合宿
学園の教室の一つ。
ライトやスコール、ナイツが集って情報などを交換する場に使っている教室。
「合宿っ?」
そんな言葉は熱血青春スポーツ学生にしか縁もゆかりもないワード……
それこそ、アニメや小説でしか目にしたことがない。
俺は、そう慣れない言葉を口にする。
「うむ、アストリアから聞いた……君にはまだ私たちに隠していた力があったと……実際、君がそれを隠していたのか、ここ最近手にした能力なのかは知らない、ただ、君がその能力をもっと使いこなせるよう望むのなら、私はその助けになりたいのだ」
そうライトが俺に言う。
「その間……学園はどうなるんだ?」
「もちろん、合宿に参加しない者たちはそのままいつもどおりの学園生活だ」
参加を望むものだけが猛特訓という訳か。
「まったく……良いのか、新学園長の娘がそんな横暴、それにレスとは学年も違う、学園の行事としては成立せんだろう……」
そう、昨日、今日でとってつけた行事にアストリアが言う。
「……無論、私にその権限が通るのなら利用する……レス、私が君のためにできる事があるなら協力は厭わない」
そう凛と笑顔を向ける。
「合宿っても……何をするんだ?」
わざわざ、行事を組んでまで……
「私が君の剣となる……だから、本来……こんな必要は無い、だが……レス、君には私には出来ない可能性を秘めている……私は剣になれても、私は盾にはなれない……レス、君はきっとこの世界を護る盾になれる」
そうライトが過大評価する。
「魔力の使い方……その使い方をマスターすれば、今の君の魔力なら私やアストリアにも匹敵する……その魔力を身体に利用できれば凄腕の剣術や体術の者が相手でも対応できるようになるだろう」
そう、ライトが言う。
「もちろん、参加するんだよなっ」
そう不意に後ろから頭を鷲づかみされ、声がする。
「……イロハ先生?」
そう振り返らずその声の主の名を呼ぶ。
「あだ……っ」
不意にケツに強い痛みを覚える。
イロハ先生の鋭いケリが自分のケツにヒットしたのだろう。
「てめぇ……誰に手を抜いてんだ」
そう鋭い目でにらまれるが……
そんな圧の塊に、俺の変わりに魔力の剣を開放して睨み付けている生徒。
「彼に危害を加える者は……先生であろうが許さない」
そう、ライトがさらに圧をかける。
「まったく……逃げんなよ、私がみっちりと特訓相手をしてやる」
そう目先の勇者は相手にせず、そう俺に合宿への参加を半場強制して立ち去っていく。
この二人が本気で戦ったらどっちが勝つのか興味もあるが……
その前に学園が壊れるだろうな……
「……時間はそうもない、小僧、貴様も含め、私たちもそれなりに急ぎ更に力をつけなくてはならん」
そうアストリアが言う。
「……学園を隅々まで調べさせた……元学園長が何をしようとしていたのか……これから何をしようとしているのか……」
そのライトの言葉に、俺もアストリアも黙って目を向けて……
「……見つからなかった……すでに持ち出された後だ……魔王から溢れ出す瘴気を制御できるモノ……その力をまだ元学園長が持っているというのなら……私は君の力になろう……レス、君は私たちを護る盾になってほしい」
そう、ライトが俺に願う。
翌日、一部の生徒が学園の校庭集まっている。
大型のバスが一台。
まぁ、さすがに現世で見るようなバスとは少し違うが……
用途はほぼかわらないだろう。
なんというか、見た目を一言で表すなら強そう。
どこか戦場で走っていても下手な銃弾なら弾き返しそうな作りだ。
多分、現世の知識を持ち込んで、異世界での知識で再現したことで、
こういった形になったのだろう。
「逃げずに来たな」
ぽんと、イロハ先生が俺の頭を叩く。
「……まぁ、あんな話をされれば……」
まぁ、俺の言うあんな話は、イロハ先生からの言葉ではなく……
昨日、最後に聞いた話の内容だが……
「レェスーーー」
ぼふっと右の腰のあたりに強い衝撃を受けると、
クロハが俺の身体に抱きついている。
「あっ……レス」
さらに左腰に強い衝撃を受けると、
オトネがしがみついている。
「……あぁ、めんどくさい……なんで私まで……」
ぶつぶつと文句を言いながら歩いてくる女性。
「あーーーー、レスゥ」
そして、低い声から高い声にチェンジすると正面から突撃してくる女性……
「……わぷぅ」
俺とレヴィの間に入ったフレアが顔面を鷲づかみにして動きを制御する。
「合宿に参加する気がないなら、周り右だレヴィ」
フレアもその呼び名で呼んでいるのか……
「え、レスがイクなら、私もイクイク、イッちゃうっ!!」
「やめろっ、それ!」
必死にその言葉を止める様に叫ぶ。
「あだっ……」
昨日の俺同様に、今度はフレアの鋭い蹴りがレヴィのケツに炸裂する。
「やめて、それっ!!私のお尻はレスのなんだよっ!!」
そう両手でお尻をガードしながら嘆く。
「でっけぇ、車だな……初めて乗るぜ」
ようやく、バスに乗り込んだ俺に続いて、ヴァニもバスに乗り込む。
続いて、レイン、リヴァー、クリア、クロハが乗ってくる。
アレフにミスト、オトネ、アセリア、シェルもその顔を見せる。
ツキヨ、クレイ、ヨウマ……そしてクエス。
スコールにナイツ、アストリアにライト。
教師、引率者としてフレアとイロハ、レヴィが居る。
「おい、私はそこの席でいい」
そう、遅れてやってきたレヴィが俺の隣の席を指す。
「却下」
「嫌ですっ」
俺の右側に席を取っていたライトと左側に座っていたクリアが冷たい口調で返す。
「さっさと、ここに座れ」
そうフレアが自分の隣を指すが……
「えーーーー、あっちがいい」
そう子供の様に駄々をこね始めるレヴィの後ろにすっとフレアが立ち上がると……
「あ、やだ、わかりました、わかりましたから、レスのお尻をこれ以上蹴らないでっ」
そう、レヴィが自分のお尻をガードしながら言う。
「俺のじゃねーよ」
そう思わず突っ込んでしまう。
そして、オトネが俺の方へと歩いてくるとぴょんと飛び跳ねる様に俺のひざ元に座る。
この中で一番小柄だ……苦ではないが他にも席はまだある。
そう促そうとするも、満足そうに笑顔を向けられ、口にするのをやめる。
ゆっくりと走り出す車に……
この先……他の三人がどう関わるのか……
神は……
それは、まだ誰にもわからない……。
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