遊戯
「この場での争いを禁止します……」
突如現れた女性がその場の全員へ命じるように言う。
「ゲームが始まる前に、脱落者を出されては困ります」
そう、リスカを睨みつける様に言う。
「どこの誰か知らぬが何の権限を主張している……」
そうアストリアが現れた女に言う。
「フィーリア……」
俺はその名を呼ぶ。
「貴方の封を解いたのは、今ここで彼と死合うためではありません」
そうリスカに言い聞かせるように……
「黙れっ……僕は僕の思う通りに行動するだけだっ」
「ようやく……《《7人》》……ここに揃うのです……」
そのフィーリアの言葉に導かれるようにあっちこっちに光の空間が現れる……
「やれやれ、おじさんは……これまた物騒な場所に呼び出されたものだね……」
殺気立つ連中を横目にナキが歩いてくる。
「こっちもさ暇じゃないんだよねぇ……そう易々とくだらねぇ召集かけてんなよ」
そうフィーリアに圧をかけるようにセティが歩いてくる。
少し離れた場所にはマナトがいつの間にか立っている。
そして……俺……
そして……サイコパス野郎のリスカ。
そして……神代理……
「あと……一人……」
足りていないと俺は言うが……
さらに新しい顔ぶれが混ざっている訳でもない。
「……《《また》》、召集を無視するつもりでしょうか……」
そうフィーリアが少し苛立つように……
「今回は半ば強制で呼びつけましょう」
そう誰かをこの場へと強制召喚したようだ……
しかし……誰が?
新しくこの世界に誰か召喚されたのか?
「君はもう……出会っている奴だよ……しょーねん」
そう俺の頭の中を覗いたように、セティが得意げに言う。
もう……出会っている……
そうだ……俺はもう出会っている……
そう言われ……これまで出会った人物を辿れば……
ただ、一人だけ……
この異世界に余りにも便利な人物が一人居た……
それは……ただの能力だと……
普通に考えれば……わかりそうな能力だ……
「毎度ぉ……何やらここで合宿をやってると聞いて、何か協力できないかって思って来たのだけど……おや、場違いだったかな……?」
そう、リプリス=オーダーがきょろきょろとしている……
「……これで……全員、そろったのか?」
そう俺が七人目を見ながら言う。
「……やだなぁ、なんのはなしだい?」
そう惚ける女……20前後……といった姿だろうか……
よく考えればおかしな話だった。
現世のものを異世界に取り寄せる。
それがどんな形で再現されるかはわからないが……
現世の人間の話を聞いて、
あれだけ正確に再現できるのか……
彼女が頭の中で再現できるものを呼寄せる。
料理の本や小説、食べ物もそうだ。
あれだけのものを再現するには人伝えに聞いた話で再現するなど不可能な話だ。
どんなものかを知っていても、本や小説の内容や文章までそのまま再現できるのはそれはそれで、理不尽なまでに便利だとは思うが……
コンピューターなどの、おそらく彼女の知らぬ技術の再現は難しい。
だが、彼女がそれらの資料的なものを現世から取り寄せて、
別の技術者に作らせるような真似はしてきたのだろう。
「やだなぁ……お得意様が減ってしまったら責任とってよ」
そうリプリスがフィーリアを軽く恨むように言う。
「……戦闘能力は皆無のようだが……」
そうナキが先ほどからの商人ぽい口調から推測するように言う。
正直、俺も少し前までは同じ意見だったが……
もし……彼女の能力が現世のものを異世界に取り寄せるっていう能力では無かったら?
「リプリス=オーダー……私もよく知らないけどね、下手をすりゃこの中で一番やべぇ奴かもしれないぜ」
そうセティがナキの言葉を否定する。
「……自分たちはいったい何に立ち会っているんだ?」
そう目の前に集まった7人の転生者を見ながらナイツが言う。
「まるで……本来の住人の私たちが部外者扱いではないか」
アストリアも苦笑するように見ている。
「とにかく……こうして7名がそろいました」
そうフィーリアが俺達6人に向け言う。
「正式に……神代行をかけての勝負といきましょう」
そうフィーリアが6人に向け言う。
「しかしながら、ここで7人殺しあいましょう……などと言うつもりはありません」
そうゆっくりと全員を見渡し……
「……現にこの国は3つの勢力図で成り立っています、ここより北西に位置するグレイバニア王国、北東に位置する再王手のギルド、ブラッドファング……そして聖ブレイブ学園……あなた方にはそれらいずれかの勢力化に属してもらいます」
そう一方的にルール説明が始まる。
「あぁ……待った……あのさぁ」
そうセティが割って入る。
「……めんどくせぇ」
そう冷たく返す。
「と言われましても、困りました……私も神代理を押し付けられての初めての大役なのです、少しくらいは無理を通させて貰います」
そう、フィーリアも冷たい瞳でセティを見る。
「いずれにしても、私よりも上の神が定めたルールです、始まってしまえば、逃げることもできません」
そう続ける。
そして、手を前にかざすと虹色の光が広がり……
俺の目の前に……黒く透明な水晶のような光が浮いている。
「これは……?」
同じようにセティの前にも薄いピンクの水晶が浮いていて、それが何かを訪ねる。
ナキの前には黄色の水晶、マナトの前には青色の水晶、リスカの前に紫色の水晶、リプリスの前には白い水晶が浮いている。
そして、フィーリアの前にも虹色に輝く水晶が浮いている。
「それらはあなた方の、魔力の代役を務めるものです」
「……命の代わり?これまた物騒な言い回しじゃないかい」
そうフィーリアの台詞にナキが返す。
「その水晶を互いに奪い壊し……全てを揃えたものに、私……神聖魔術教会との直接対決を許可します」
「同じ勢力に所属していれば、争う必要は無いってことか?」
「それと、こいつを壊されたらどうなるんだ?」
そう俺はフィーリアに尋ねる。
「えぇ……私の推測では均等に分かれるはずですが……」
そう自信ありげにフィーリアが返す。
俺の予想では、気まぐれのセティは、ともかく……
リプリス、ナキの二人とは同じ所属につきそうだと考えていたが……
「そして、水晶が壊されても命まで奪われることはありません……」
「ただ……このゲームが終わり、世界が安定するまでその魔力が復活することはありません」
フィーリアがそう告げる。
……魔力も能力もない、現世の身体に戻るということか。
こんな異世界に転生した以上は……確かに魔力を失うリスクは大きい。
「それに……あんたの言うこの国の三大勢力とやらは、この神の遊戯に参加するのか?」
そんな俺の追加の質問に……
「神聖魔術教会を破ったものには、それ相応の願いが聞き入れられます、それに勝者の転生者が望めば新たな神代理の誕生にも立ち会える、そんな神の恩恵を受けられるチャンスでもあります……それに……」
大きな地響きが起きる。
ここからは確認ができないが、3か所に大きな柱のような建物が地面から生えるように現れる。
「……私たち7人に与えられた水晶同様に、各勢力にも核となる水晶が出現しているはずです……神の定めたルールは絶対です、水晶を失えばその水晶を所有する勢力は一切の魔力を失います……」
能力を失う訳じゃないだろうが……魔力を失うということは、それイコールに等しい。
「めんどくせぇ……さっき、そう言ったはずだぜ?」
そうセティが再び口に出す。
「同感……この場でてめぇを壊せばいいんじゃねぇーの」
そうリスカが折り畳み式のバタフライナイフの刃を起こし、フィーリアに襲い掛かる。
魔力を封じられたこの領域で……
だが、確かに魔力が無いのなら、魔力によって攻撃も防げない……
「領域停止」
そう、フィーリアが言葉にする。
「ぐっ……なん、ぐ……」
リスカが何かに押しつぶされるようにその場に這いつくばる。
「まずは、それぞれ……所属する勢力についてください」
「ゲームは7日後を持ち開催とします」
「ルールを破れば貴方がたの持つ水晶は砕け散ります」
砕け散る……その言葉が意味すること。
「もうひとつだけ……その権利だかを無視して全勢力で神代理を狙うってのはなしなのか?」
そう俺がフィーリアに尋ねる。
「可能ですがお勧めはしません……」
理由のわからぬその言葉に六人が冷たい目を向ける。
「……水晶には神の魔力が宿っています……神の魔力は私の所属する神域魔術教会を中心とし領域を作っています……所属する水晶……七人の持つ水晶を破壊し、私を少しでも領域から引きずり出すことが重要と思いますが……」
そう俺たちが潰しあう事が自分に勝つために繋がることを説明する。
自分自身の水晶と勢力の水晶を守っての攻防戦。
神の遊戯、これはまた……面倒なことになりそうだ。
その後は……ただ……全員黙って見つめあい……
どう解散したかは覚えていない……
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