護衛(2)
「……隊長、はい、コレ……なんか、魔力からっぽみたいで、捕まえるのが容易だったけど……」
リリエットに片手で軽々しく後ろ首のシャツを鷲づかみ掴まれる形で持ち上げられ、ブラックメタルの鎧を身にまとい、紅いマントをなびかせ、ピアスや指輪など派手な装飾品をつける男、キリングにその男を差し出す。
「マナト……と言ったか?この俺の知らぬところでギルドに入ったと聞いてはいたが……」
キリングは放り捨てられた男を見下すように見下ろしながら……
「まだ斬り捨てていなかったのか」
生かしておく必要がないと冷たく語る。
「神聖魔術教会……その言葉が確かなら、我々は魔力を失うことになりますよ」
それをしてしまえば、このギルドは魔力を失ってしまう……後ろに居た、セキラがキリングに言う。
「ふん……目の前の男の行いを止めるために、協力を要請した奴が、その本人を罰する事に、我々を罰する程愚かなのか?」
キリングが抜いた剣をマナトに向ける。
「それに……先の男に賭けるより、目の前の男にあれを止める方法を聞きだすほうが早いかと……」
思います……と、セキラがキリングに告げる。
「必要ない……先の男が、この俺にあれを止めると、この俺に宣言したのだ、レスには、この俺を利用するに値するか、我が目で確かめる必要がある」
少し嬉しそうにキリングが笑うように言う。
「……レス君……また彼ですか……わたしを邪魔をするのは……」
魔力を失い抗うことすらできないマナトは、キリングを見上げるような姿勢で言う。
「しかし、無理ですよ……あれを止めることなど……もはや、わたしにも、無論……彼にも……」
マナトが軽く睨むようにキリングを見上げる。
「その男の言うとおり……本当にあのレスという男を信用し任せて宜しいのですか?」
キリングへセキラが問うが……
「……この国の国王、そして……そんな国王の権限を脅かすだけの存在である俺……そして、勇者の横でだ……」
「魔力だけを寄こせば、この俺が何とかする……だから、お前たちはそんな俺たちに何ができると、そんなこの国のトップに居る連中にほざいたのだ……それだけの言葉を吐いた、それを証明してもらうさ、レスには」
キリングは実に楽しそうに笑いながら……興味を失せるようにマナトに背を向ける。
もちろん、そんな言葉はレスは言っていない。
それでも、それそうの言葉だったと……
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アクア家に俺に与えられた部屋に戻る。
俺に与えられたベッドに側面に背を預ける様に、俺の本棚から勝手に取り出した小説に目を通している女性。
当たり前のような光景ながらも……
「……いつまで、ここに居るんだ?」
その俺の言葉に、ツキヨは頭を動かさず瞳だけをこちらに向ける。
契約……その中でこれまで俺の護衛を勤めてくれた。
だが、その契約となっていた学園の闇という部分とは、
曖昧ではあるが、決着がついた。
「……私はすでに用済みか?……学園との柵が無くなり私は用済みか」
無表情のまま、ツキヨは俺に言う。
「いや、あんたにも、こんな場所より居場所はあるだろ?」
俺はそう返すが……
「こんな、私は……お前の英雄にはなれないのか?」
何とも言えぬ瞳でツキヨが俺を見る。
目の前に置いてあった、皇帝ペンギンのぬいぐるみを手に持ち、
俺に与えられた棚の一段を奪い取るように飾ってあるぬいぐるみたちのとなりに置く。
「隠しているつもりだが……私に取ってはライクだ……」
目の前のぬいぐるみを見ながら……
「見てみぬふりを続けていてくれるが……知ってはいるのだろ」
俺の方を振り返らずに言う。
「そして……レス……私は……」
気づいて……居るのだろ?そう言いたそうに……
俺の首襟を掴み上げる。
「酷く残酷な、真似を続けるな……」
ツキヨは引き寄せた俺の瞳を覗き込み……
「I…LOVE…YOU…」
ツキヨは俺にそう告げる。
「二度は言わない……ライクではない、私がお前のそばに……ここは、他の英雄では成し得なかった私が手にした居場所だ……」
そして、掴んだ胸元をさらに引き寄せるように、近寄った俺の顔に、その唇に自分の唇を押し付ける。
「嫌なら拒め、それを口にしろ……お前が私にもその優しさを続けるというのなら……私は、あんたの護衛で居続ける……」
それらの行為でずれた眼鏡を調えるように、人差し指で眼鏡の位置を整え、冷静に俺に告げる。
「もう少し、自分を評価しろ……お前はその優しさもそれに担うだけの実力も備えている……そして、その言葉は誰も魅了する」
呆然とする俺に……今更、これまでの行いを恥じるように、俺の体を開放すると、いつものように、俺のベッドから毛布をひとつ奪い取ると、それに身を包む。
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「ハァ……はぁ……」
ナキが繰り出した飛空挺の砲台から繰り出されたビームに左脇腹ごとえぐり捉えれるように風穴を空けた、ニアンは……苦しそうに息をきらしながら、瘴気がその傷を癒すように、そのえぐれた身体を再生する。
ゆっくりと黒い繭に囚われていくルディナの身を案じるように、ニアンへ攻撃を繰り出すが……
能力がニアンへダメージを与えるが、比例するように飛空挺も、ニアンから伸びる触手や水晶から繰り出されるビームでダメージを追い燃え上がっている。
「ぐっ……」
そして、ニアンから伸びた触手のひとつがナキの脇腹を貫くように伸びる。
「ジャマするな……じゃマ…スルな」
ニアンはそんなナキを見下すように
「この程度で、おじさんを黙らせると思うなよ……短い期間だ……それでも、彼女はおじさんに取って掛け替えのないものだよ……貴様、程度にそれらを放棄する訳にはいかないんだよ」
吐血しながらも、笑みを浮かべながらニアンを睨む。
「ボくねぇ……ぼクはネぇ?」
もはや、まともに思考が成立していないように、ニアンが壊れた人形のように言葉を搾り出す。
「世界は表裏一体……持論だけどね……誰かを救うのに、その代理が必要なのだろ……覚悟はとっくに出来ている……」
「ボーイ……此処は譲らないよ……此処だけは、おじさんが、この悲劇の犠牲者だ」
そんな絶望を笑いながら、その宿命を受け入れる。
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