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決戦(1)

 別に同情されたい訳じゃない……


 だから、昔語りなどしない。



 正しきものは強き者だ。

 だから、正義も悪も負けてしまえば……

 そんなものは偽者だ……



 あの、暗い部屋に閉じこもっていた現世じかんも。

 そこから、僕を連れ出そうとした正義あね味方かれしも。


 そして、そんな僕のせいで犠牲になった正義も味方も……

 そんな……犠牲は敗者はなんの権限もない。


 悪が正しさを主張する。

 世界など所詮、そんなものだ。


 躊躇するな……

 狩れ……壊せ……


 相手にその牙を見られる前に……全部……



 壊す、壊せ、壊れろ……




 ・・・



 「本当にここに来るのだろうな」


 キリングは自分のブラッドファングの小隊、その中のセキラを見る。



 「正直、わかりませんね、でも……彼が何か正しいものを壊したいと思うのなら、渡した情報を頼りにここに現れる可能性は高いかと」


 「でも、本当にいいんですか」


 細い目をキリングに向ける。



 「何を言いたい、この俺が転生者、一人に遅れをとると?」


 そんな無礼を言いたいかと、セキラを睨む。



 「いえ……、その転生者かれも、今は一応ギルドの協力者という形になっています、同士討ち、まんまと嵌められているのではないですか?」


 神が定めた遊戯、その舞台で、我がギルドを自らの手で追い込んでいる。

 誰かの口車に乗せられ踊っているのではないか。



 「レス……あいつとの勝負は、こんな場所でこんな形でつけようとは思わん、それよりも、あの神聖教会をどう叩くつもりかそこに興味がある」


 「そのうえで、我がギルドに紛れ込んだ、転生能力者くせものが邪魔だと言うのなら排除する」


 そんなギルドの長の言葉に、セキラはため息をつきながら前を見る。



 「来ました……」


 ゆっくりと現れる人影を睨む。


 3部隊。

 王都、ギルド、学園の最大戦力を持って、たった一人の化け物を追い込む。


 追い込むにあたり、犠牲者を出す無理だけはするな。

 それが、レスがこの作戦において最重視した部分。


 その第一部隊。


 ギルドの長、キリングが自らが率いる部隊。



 「……なんだ?」


 リスカは自分を迎える舞台が、仮に席を置いたギルドの連中だと気づく。



 「レス、悪いが我が部隊で終わりにするぞ」


 「ふっ……よくわからないけど、壊していいのか?」


 そう理解したと言うように、リスカがキリングを見る。



 「どっかーーーん」


 リリエットがその自分の大きな体の倍の大きさの鋼の棍棒を先手をうつようにリスカのもとに振り下ろす。


 リスカは自分の足を強化すると、その鋼の棍棒が落下地点を離れ回避する。

 リスカのいた場所に振り下ろされた棍棒が大きな穴を作る。


 できた大きな隙をつこうとリスカが動くが、それよりも早く、

 軽々しく持ち上げた棍棒を横に振ると、リスカの身体が吹き飛ばされる。



 「……ぶんせき」


 受けたダメージを修正きょうかし、基に戻す。

 再び、振り回される鋼の棍棒が、リスカが突き出した右手に止められるように動かなくなる。


 バタフライナイフの刃の先が鋼の棍棒の側面に触れている。

 まるで、同じだけの重量のものにさえぎられるように、

 その怪力が封じられる。



 「なに、これ、嘘でしょ」


 自分の能力かいりきが力負けするなんてと、リリエットが少し悔しそうにする。



 「……大蛇オロチ……抜刀」


 セキラの手に白の刀が握られる。



 セキラの連撃をリスカに強化された身体とナイフの刃がそれを受け止める。



 「……奪った数だけ救いましょう、奪われた数だけ狩りましょう」


 ほっそりとしたセキラの目が瞳が真っ赤に染まる。

 気のせいか、ほっそりとした目の結膜の部分は黒く染まっているようにも見える。


 「……っ」


 自分には無縁と思っていた恐怖という感情が、リスカに少し呼び戻されるように警戒する。



 「……その姿を映せ、八岐大蛇ヤマタノオロチ


 まるで、セキラの腕がもう7本存在しているかのように、

 7本の刀がセキラの周囲に現れ、リスカの身体を刻む。


 7本の刀がリスカの身体に突き刺さっている。



 「あなたの重ねた罪の数だけ、苦しみなさい」


 セキラが手にする白い刀を振るうと、激しい痛みがリスカを襲う。



 「がぁっ」


 白目をむき、失いかけた意識を再び魔力の強化で強制的に意識を呼び戻す。



 「壊す……壊せ……壊れろ……」


 リスカに突き刺さっていた刀が、一本、一本消滅して消えていく。



 「ほぅ……セキラのそれに耐えるか」


 キリングが少し関心するようにリスカを見る。

 

 「化け物を名乗るに値するだけのことはあるな」


 皮肉を込めたほめ言葉を送る。


 「単純な殺傷能力としては、ギルドにそいつの右にでるものはいないぞ、無論、総合的な力においてこの俺の右にでるものはいないがな」


 キリングが剣を抜き、遠くのリスカに突きつけるように向ける。



 「……壊す、壊れろ……壊せっ」


 ただ、リスカはその言葉を繰り返す。



 「コメットっ」


 いつの間にか手にしていた石砕き上空に投げた石くずを巨大化させる。

 振り落ちる大岩の一つをリリエットは受け止めると、



 「よっとっ!」


 そんな掛け声と共に、大岩をリスカの方へと投げ返す。



 「ちっ……」


 リスカは再び岩に魔力を送ると、リスカに戻った大岩も上空から振り落ちる大岩も元の石くずにもどる。



 「……躊躇するな……その牙を見られるな……その前にっ」



 ・・・・




 「なんだよ……本当に化け物じゃん」


 リリエットが魔力を使い果たすように、その場に膝をついている。

 その付近で、黙っているが、

 同じようにキリングもセキラも膝をつく。



 「無理は禁物……役目は果たしました」


 セキラがキリングに自分たちはすでに十分役目を果たしたと告げる。



 「壊す、壊せ、壊れろ、どうした……僕を壊すんじゃないのか?」


 ケラケラと狂ったように笑いながらリスカはその化け物という異名に恥じぬ凶悪ぶりでその前に立っている。



 「第二部隊……王都聖騎士団、続け、盟友たちの意思を告げ、剣を抜けっ」


 シルバ率いる、王都の騎士団がキリングのギルドの部隊に続き、たった一人の化け物を相手に剣を突きつける。


 「……なんだよ……これ」


 さすがに、別の勢力が自分ひとり相手に向かってくるとは思っていなかったリスカは戸惑うようにシルバの部隊を見る。


 「あぁ……壊せ、壊れろ……」


 シルバが率いる部隊の、槍が弓の矢が、魔法が、リスカを幾度貫こうと……

 シルバの黄金に輝く聖剣が、その身体を貫こうと……


 失った白い眼に、幾度と瞳が戻る。


 壊れることなど許されない……



 「……だって、僕は正義それを全部、否定する」


 「壊すっ、壊れろっ、壊せっ、全部、ぜーーーんぶ」


 燃え上がる戦場。

 壊れかけ、えびぞり状態で立っている身体を無理やり強化しゅうふくして起き上がらせる。



 「まるで……ゾンビのようですね……」


 シルバは目の前の化け物に険悪そうな目を向け、


 「引けっ……無理は禁物、私たちの仕事はここまでだっ」


 シルバは自分の部隊にそう呼びかける。




 「第三部隊……続け、決着をつけるっ」


 ライトが叫ぶ。

 ライト、スコール、ナイツ、そしてアストリア、レスの5名。


 ギルド、王都、学園のそれ以外のメンバーは別の場所に待機している。



 「壊せ……壊れろ……壊す……」


 壊れたように繰り返す言葉に……



 「終わらせよう……セーネ」


 アストリアが呟くようにリスカを睨み。



 そして、また一つの物語の決着をつける。

ご覧頂きありがとうございます。


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