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恋心

 「ピタッ!!」


 振り下ろされる両刃の斧に右手をかざし、

 その言葉まりょくを使用するが……



 「なんの真似?」


 ソルテの右手は容赦なくオトネの身体に振り下ろされる。



 「なんの真似?」


 再び繰り返されるソルテの言葉。

 そんなソルテが振り下ろされた両刃の斧とオトネの身体の間には、

 リリエットの身体が有り、そんなオトネの身体を両刃の斧から守るように、

 その刃を自らの右腕で遮っている。



 その強い斬撃は衝撃に変換され、激しい激痛がリリエットの右腕に伝わる。



 オトネの能力、その擬音ことば魔力化ぐげんかする能力……


 もちろん、その具現、支配が行き届くのはオトネの魔力で支配できる範囲。

 そして、そのオトネの桁外れの魔力は大抵のものを支配そうしてきた。


 それでも、神域それを支配することは適わない。



 「大丈夫……?」


 神域……そんな神器ぶきを右腕ひとつで防ぐ女に、オトネが不安そうに尋ねる。



 「うん、大丈夫……ありがと、幼女オトネちゃんは心配してくれるんだね」


 そんな意味深な言葉の意味はオトネには理解できない。



 「誰かの女性しんぱい対象あつかいになるなんてさ……経験がないんだよ」


 そう、少し照れくさそうに言う。



 「神域……魔力化……重化武装ラブリュス


 そんな大柄な身体が自分の取り柄だと、オトネを守る女性。

 それでも、さすがのオトネも神域それがどれだけ危険かを察する。



 「どんっ」


 リリエットの大柄からだ擬音のうりょくで突き飛ばす。

 振り下ろされた両刃の斧、まるで空間の一部を削り落とすようにえぐり削る。


 だるそうに構えるソルテ。



 「神域……魔力化……重刃手裏剣ハープーン


 両刃の斧の刃の部分がソルテの周囲にいくつも精製されていく。


 そして、その両刃の斧の刃はその場で高速回転すると、

 ソルテの言葉しじを待つように、その場で停止している。

 


 「飛べっ……そして満たせっ」


 ソルテの言葉をその支持を待っていたように、

 一気にソルテの周囲を飛ぶ両刃の斧の刃がリリエットとオトネの元へと飛ぶ。



 そのほとんどは、無駄にリリエットとオトネの周囲を通過していくが……

 オトネに一つ、リリエットには二つの刃が身体を捕らえ、

 その斬撃しょうげきが、二人の身体を弾き飛ばす。



 大柄とりえがそれと言うのなら……



 「幼女オトネちゃんは……守る……から」


 リリエットはそう立ち上がる。



 求められるのはいつもそれだけ……


 誰かをもとめても……


 異性だれかを意識しても……



 求められるのはいつだって……大柄ちからだけ……



 「狂人化バーサク


 目が真っ赤に染まる。

 再び飛び交う重装手裏剣ハープーンをその身で受けながらも、

 その斬撃しょうげきに負けず、その大柄で突き進む。


 そのまま、ソルテの頭を鷲づかみにすると、

 その怪力で地面にその身体を叩きつける。


 ソルテの身体が地面にバウンドするように二重に地面に叩きつけられる。



 その激しい衝撃に……明らかなダメージを追いながらも……


 痛覚の無い身体は痛みなど理解しないように……



 「だるいなぁ……ほんと……」


 いつの間にか握り締めている両刃の斧でリリエットを斬りつける。


 その斬撃でえびぞりになる身体をすぐに起き上がらせると、

 狂人のつめでソルテを叩きつける。



 吹き飛ばされる身体……

 それでも、ソルテはそんな激しいダメージも、

 痛覚かんかくがその痛みを認識させない。


 再び、ソルテの両刃の斧がリリエットを叩きつける。


 女の維持の張り合いのように、交互に一撃を繰り返す。



 「ドーーーンっ」


 いつの間にか迫っていたオトネの右のてのひらが、ソルテの腹部に添えられていて……その擬音ことばが、無防備だったソルテの身体を吹き飛ばす。


 「うるさい……邪魔だなぁ」


 ソルテの周囲に両刃の斧の刃だけが精製されて、その場で高速回転する。


 そんな凶器をオトネは眺めながらも……


 90度のお辞儀をするように頭を下げる。

 そして、両手を翼のように広げる。



 「飛べっ満たしてっ!!」


 そのソルテの言葉と共に、オトネを狙い飛ぶ投擲具。



 「ぱらりらっぱらりらぁーっ」


 オトネは気にすることなく、何時ものように蛇行しながらその場を走りまわる。



 「びゅーんっ」


 目の前の神域の女にはその能力は届かなくても……

 その自らの身体にはその魔力は届く……



 一気にソルテとの距離を縮め、結果、投擲具の射程から逃れる。



 「ドーンっ」


 再び、オトネの手のひらが、ソルテの身体を吹き飛ばす。



 「……ミヒナぁ……私はミヒナを犠牲にして……神域ここに居る……だからね、負けるわけにいかないんだ……」



 すぐに標的オトネに向き直る。



 「オトネも……英雄レスのための英雄レディになるの」


 再びお辞儀の体制で両手を広げる。



 「ぱらりらっぱらりらーーっ」


 蛇行しながら走り回る。



 「私は、私は、過去を手に入れる……ミヒナを再び手に入れるっ」


 邪魔をするなと獣のような目でオトネを睨む。

 可愛そうなソルテ……


 そう、世間は言うのかもしれない……

 オトネには、レスが居る。


 それでも……



 「そのおもいはね……負けない」


 そうオトネはソルテを睨み返す。



 「ビューンっ」


 蛇行し走り続けるオトネの身体を追っていたソルテの視界から、オトネの姿が消える。



 「ばーんっ」


 距離を縮めるのではなく、あえて距離を取ったオトネの指先から放たれる魔力に身体を仰け反らせながらも、痛覚のない身体はすぐに動く。


 でも……痛覚が無いといっても限界はある。

 痛みがないだけで、その身体はいずれ倒れる。



 「倒れない……そんな訳にいかないよぉ、ミヒナぁ、私、私はねぇ」


 獣のような目を見開きながら、叫ぶ。



 「私ね……ミヒナの料理を腹いっぱい食べるの……」


 「そして、ミヒナが好きな本を読んでもらうの……」


 「そんな……年上あなた物語こいをする……」


 そんな醜い……物語こい


 それでも、それが私の一生じんせい




 「空気をよんでよ……邪魔……しないでよ」


 そう、何かをねがうように……



 「私は大嫌いな神代理そいつに従い……」


 過去ねがい未来かこを手に入れる……



 「だから……だからさぁ」


 べろりと舌を伸ばす、刺青のような模様が刻まれている。



 「お腹が好いた……どれも、何もね……美味しくないんだ……」


 「神域魔力化……」


 ラブリュスを右手に武装し、そして、両刃の斧の刃がソルテの周囲を舞う。



 ソルテの未来の無い……想い

 オトネの未来の有る……想い



 それでも、その意思ねがいは、不幸だけを救う訳ではない。



 オトネはその場でお辞儀をして、両手を広げる。



 「ぱらりらぁ、ぱらりらぁ」


 その場を走り回る。



 神域に達するため失った痛覚。

 それでも、ダメージは蓄積している。


 限界はある……


 その神域の攻撃を……掻い潜る。



 そして、致命傷にはならない一撃……



 「どーーーんっ」


 そのソルテの身体を吹き飛ばす。



 「ばぁーーーんっ」


 そんなオトネの一撃を、両刃斧ラブリュスが弾く。



 それでも……

 


 「狂人化バーサク



 オトネに弾き飛ばされた先には、リリエットの姿がある。


 リリエットのてのひらが、ソルテの頭を鷲づかみ、

 近場の白い柱に叩きつける。



 一瞬、白目を向き、意識を失いかけながらも……



 「負けないよ……負けないからね」


 どれだけの犠牲を得て、そこに居る……

 何を取り戻すために、そこに居る……



 オトネは何かを決意するように……



 「すぅーーーーーっ」


 その場で腹いっぱいに空気を吸い込む。



 神域の魔力が漂うその……瘴気くうきを取り込む。



 「神域……魔力化……」


 オトネがそう言葉にする。



 そして、再びその場に90度お辞儀するように……翼を広げるように両手を左右に伸ばす。



 「飛べっ……満たせっ」


 ハープーンがオトネを目掛け飛ぶ。



 「ぴたっ……」


 そんなオトネの擬音ことば……

 その言葉は届かない……


 はずだった……



 ソルテの両刃の斧の刃はその場に停止している。



 「なんで……どうして?」


 信じられないようにソルテがそれを見る。



 「ばぁーんっ」


 そんなオトネの指先の標的ソルテの元に、

 再び回転を始めた、両刃の斧の刃はソルテの元へ返る。


 「なんで……さ」


 そのほとんどが、ソルテの身体を横切り地面に突き刺さりながらも、

 その2撃が、ソルテの身体を捕らえる。


 この瞬間だけでも、神域そこに到達したオトネの魔力は……

 ソルテの魔力を支配する。


 その神域魔力くうきは、瘴気に近い毒を持つ。

 それでも、この一瞬、ソルテを凌駕するために……その能力を得る。


 一瞬構えたパーのてグーのてに変える。


 「どーーーんっ」


 神域に到達したその魔力による擬音ことばは……



 ソルテの身体は真っ白な壁に叩きつけられ、

 壁は大穴をあけるように、その身体を遮る。


 「取り戻したいね……過去ものがあるんだ……」


 ソルテは……限界を超えた身体で……ただそんな言葉だけを搾り出すように……


 「手に入れたいね……未来ねがいがあるんだ……」


 「だから……だからね……」


 重力に負けるように、壁から地に落ちた身体を……



 痛覚のない身体を起き上がらせながらも……


 限界は……ある。



 「……ミヒナ、ミヒナ……わたし、わたしね……」


 知っていた……あなたがははを見て、私に優しくしてくれていたこと。



 「ミヒナ……わたしねぇ……」


 それでもね……そんな醜い人間わたしに優しい……貴方が……貴方のことがね……


 そんな単純な言葉……


 不幸や……報われない人生を糧に、美しく語る言葉など知らないから……


 そんな単純な言葉を……



 「好き……なの……」


 これだけの犠牲を産んで……

 結局……ここに倒れる



 天を仰ぐように、乙女の笑顔で……


 口から口いっぱいの血を吐き捨て、

 その場に倒れこむ。



 ・・・


 こんな容姿のせいで……

 わたしはずっと……ずっと惨めだった。

 哀れだった……不幸だった。


 それでもね……ミヒナが居たからね……



 私は幸せを錯覚していた。

 物語こい言葉かたっていた……



 だから、そんな美しくない物語にオチをつけるなら……



 わたしは……わたしはね……


 ただ……



 開放されるために……開放するために……


 あなたの作ってくれた料理の味も……


 わたしを可愛いと言ってくれた言葉も……



 ぜんぶ、ぜんぶ忘れてるから……



 だから……それでも……


 この物語じんせいにオチをつけるなら……




 ミヒナをね……愛してるよ……



 限界の迎えた身体は起き上がることなく……

 気を失うように、ソルテは倒れこむ。



 敗者にはその先の物語など語る権利はない。


 だから……私の物語こいはここで終わりだ。

ご覧頂きありがとうございます。


少しでも面白い、続きが見たいと思って頂けたら、

ブックマークの追加、下から☆評価、コメントを頂けると、

励みと今後の動力源になりますので、何卒宜しくお願いします。


また、気に入った話面白かった話があれば、イイネを添えて頂けると

今後の物語作りの参考にさせていただきますので、あわせてお願い致します。


すでにブックマーク、☆評価をつけて頂いた方、イイネをつけてくださった方に

この場を借りてお礼を申し上げます。

有難うございます。

本当に励みになっています。

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