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遊戯

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 「……幸福は努力……不幸は放棄……だったけ」


 本日、すでにその遊戯で5連敗を更新している青年セシルは、

 いつものように、王者のような座り方で、すでに敗北が決まったような状況の中、

 その王将コマを取られるまでは、敗北を認めないように、勝負を続行する。



 「無駄が……嫌いなの……子供だれかが不幸を語り助けを求め……親が周りがそれを助けたとして……そんな不幸の主張など何の自分のためにならない……それならただ、自分ひとりで努力してそれを攻略する努力する方がずっと自分のためになる……」


 容赦なく戦況はセシルの不利になっていく。



 「なるほどね……」


 セシルはゆっくりとその瞳を閉じながら……


 「……ねぇ、フィーリアちゃんはさ……こんな……そんな世界に、神が居るのなら……もしそんな世界のフィーリアちゃんが神となるのなら……そんな君はどんな力を持っているのだろう?」


 そう、ゆっくりと自分の駒を進める。



 フィーリアは、そんなセシルが駒を進める盤面に目線を落とし……

 そんな中でその話を完結させるように……



 「私が召喚されたように……別世界の誰かを召喚したり……遊戯せかいのルールを変更はかいしてしまったり……?」


 そう、セシルの王将を追い詰めながら言う。



 セシルの番……駒を進めるために突き出したと思った右手が、

 フィーリアの前に差し出される。



 「握手……しようか……」


 「……なんで?」


 当然の疑問しつもんを投げる。



 「なんで……か……そうだね、ちょっとした契約かな……これまでの遊戯の勝敗……その賭けのツケを払うとするのならさ……」


 そんな言葉に……私はセシルの顔を見ると、そんな瞳と長い時間を共にしているそんな彼と、改めて目線が合うことに少しだけ緊張する。


 咄嗟に差し出した私の右手と彼の右手が合わさり、思わず頬を赤らめ目線を反らしてしまう。


 セシルはにっと、白い歯を見せるように笑い……



 「フィーリアちゃんの言う……不幸ことばにそんな僕が……その理由どりょくをできるというのならさ……そんな……力になりたいんだ」


 バンッと開かれる鉄の柵の扉の音に……

 思わず、二人はそんな誓いの握手を見られまいとその手を離す。



 「隣国との戦争だ……」


 灰色の髪……エリードは地べたに座りながら遊戯をする私たちを立ったまま見下すように見下ろしながら……


 「おまえには、神として……戦場に繰り出し、いかにも、セシルの力を駆使したように、戦場をその神の力で容赦なく完膚なきほどに制覇したように振舞ってもらう……」


 

 「ダサい……奴ら……」


 ぼそりと呟く私の言葉に、エリードは嫌悪の感情を出し私を見下ろす。



 「立場を弁えているのか……」


 自分の置かれている立場を理解しているのかと、エリードは私を見る。



 「自分の弱さを……そんな弱さを克服する努力を放棄して……私や、彼にその責任を押し付けて……そんな不幸を救いを強制しているだけ……」


 私の瞳は気がつくとそんなエリードの姿を冷たく睨み付けている。



 「強がるなよ、自惚れるなよ……女、貴様を黙らせることなど他愛もない」


 そう、私の言葉にエリードは返す。



 「……大丈夫」


 セシルは盤の駒を進めながら……


 「エリード……言うことを聞くよ……」


 その一手は、彼の初めての勝利を導いていたかもしれない……

 それでも、その日の遊戯はその一手で中断しゅうりょうを余儀なくされる。



 「前にも……忠告いった……」


 「(彼女に何かすれば……)ただでは……置かない」


 ゆっくりとセシルの瞳がエリードを睨み付ける。



 「あなたを巻き込まない……私一人でいい……それくらいの努力は彼らがするべきだ」


 私はエリードを睨み付け、そんな彼の能力、犠牲を払う必要ないと告げる。



 「不幸は……放棄、幸福は……努力」


 セシルはそう再び言葉を口にする。



 「不幸の主張は……努力の放棄……でもさ、そんな不幸を主張するだれかを救いたいと思うだれかも居るんだ……だからさ、そんな不幸ことばを聞かせてよ……」


 ゆっくりとセシルの瞳は私を見る。



 「君の言葉に一つ……否定ていこうするのならさ……幸福と不幸に理由があるのか……どうかだと思うんだ……」


 「幸福を得るための努力には……それだけで十分に理由が存在している、不幸による放棄にはそれは存在しない……」


 セシルはそう言葉にしながら……



 「でも……そんな貴方だれかの不幸に救いを望むのなら……だれかはそんな努力に比例する犠牲を望んだとして……それは努力りゆうにはならないのかな……」


 「エリード……いいよ、その犠牲ことばを聞き入れる……」


 「……だからね、フィーリアちゃん、さっさと終わらせて続きをしよう……僕が君に一勝を勝ち取る……君の嫌う不正を無しでね……だから失いたくない……そんな僕の我侭に……こんな能力が僕の望みにだれかの助けになるのならさ……いいよ……それで……」


 そんな、不幸を犠牲を受け入れるように……


 私と彼は……エリードの後ろに続き、戦場へと足を運んだ。




 ・



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 ・




 「……癪ではあるが……この戦況を覆すには、お前が言った言葉に従うしかないのかもしれないな……」


 キリングがフィーリアを見ながら、俺に言う。



 「……己を放棄するなど……これまで生きた中で始めての屈辱だ……」


 キリングは自分に言い聞かせるように……



 その隣でライトはそんな神の力で制御される身体を懸命に動かし、


 同様に、従うルーセウスの身体さえも制御している重力化の中、


 二人は許される身体を動かし、刃と刃をぶつけ合う。



 これまでの都合おこない努力いみを成せ……



 「俺は……勇者ライトを……俺の周りの英雄かのじょたちに……意味を与えたいだけだよ……」


 フィーリアにそう抵抗ことばをする。



 「それが、俺のただの傲慢でもただの無駄の行為でも……それが俺の努力いきざまだ……」


 そうフィーリアを見る。



 「せいぜい……努力ていこうしてください……努力しょうめいして下さい……私に……遊戯に……敗北させてください」


 敗北をしらない神は……そんな過去に……敗北を望むように……

ご覧頂きありがとうございます。


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