協議
王城……
この国の中心となり、昨日まで争っていた3つの勢力の一つ。
ライトの父、リエンの後ろに並び、娘のライトと共に王都と王城を結ぶ吊り橋を渡る。
隣にはギルド、ブラッドファングのギルド長である、キリング=アブソーブ、その隣を細めの女性、セキラ=ヤマトが歩いている。
神代理にこの間の戦闘を禁止されているとはいえ、
各、勢力のトップが揃っている。
そして、そんな中に俺が放りこまれているとか……
「お待ちしておりました」
茶髪の女性、シルバ=オートがそう来た者を歓迎するように言う。
「皆様……毎度、おおきに」
そう紫色の髪をなびかせ歩いてくる女性……リプリス。
「嫌だなぁ、皆様は大事なお得意様で、今は休戦中……まずはあれをどうするか……ですよ」
そう、紫空を見ずに、向けられた敵視する目を払うように言う。
「……王がお待ちです、どうぞこちらに」
そうシルバが城の中に俺たちを案内する。
40代後半と思われる、如何にも国を治めるという貫禄の男が、
案内された会議室の中央に座っている。
それぞれが席に着き……
あの小惑星をどうするのか……
それが、今回の話し合いのテーマなのだろうが……
いくつか案は出ても具体的な話にまでは発展しない。
そんな……重苦しい会議の中で、
俺はぼそりと……そう一つの案を出す。
その場は、さらに重苦しい空気になる。
「……なるほど、レス……と言ったな?」
ギルドファングの長、キリングがこちらを睨むように見る。
「その……どこぞの小娘に、この国の命運をすべて託すと言うのか?」
キリングの圧のある言葉が続く。
「……この作戦に置いては、彼女が適任だと思っている」
そう圧に負けじと返す。
「……しかし、貴方自身が今、言った懸念点をどうするつもりですか?」
そう今度は、シルバが俺を見る。
「……リエンよ、付き人はもう少し選べ、国の命運をかけた場での話し合いだぞ」
そう国王がリエンを通し俺を否定するが……
「ゼネリック王……少し待たれよ」
そう誰でもない、今日あったばかりのキリングはそう割って入り……
「レス……今日より、君のことはそう呼ばせてもらうぞ」
そう俺の瞳を覗き込みながら……
「安易、故に斬新さもない……だが、こんな場所でそんな発言……中々面白いじゃないか……普通言わないだろ……国中の魔力を自分たちに預けろなんて言葉」
そう、恐れ多い言葉を逆に楽しむように聞いている。
「魔力を集めたところでそれをどう使うというのだ、それが無駄になったとき失敗したでは済まされないのだぞ」
そう国王が悪ふざけに乗っかるような発言をするキリングに言う。
「いずれにせよ……あれがこの国に落ちれば全てが終わる……そうなれば、少しでも可能性のある方にかけるべきだ」
そうライトが口を開く。
「あの、孤高で誰の手も借りたがらないような勇者様がねぇ……レス君、噂どおりってわけかい?」
その言葉の意味することはわからないが、そうリプリスが俺を見て言う。
「案外……俺なんかよりもあなたの方が、紫空をどうするか……いい案があるんじゃないのか?」
俺は、俺なんかよりも賢いだろう目の前の転生者に尋ねる。
「あの、神様代理があわくって、休戦してまで事を収拾させたいって事態だよ」
そう、ゆっくりと冷たい目線を俺に送り……
「あえて、提案するなら、皆に地面に穴でも掘ってさ、移住したらいいんじゃないかな」
「助かるだけなら、レス君の言葉より現実的だろ」
そうその場にいる全員を説得するようにリプリスが言う。
「あんな瘴気が落ち、瘴気があふれた世界……二度と地上には戻れないぞ」
そうリエンがその言葉に返す。
「レス殿の言う……魔力をかき集める……その方法、そして……皆に協力を要請しないとなりません……この短期間で」
シルバが周囲を見渡すように言う。
「そのための……この場、という訳ですね……レスさんでしたか……なるほどです……、我がギルド長、国王……そして勇者を利用するということですか」
そうセキラのうっすらとした目から瞳が俺に向く。
彼らの配下、仲間の協力を仰ぐには、彼らから頼んでもらうのが手っ取り早い。
「しかし、先ほども言ったように……貴方、自身が申していた魔力の集め方が確立していない……その入り口はどうなさるつもりですか?」
そうセキラが試すように俺を見る。
「……何か方法はあるのか?」
そうリエンが俺に尋ねるが……
「……ない」
俺の思考する中で……それができるのは……残念ながら検索に引っかからない。
皆、スコールのように自分の魔力を液体に変えて具現化できるわけではない……
それで、どうやって……魔力をかき集める……それを形にする……
沈黙が続き……
「話にならないな……」
国王が一人、初めから俺の話を面白くなさそうにつき返す。
「……いいだろう」
解散になりかけていた、空気がキリングの言葉でそれぞれの目線が囲うテーブルに戻る。
「……少し面白くないが……なるほど、初めから器を測られていたのはこちらだったという事か」
そう、おそらく必要以上に俺の言葉をかんぐるようにキリングが俺を見る。
「いいだろう、今回はレス、お前のその挑発に乗ってやる……」
そこに居る全員がキリングの言葉を理解できないように見ているが……
「……瘴気塊に匹敵する魔力をかき集めれば良いのであろう?それをレス、お前がどうあつかうつもりかは、知らぬが……その役目、この俺様がかってやる」
そう、圧のある笑みを俺に向ける。
「ふははははっ」
そう一人キリングは楽しそうに笑い……
「ここまで、不愉快なのは初めてだ……故にここまで俺を楽しませる、そんな道化に出会うのも久々だ……俺をがっかりさせるな」
そう、命令するように俺に言う。
「何を……キリング……若くして数あるギルドの頂点に立つほどの貴様が、そんな言葉を真に受けるのか?」
そう、国王がキリングを見る。
「国王……無能と呼ばれたくなければ、王都の連中に魔力を差し出させる説得をなして見せろ……この召集で……長として集められた中で……文句だけ垂れた、役目の無い、国王なんて呼ばれたくないのであればな……」
そう、トップのしての器を……キリングは俺に計られていると言いたげに俺を見る。
「な……小僧……こんな言葉を信じ、この国を潰すつもりか」
そう返すが……鼻で笑うように、ゆっくりとキリングが国王に瞳を向ける。
「こいつは、此処に居る誰もができぬ事を……この俺を利用したのだぞ?」
そう……愉快と不愉快のふたつの感情を同時に楽しむように……
その後、数分でその場は解散となるが……
ライトとキリングの意見が国王の思い勝り……
「レス……少し待て」
そうその場を立ち去ろうとする俺をキリングが呼び止める。
「事の後の話だ……レス、ブラッドファングの……我が配下となれ」
「約束しよう……我が貴様の余生、一生飽きる事の無いモノを与えよう」
そう俺を見ていた、目線を横に送り……
黙って圧をかける瞳に……
「……勇者の娘、俺は貴様もかっている、なんなら二人まとめて、我がギルドで引き取ろう」
そう、告げられるが……少し無言が続き……
「よかろう……今日は、久しぶりに気分が良い……害さぬ内に帰るとしよう」
そうキリングは立ち去り、その後をセキラが黙って続いていく。
「……レス君、君はまた、えらい人間に気に入られるな」
そうリエンが俺に言うが……
「……誰のことを言っておいでですか?」
またの表現が、不服そうにライトが父に返す。
城の外に出ると……
少しの間だけ忘れていた……
太陽が出ているのに、薄暗い紫色の空に目を向ける。
キリング……あんたは俺を買かぶり過ぎだ……
俺は彼女たちを英雄にするための、導線を結ぶだけだ……
世界を護るのは……英雄だ……
俺はそんな英雄を少しだけ護れたらいい……
「……頑張れよ……レイン」
はるか遠くにある瘴気塊は、すでに目視できるほどに巨大で……
だから……俺が……彼女を英雄にする。
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