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邪神

 黒い瘴気が俺の身体を入り込む。


 体中の細胞が破壊されるような苦しみと……

 激しい怒りのような感情が一気に張り込んできて……


 それでも……そんな中に……

 誰かの記憶ねがいのようなものを見つける……



 それは俺を利用し……そんな俺はそれを利用する。



 神域魔力……そんなものにあてられ、俺の髪の色はエメラルド色に変色している。



 先ほど、俺がエリードに足蹴にされ、地面に頭をつけていたのと同様に、

 俺がエリードの頭上に作り出した結界が地面に振り下ろす。

 その結界はエリードの身体を押しつぶすように、結界と地面に挟まれるように、

 エリードが地面に這いつくばっている。



 「くそっ……くそ、くそがっ!!」


 怒り狂うようにエリードがそんな言葉を繰り返している。



 ゆらり、ゆらりと蜃気楼のようなものが、エリードの周辺を現れ……

 目に見えない何かの力が……俺に向かって飛んでくる。



 右手をかざし、結界を作る。


 その数多の見えない攻撃は俺の結界に遮られる。



 「あんたら、みたいな人間が……そこまで必死に神になってまで何を手に入れたいのかわからねぇーけどさ……周りの迷惑も顧みずにただ、自分の幸福もくてきだけのものだって言うのなら……抗うさ」


 継続的に送られる攻撃を創り出した結界で防ぎ続けながら……

 その結界を前方に飛ばすように、エリードに向けて飛ばす。


 エリードが必死に繰り出す攻撃を無力化しながら結界がエリードの目の前まで飛ぶ。

 そして……結界はエリードの身体をそのまま押し飛ばすように前進を続ける。



 「くっ……」


 エリードがその結界の壁を両手を押し止めるように突き出すが……

 地面につく両足がひきづられるように、ずるずると後退を続ける。



 「がっ……」


 真っ白な壁と結界の壁にその身体を押しつぶされるように、

 白い壁を破壊し、身体を埋め込むような形で、ようやく結界が消滅する。



 その衝撃で、エリードは軽い吐血をしながら、

 地面に倒れそうな身体を、たちひざを着き踏みとどまる。



 「ふふふ、ははははっ……いきがるなよっ……邪神として……今日まで僕は長い年月をただ……ひたすらに耐えてきた……フィーリア、お前の今いる場所に僕が立つためにねぇ……その程度、神域魔力ぼくらに近づいただけでさっ」


 灰色の紙が白髪に変色する。

 同時に黒い翼のようなものが背中を突き破るように生える。


 そして、そんなエリードの身体の一部というように、周囲から漆黒の触手のようなものが現れる。



 「……なかなかに邪神ばけものだよ、あんた……」


 俺はそんな皮肉込めて目の前の男に言う。



 数多の多数の方向からの攻撃……

 それらを全て神域のけっかいをあらゆる場所に発生させ防ぐが……



 「どうした……防ぐだけで精一杯か?」


 さっきのように結界で攻撃を無力化したうえにそんな結界を利用し反撃こうげきに転じる余裕はない……


 「……まったく、もう少しくらいいきがらせろよっ」


 俺はそう吐き捨て、創り出した結界の数々を地面に突き落とす。

 薄く創り出された壁は、まるで薄い刃物のように、触手の数々を斬りおとしていく。



 「なっ……」


 再び目を見開き驚いた顔をするエリードだが……


 すぐに白い歯を見せるようにこちらを見下すように笑みを浮かべ……



 すぐに再生された黒い触手が俺を貫くために俺に向かい伸びてくる。



 「なるほど……」


 俺は、無駄に冷静を装うように再び創り出す結界でそれの防御に徹する。



 「……強がるなよ、泣いて媚いてみろよ……」


 その悪魔くろの翼をはばたかせるように、俺の前に現れたエリードの拳が俺をとらえる。


 まともにその一撃をもらうような形で後方に吹き飛ばされるが、

 その神域魔力を前進にめぐらせ、衝撃で吹き飛ばされる程度の攻撃を受ける。



 「……てめぇの力など所詮……防御その程度だろうが……僕に勝てるわけがねぇんだよっ」


 再び触手が俺めがけ伸びてくる。



 「……確かに……俺程度で勝てると思ってないけどな……初めから俺は誰かの英雄ちからにすがるだけだ……そんな英雄のためになれる何かをするだけだよ」


 「……だから……任せた」



 そんな俺の言葉と同時に……俺のはった結界を突き破るように現れる英雄ゆうしゃ


 「……任されたっ」



 ライトは……結界を通り抜けるように突き破り、そんな結界のエメラルド色の衣を前進に被り、そんなライトに伸びる触手を結界の衣が弾いていく。


 再びライトの横に現れた結界の壁にライトが右手を突き入れる。



 「聖者剣ライトオブハート……」


 今、彼女に許される最強の剣……



 伸びる触手を……一つ残さず斬りおとしながら、

 その刃で、エリードの黒の翼の片方を斬りおとす。



 「……くっ……くそが……調子に……乗るなよぉ」


 叫ぶエリードだが、邪神としての魔力がライトの聖者の剣の一撃で剥ぎ取られる。



 「……くそが……くそが……くそがよぉーーーっ」


 だったら……新たな魔力を……

 取り込めと……神域の力……力は弱まったとはいえ……


 フィーリアを見る。



 「えっ……」


 完全に不意をつかれたように、目を見開き驚くフィーリアの真下から黒い瘴気が大きな口を開くようにフィーリアの身体を喰らう。



 「まったく……最後の最後まで……迷惑な神様だよ」


 いつの間にか現れたセティが……フィーリアと位置を入れ替えるように、

 そのセティの身体が、漆黒の闇に食われる。



 「セティっ!!」


 思わず、彼女の名前を叫ぶ。



 同時に彼女を取り囲んだ黒い障壁が激しい爆発を起こす。



 「あら……少年、もしかしておねーさんのこと心配しちゃった?」


 自らの身体を犠牲にするように大爆発を起こして、額から血を流すようにボロボロの身体でセティが現れる。


 「……私ってば食っても美味しくないまずさだけは自身があるのよ……で、何がどうなってんだ……邪神あんた、誰?」


 確か、自分はフィーリアと決着をつけるはずだったが……



 「まぁ……いいかぁ……少年、私にもさ、貸してよそれ……」


 セティは子供が悪い遊び道具を見つけたように笑い、ライト同様に俺の結界に右手を突き入れる。



 「どいつも……こいつも……ゴミが僕の邪魔をするなよっ」


 黒い触手がセティへ伸びるが……透明な結界がそれを防ぐ。



 「相変わらず……少年、君の防御ちからは安心できるよ」


 そう……不適にエリードを見つめ……



 「目を離すなよ……もう一匹の邪神かみさん……」


 セティは、右手の親指と中指を擦り合わせるようにパチンと音を鳴らす。



 そんな言葉に不快感を覚えながらも、言葉とおりその瞳はセティを見ている。

 たった一度、瞬きをした。


 その瞬間……視界の上下が入れ替わるように……


 「なんだ……何がどうなって……」


 「……真っ白な正方形な部屋せかい……これほど、人間を錯覚させられる空間はないよ……」


 セティは不適に笑みを浮かべながら……



 「幻覚じゃないよ……現実トラップだ」


 その言葉に初めて身体がその現実を把握するように天井から地面に落ちる。



 だが、その程度の高さから落ちることなどたいしたことはない……

 すぐに体制を立て直し、黒い触手を再びセティへと向ける。



 「……しっかりと見ろよ、そう言ったはずだけど……で、もっとその視覚を疑いなよ……あんたはとっくに私の幻覚トラップの中だよ」


 その言葉に従うように目を凝らす……するとセティに伸ばしたはずの触手が自分の目の前にせまっている。


 その触手のひとつが自分の腹部に突き刺さる。



 神域の魔力……邪神とされるその漆黒の瘴気は……猛毒となる魔力で……



 「あ……う……あぁ」


 酷い憎悪と恐怖が身体を支配し、猛毒による酷い激痛が身体を襲う。



 「……安心しろ、そいつは幻覚だ……、まぁ、こっから先の人生が邪神あんたにあるのなら……喧嘩を売る英雄あいては選べよ……少年そいつの相手はあんたごときには荷が重い」


 セティが自分の創り出す歪みの中に姿を消す。


 俺が一時的に得た神域の力の一部をその右手に宿し、セティがエリードの背後を取る。


 そして、そんな得た神域魔力ちからをただ、力任せにその右手で残った翼を掴み取り、ひきちぎる様に毟り取る。



 「あーーーーっ」


 土下座をするような姿勢で苦しむエリードの前に、俺は歩み寄る。



 「確かに……俺一人では、神域……そんな力をてにしてもあんたには勝てなかった……だけど、俺は……一対一で戦おうとか、そんなフェアな精神は持ち合わせてないんだ……俺には……俺では成せ得ない……英雄かのじょたちが居る……えばってかっこつけるような台詞じゃないけどな……」


 俺はそんな苦しむエリードを見下ろしながら……



 「レス……ならば……私を頼れ……私は勇者で有り、女で有り……それで居て、お前のための英雄つるぎだ……」


 聖者の剣がエリードを斬りつける。

 斬撃に変換よる衝撃が、真っ白な壁に大穴を空けるように、エリードの身体が突き刺さり……白目を向き地面に落ちる。



 「……ぼく……が……」


 この国のおうに……なるんだ……


 そんな儚いエリード野望ゆめは崩れ落ちる。

ご覧頂きありがとうございます。


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