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6人目

 「遅い……」


 そんなアストリアの台詞と共にくりだされた彼女の回し蹴りを左手でガードするが、地面を転がるように吹き飛ばされる。


 「反応速度、対処への頭の回転は文句は無い、だが……体の動きが全くそれらについてきておらんな」


 そうアストリアに指摘される。


 「わかってはいるよ……」


 わかっていても、いきなり運動能力が上がるものでもない……

 フィルの魔力を駆使しても、やはり彼女アストリアには遠く及ばない。



 本日の合宿の相手はアストリア……

 多少、俺も体術を極めるべきだと……

 そう、軽いコツを教えてもらう予定だったが。


 そんな生易しい相手では無く……


 そして……


 「………」

 

 俺が倒れこんだり、隙を見せると……

 アストリアは何か落ち着かないように周りを見渡している。


 「……ぐはっ」

 

 余所見をするアストリアを指摘するように、拳を寸止めしようとしたところ無意識に反応するようにカウンターの回し蹴りを見事に貰う。


 「なんのつもりだ……」


 手加減、寸止めに怒っているのだろう……そうアストリアがにらみをきかせる。


 「……アストリアはなぜ体術を極めてるんだ?」


 そんな俺の唐突の質問に眉を潜める。


 「……あの白い槍を作り出してミサイルみたいに飛ばす、それが本来、あんたの能力だろ?そんなすげぇ能力のほうがオマケみたいだなって……」


 そう俺の疑問に……



 「……魔力も武術も上には上がいる……だが、小僧、貴様に誰よりも突出した能力とくちょうがあるように……私にも特徴ゆずれないものくらいあるのさ……」


 そう……やはり、他のどこかを気にするように……


 「その……理由がこの場所に関係あるってことか?」


 俺にとってはたまたまつれて来られた場所。



 「……まぁ、そうだな……」


 そう、アストリアは俺に背を向け歩き出す。

 ライトの別荘とは間逆……



 「……どうした、付き合え小僧」


 アストリアの蹴りで尻餅をついたままの俺にアストリアは頭だけを振り向かせる。



 「あ……あぁ」


 ゆっくりと立ち上がり、その後ろを歩く。



 「……ここは?」


 木製の小屋が沢山ある。

 井戸や畑など……


 ただ、人気はなく……

 もう何年も人が手入れをしていない廃墟のようにも見える。



 「昔に……私と奴と師匠で暮らしていた場所だ」


 そうアストリアが言った言葉の先に……


 盛り上がった土に木の棒を立ててあり、そこに手を合わせる男。



 「ナイツ……?」


 俺がその名を呼ぶ。


 そのアストリアの説明だけで、その墓が誰のものかはすぐに理解できる。



 そんな合宿先の偶然に……


 そんな偶然は必然のように……



 ぞわりと俺、ナイツ……そしてアストリアさえもその凶悪な魔力なにかに……寒気のような感覚を覚え後ろに振り返る。



 「……なぜ……貴様が?」


 そう目を見開き……アストリアが目の前の男を見る。



 「セーネが……お前を……」


 理由はわからないが……そこに眠る人間を合わせた3人の因縁的な相手なのだろう……


 恐らく、アストリアたちと同じくらいの年……


 青白い髪の男が立っている。



 「残念だけど……僕はここに居るよ」


 そう……こちらに返してくる。



 「あれから……10年以上たったが……その顔忘れたことは無かったぞ」


 ナイツが珍しく感情的に言う。

 10年前の姿……10年後の姿など知るわけもないが……


 それでもこうして姿を見れば……



 「……なにものなんだ?」


 ……率直な疑問をぶつける。



 「……化け物を操り……村ひとつを一瞬で滅ぼした……」


 そうアストリアが過去を思い出すように……



 「私もナイツも……こやつが操る化け物に両親も全て奪われたんだ……そして……そんな私たちが辿り着いた、師匠さえも……」


 そう……長き恨みの復讐相手を見つけたように……



 黒い瘴気を雇ったオオカミのような化け物が現れる。


 特別、恐ろしい化け物には見えないが……



 ヤバイ……本能がそう告げるように……



 「ヒーロータイム……モード……白銀プラチナ


 全力を惜しまぬようにナイツも、アストリアも身構える。



 男はゆっくりとオオカミのような化け物の前にしゃがむと……


 化け物を撫でるように……



 「……なんだ……」


 俺は思わずその強大化した化け物を見上げる。



 「伏せろっ!!」


 そうアストリアが叫ぶと、化け物が口から巨大な火の玉を吐き出す。



 「ちっ!!」


 全力の結界でその巨大な火の玉を防ぐ。


 俺の結界により火の玉が消し去るが……その魔力の消滅の衝撃が、周りの草木を激しく揺さぶる。



 ナイツ、アストリア二人がかりで巨大化した化け物と交戦する……

 数分後、化け物がアストリアの放った魔槍で消滅する。


 ヤバイ……本能がそう告げる。


 オトネと初めて対峙した時同様に……


 この男の能力を把握しないと……大変な事になるかもしれない。



 そのまま、ナイツが地面を蹴り上げ……そのまま、青白い髪の男に回し蹴りを入れようとするが……



 男はその場から消えるように……


 ナイツの後ろに……ナイツより少し高い位置に飛び跳ねるように現れる。


 ナイツに向かい繰り出した蹴りが俺の結界に防がれる。



 「……なるほど、やっぱり君のことか……」


 そう男が俺を見る。



 「リスカ……僕の名前だ……」


 そう男が俺を見て言う。



 「レス……覚えてもらう必要は無いが……」


 そう名乗り返しておく。



 「あの女が言っていたのは君のことか……」


 そうリスカは俺の瞳を覗くように……



 数々の強者は沢山見て来た。

 それでも、この目の前の男は……


 今までのような、どこかスポーツの延長線のような生易しくない……

 本気で命を奪われ兼ねない。

 そのせいか……じわりとした嫌な汗をかく。


 恐怖に近い何かを覚える……



 「………分析……」


 リスカはその場に落ちている石を拾い上げそうぼそりと呟き……


 「飛べっ!!」


 アストリアが密かに作り上げていた魔槍をミサイルのように発射する。


 リスカが手にしていた石が火花のような魔力を放電させる。


 気づかない振りをしていたように、瞳で飛ぶ魔槍を睨みつけると、手にした石を魔槍に向け投げる。


 石が巨大化しさらに凄まじい魔力を放電させながら魔槍とぶつかり合う。



 二つの魔力がぶつかり合い相殺された空間から身体が吹き飛ばされそうなくらいの風圧が巻き起こる。



 「……アストリアの魔槍が……あんな石ころで?」


 どんな能力を使った?

 リスカの持つ能力……人の持つ魔力には限度がある。

 その魔力を石に送ったとして、あの魔槍かりょくを相殺できるか?


 どんな能力があれば……そんな芸当が……



 恐らく化け物を操るような能力じゃない……


 「なんのつもりだ……何をしに……」


 「なんのつもりか?君たちが勝手に襲い掛かってきた、僕はそれに抵抗しているだけだ」


 俺の質問に自分が被害者だと返す。



 「あの日を訂正する……正義は英雄あのひとが負けたりしないっ!!」


 そうナイツが拳を振りかざす。



 その拳を軽々しく片手で受け止める。



 ……能力の特性が見えてこない……


 化け物を巨大化……


 石に何らかの魔力を与えたかのような攻撃……


 ナイツを上回るかのような動きと、

 そして、その全力のいちげきを軽く受け止める……



 嫌な予感が脳裏によぎる……


 あの女……リスカの言っていたあの女……とは……


 もし、そうだとしたら……


 残されたふたりのうちの一人だと言うのなら……



 想像かぎられたすうちの中で……何を能力かたちにした……



 「正義なんてものは……誰よりも強く……全てを守れる者しか名乗れない……」


 リスカがそう俺たちに告げる様に呟く。



 「弱者あくを倒せるから強者せいぎと名乗る……」


 そう……距離を取ったナイツを見る。



 「俺たちを倒せば、自分が正義とでも言うつもりか?」


 そんな俺の言葉に……



 「いいや……僕は、正義それらのすべてに……勝利ひていするだけだ」


 そう冷めた口調で言う。



 「……なんのために」


 「君も知っているのだろう……どこの世界も一緒だよ」


 そう……その冷たい瞳はいつの間にか俺を見ていて……


 「君だって……現世にんげんに絶望して異世界ここに居るのだろう?」


 嫌な予感がしていた……

 その能力ちからが己で想像していた力で……


 同じ限られた魔力の中で想像さくせいした力の中で……


 この男はどうやって……

 

ご覧頂きありがとうございます。


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