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星破壊

 正直……何の作戦も無い。

 魔力も能力も……やつのが上。


 それに、何かを壊すことに躊躇いの無い奴ほど、

 危険な奴は居ない。



 「しょうねーん、目を使え」


 そう、フィルの魔力の一部を目に送るようセティが支持する。



 「……了解」


 わからないが……それに従う。



 「少年のまりょくに合わせた……せいぜい錯乱させてやるさぁ、てめぇが本気で戦えると思うなぁ」


 そうリスカを不適に笑いながら睨む。



 俺の魔力に合わせた……恐らく俺にしか見えていない歪み……


 俺とリスカの距離が縮まる……が、不意に目の前に居た俺の姿がリスカの視界から消える。



 「ちっ……転移ワープ……か」


 そう瞳を動かし俺の姿を探す。



 消えた場所から少し離れた場所で姿を見つける……が、

 再び姿を消す。



 「くだらない……」


 リスカは転移先の俺を見つけると、身体を強化して一気に俺に詰め寄る。

 俺はその場に飛び上がり、フィルの炎を右足に宿すと頭部目がけ回し蹴りの体制を作る。


 ……が、リスカはその俺の動きを上回るように、いつの間にか俺の背を取り、さらに上空で脚を構える……



 「……まったくどれだけ俺を信用してねぇんだよ」


 俺はそう呟き、その空間に飛び込み……



 「なっ……」


 消えた俺の姿を追って、リスカが行き場の無い脚をその場に止めたまま、頭だけを後ろにまわすと……俺の姿を確認する。


 リスカの背を取り、俺はその上空で構えていた脚を振り下ろす。



 「ぐっ……」


 リスカの身体がフィルの魔力の乗った俺の蹴りで上空から叩き落される。



 「初の共演からみで、あの勇者様も嫉妬しそうなほど、相性ぴったりだな、しょーねん」


 「……俺には、あんたにいいように操り人形にされているようにしか思えないんだけどな……」


 しかしながら、あの凶悪なサイコパス野郎にここまで……



 「ぶんせき……」


 地面に叩きつけられる身体が物理の法則に反するようにゆっくりと落下し、上空で体制を立て直すように、両足で地面につく。



 「こっちも、こっちで……どうなってんだよ」


 「関心してる場合じゃねーぜ、少年……できれば、このまま、これ以上手の内を見せられる前に仕留めたいものだ」


 そうセティが追い討ちをかけようとする。



 「………はっ」


 リスカが静かに不気味に笑うと……



 石を拾い上げる……



 大岩雨コメット……

 確かに厄介だし、防ぐのも容易ではない……


 だが……防ぐことはできる。


 そう創り出した結界に、大岩が防がれていくが……

 大岩に紛れるように、リスカが俺の結界の壁に飛び乗る。


 「分析……」

 俺の結界に手のひらをつける……


 ぱちんっとセティが指を鳴らすと……


 リスカの身体が空間に飲み込まれるように消え……

 俺はセティの無言の視線を読み取り、地面を蹴り上げると、

 フィルの魔力ほのおを右手に宿すとその場に思いっきり振り下ろす。



 「ちっ……」


 右手に大きな手ごたえと共に、強制的にその場に呼び出されたリスカの身体が後方へと吹き飛ぶ。



 「壊す……壊れろ……壊せ……」


 そう呪いのように呟きながら……



 石を拾い上げる……

 俺たちを壊すのは、それだけで十分というように……



 「案外……芸がねぇな」


 そうセティが吐き捨てるが……



 構わず粉々に砕いたそれを上空に投げては……

 造られた大岩を俺が結界で防ぐ。


 再び、大岩に紛れるように上空に飛び上がる。



 「……今度はなんの真似だ?」


 そう……セティがリスカを睨みながら様子を見る。



 どういう魔力を体内に送ればそんな真似ができるのか……

 リスカは空中でその身体の動きを停止させながら、

 前にかざした右手のてのひらに大岩が一つ吸い付くように持ち構えている。



 そして、その大岩の魔力の流れが大きく変わるように……

 魔力の変化による風圧だけでその変一帯に居た人間の身体が吹き飛ばされそうになる。


 真っ赤に燃え上がるように、さらに大きさを増していく。


 右手を天に構えなおすと、大岩はてのひらを離れどんどんと大きさと、炎の魔力を増幅していく……



 「………星破壊メテオッ」


 その場に居る誰もが戦闘を中断して星破壊そのまりょくを見る。



 「ふざけろ……あんなもの落とされたら、この辺一帯……死滅するぞ」


 そう……呆然とセティが眺める……



 右手をリスカの方角に向ける。

 できる限りの魔力で結界シールドを作り上げる。


 突破させるわけにはいかない……



 「壊れろっ……」


 リスカの手元を離れた星破壊がゆっくりと落下する。



 そして、上空に展開した俺の結界と接触すると……



 「……くっ……」


 少しでも意識が反れたら、あっという間に結界が破壊されてしまいそうだ。



 歯を食いしばり、必死に集中力を閉ざさないよう結界に魔力を送る。

 が、その投球に少しずつ差し込まれるように、じりじりと結界が後退させられ、

 ゆっくりとメテオが迫る。



 「……壊すっ」


 そう、右手にバタフライナイフを持ちゆっくりと浮遊していた身体を結界に近づく。



 「……まったく……この世界がどうなろうとどうでもいいのに」


 そうセティは呟きながら……

 自らの身体をゲートに通すと……


 リスカの真横に姿を現すと、華麗に蹴りを叩き込む。


 セティ……あんな動きもできたのか……


 おそらく、星破壊……リスカの魔力、能力は今ほとんどその具現化に使われている。

 

 それでも吹き飛ばされた身体を魔力で制御するように……

 セティをゆっくりと睨む。



 指を鳴らすと、魔力のナイフがリスカの周囲を包囲する。


 再び指を鳴らすと、ナイフが次々とリスカ目掛け飛び回り、

 そして、再び指を鳴らすと次々と爆破を起こす。



 「……剣を収めろっ……レスがあれを防いでいるその間に、星破壊アレを破壊しろっ!!」


 そう、全員に協力を仰ぐようにイロハが叫ぶ。



 「……って、あんなものどうすれって……」


 苦笑するようにツキヨがゆっくりと俺の結界を押し進む星破壊それを見る。



 「その名を叫べ……紅桜っ」


 クレイがそう刃に左のてのひらを滑らせる。

 魔力が血のように流れ……その血を啜る。



 「抜刀……まさむねっ」


 ツキヨも改めて刀を鞘から抜くと、上空を睨みつける。



 「妖魔化デーモンモード……瘴れっ……ダリアッ」


 黒い瘴気がヨウマにまとわりつくと、黒い鎧を身にまとうようにヨウマが姿を変える。



 イロハ、ツキヨ、クレイ、ヨウマが代わる代わるに、

 その強大な真っ赤な球体に斬りかかる。


 魔力が削られるように、少しずつ小さくはなっているが……


 とても……間に合わない。



 「壱の型……爆破拳ショットガンッ!」


 結界と真っ赤な球体の間に割り込んだヴァニがその漆黒の手甲を振り下ろし……


 「炎舞っチェックメイト!!」


 上空にその球体を打ち返すように再び拳を叩きつける。



 「くっ……」


 イロハやツキヨたちのおかげで、多少、魔力いりょくが弱まったとはいえ、

 それに拳を叩きつけ続けるのはその身にかかる負担は相当なものだろう。


 その圧に潰されそうな身体を平然を装いながら、その拳で星破壊を上空へ送り返そうとしている。


 だが、やはり差し込まれるように……ゆっくり、ゆっくりとヴァニの身体ごとゆっくりと結界の位置が下がっている。



 その間も何度もイロハやツキヨが刀技を駆使して魔力を削りあげていく。



 「……ピンチヒッターなんて柄じゃないけど」


 そう、タバコのようなものをくわえながら、いつの間にか飛び乗った結界の上を歩きながら……



 「最大出力フルバーストっ」


 ヴァニの隣で……凄まじい火力のいちげきが振り落とされる。



 その一撃にあわせる様に、

 イロハ、ツキヨ、クレイ、ヨウマも刀でスイングするように、真っ赤な球体に刃を叩き込む。


 激しい魔力の衝突で周囲に激しい風圧を撒き散らしながら……


 真っ赤な球体は周りの風を吸い込むように……


 落下の回転が止まると……球体が高速で逆回転を始め、移動方向を間逆の空に変えて上空に打ちあがると……



 周囲の魔力や空気を吸い込むように……

 

 「伏せろっ!!」


 フレアがそう叫ぶと……


 星破壊が上空で大爆発を起こす。



 爆発して砕けた岩の破片が空から落下している……

 砕かれたそれでも、落下した地面に軽く穴をあけるほどで……



 「あーあ……壊されちゃったか……」


 そう玩具が壊された子供のようにリスカが言い……不適に笑う。




 ・


 ・


 ・




 「……そんなものでは、せかいは壊せないよ」


 そう、光の無い瞳で、遠い場所からそれを見ていた、マナトが呟く。


 「もっと……もっと、憎悪も苦しみも……全部、全部……返すんだ」


 星破壊それで赤く燃え上がっていた空は、元の色を取り戻すが……



 先ほどの赤とは比べ物にならないくらいに……


 空が裂けるような大きな音がして……



 この世界一帯の空が一気に紫色に染まった。



 「……リザ……始まるよ」


 そうマナトは空を眺め……



 ・


 ・


 ・



 「てめぇ、今度は何した……」


 そうセティが、目の前のリスカに問いながら、空を眺める。



 「……なんだ……僕じゃないって」


 そう返しながらも、自分でもない誰かのその動きに嫌悪するように空を見る。



 ・・・



 神聖魔術教会……


 そこにある大聖堂のベランダからフィーリアも空を眺める。



 「何者の仕業でしょう……」


 小惑星ほどの大きさの瘴気まりょくの塊……

 フィーリアは冷静に呟きながらも……

 怒りに近い感情でそれを眺める。


ご覧頂きありがとうございます。


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励みと今後の動力源になりますので、何卒宜しくお願いします。


また、気に入った話面白かった話があれば、イイネを添えて頂けると

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