……守ってくれていた……」


 「だから……ありがとう……今の私には今日までの自分の努力を賞賛する言葉じゃなくて……貴方への感謝はいぼくの言葉……」


 驚くように目を見開き、ただ、抱きしめられる男に……



 「だから……もう……いいの……」


 その言葉だけで……男は全てを理解するように……



 「そっか……もう……いいのか……」


 抱きしまられた身体の顔を天に向け……



 「そんな不正がずっと……ずっと成立していた……」


 「ひどいなぁ……言ったはずなのになぁ……僕は世界がどうなろうと知ったことないんだ……僕はただ……君を救えたのなら……それで幸福なんだ……」


 「お互い様……ちゃんと……言葉にしてくれないと……伝わっても……女は理解こうふくにはできないんだよ……」


 そんなフィーリアのさびしそうな笑顔に……



 「告白ってのは中々、どうして……難しいものだね……」


 寂しそうに男も笑いながら……


 「……この言葉が君を不幸にしてしまうかもしれない……それでも……やっぱり……貴方フィーリアを愛して……る」


 その言葉に……ただ嬉しそうに神代理は頷く。



 そんな全ての権利を放棄するように……

 フィーリアの水晶が上空で砕け散り……


 見えない衝撃が世界に広がるように……


 そんな世界から損失された魔力が復活していく。



 神代理との決着が……つく。


 この異世界に残された問題は知らない……



 それでも……今は……


 一つの決着に……そんな勝利こうふくの喜びを分かち合おう。



 

ご覧頂きありがとうございます。


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